Osaka Metro Groupが目指す都市型 MaaS構想 ~大阪・関西万博開催に向けて~(特集:行政サービスとMaaS)

地方自治

2022.03.16

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2022年3月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

Osaka Metro Groupが目指す都市型 MaaS構想 ~大阪・関西万博開催に向けて~
(特集:行政サービスとMaaS)

大阪市高速電気軌道株式会社交通事業本部 MaaS戦略推進部

月刊「J-LIS」2022年3月号

1 はじめに

 大阪市高速電気軌道株式会社(以下、Osaka Metro)は、「最高の安全・安心を追求し、誠実さとチャレンジ精神をもって、大阪から元気を創りつづけます」という企業理念のもと、2020年5月に発表した中期経営計画で初めて当社が目指すMaaS構想を発表し、同年12月には中期経営計画を改訂したところです。

 その中で当社は、「交通を核にした生活まちづくり企業」への変革を目指し、新たな成長戦略を実現する指針として「大阪都市型 MaaS構想」を掲げ、他社や地域の皆様のご理解とご協力を得て、その実現を目指しています。

 本稿では、Osaka Metroが目指す「都市型 MaaS」について、現在の取り組みと今後の展望を紹介します。

2 大阪の交通課題とOsaka Metroの課題

 2018年の民営化により、前身の大阪市交通局から事業を引き継いだ当社及び大阪シティバス株式会社は、主に大阪市内で地下鉄と路線バスの運行を担い、1日平均で、地下鉄では約254万人、路線バスでは約20万人の方々にご利用いただいています(2019年度実績)。

 当社の歴史は、1903年の大阪市時代の「路面電車開業」に端を発します。その後、1927年には市営バスを、1933年には梅田から心斎橋間で地下鉄の運行を開始し、常に新しい交通手段や技術の導入によって、市域を拡大して人口が増加する大阪のまちづくりを支えてきました。

 世界有数の大都市として発展を続けている大阪ですが、交通に関する課題も抱えています。中長期的な課題の筆頭となるのは、人口減少に伴う移動需要の減少です。関西地区では、2010年から2045年までの間、総人口でその19%となる約395万人、生産年齢人口でその33%となる約440万人の人口が減少すると推計されており、交通需要の減少が懸念されます。

 また、都市の発展に合わせ、市域全域に計画的に地下鉄・路線バスが網羅されており、充実した輸送力が提供されているものの、地域によって需給が不均衡な面もあります。さらに、感染症の拡大などの影響で、人々の生活様式やニーズが劇的に変化すると共に、近年では気候変動によって自然災害も激甚化しており、固定的な資産・設備を多く抱える交通事業者にとって、こうした環境変化への柔軟な対応も大きな課題の一つとなっています。

 こうした経営環境の変化に対する問題意識を踏まえOsaka Metroでは、目下の大阪の交通課題について、「『出発地』や『目的地』から最寄りの『駅』や『バス停』までの移動の困難さ」や「公共交通の運行頻度の低いエリア」等に代表される「移動までの課題」と、「交通機関間の『乗り継ぎ』や『運賃制度』の複雑さ・面倒さ」や「『車内の混雑』や『異常時の対応』等」に代表される「移動時の課題」の両面から改善に取り組んでいます。

3 Osaka Metroが目指す「都市型MaaS構想」

 交通の変革に挑戦するという企業風土を持つOsaka Metroでは、「都市型 MaaS構想」の実現を通して、世界に先駆けて大阪の交通をきめ細かく圧倒的に便利にすると共に、交通手段をシームレスにつなぐことで利用者の方々に新しい交通体験を提供し、さらに交通と生活サービスを組み合わせて新しい価値を創造して「大阪市のまちづくり」と「利用者の方々の生活の質の向上」に貢献することを目指しています。

 MaaS構想の実現に向けては、全体を図-1のように大きく4層構造として捉え、それぞれの層でのサービスはもとより、そこで得られるデータを活用し各層が複合的につながるサービスの実装に取り組んでいます。

図-1 Osaka Metro の MaaS構想

 まず1層目は、既存交通網の革新です。具体的には、「ストレスフリーな移動の実現」を目指し、「ホームと列車との段差解消」、「可動式ホーム柵の設置」、「顔認証改札機の試行」、「混雑情報の提供」、「お困りの方や不慣れな方の見守りサービス」、「駅リニューアル」や「新型車両の導入」など、単なる移動にとどまらず快適に、かつワクワクしてご利用いただけるよう、地下鉄の施設や設備を有機的にアップデートし、安全安心と快適性の追求に取り組んでいます。

 次に2層目では、オンデマンドバスをはじめとした多様なモビリティを整備し、市内全域にきめ細やかな交通網を提供することで、利用者の方に「待ち時間」や「最寄り駅・バス停までの距離」の不便を感じさせない交通の大変革を行います。さらに、最新技術として、自動運転車両や脱炭素への取り組みも進めていきます。

 3層目では、生活に便利な機能を備え、移動の合間にもご利用いただける、交通同士の乗り換え時に便利な「乗り継ぎハブ」※)の整備や、駅や駅周辺の開発を進め、フィジカルな空間での「交通を核としたまちづくり」を進めていきます。

※)鉄道とバス、バス同士の乗り換え拠点。

 そして、4層目では、移動ルートやご利用頻度などを踏まえ、デジタルマーケティングにより、お客さまそれぞれの趣向に合わせ個人に最適化した新しい顧客体験と価値を提供します。

 このようにOsaka Metroは、「都市型 MaaS構想」の実現を通じ、一人ひとりの移動を安全・便利かつ快適にするだけではなく、次世代のきめ細やかな交通網とあらゆるサービスをシームレスにつなぎ、一人ひとりのニーズにあったサービスを提供すると共に、新しい発見につながるようなサービスを提案することで、大阪の賑わいを創出し、人々の暮らしの質の向上に貢献することを目指しています。

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特集:行政サービスとMaaS

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