こちら「日出町」情報化本部 県内8市町村の共同利用システムにより新システム共同調達を実現
地方自治
2022.03.15
この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2022年3月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。
こちら「日出町」情報化本部
県内8市町村の共同利用システムにより新システム共同調達を実現
温泉で有名な別府市や県庁所在地の大分市への通勤圏内でもあることから、ベッドタウンとして発展してきた大分県日出町。県とのシステム共同利用にはじまり、県内市町村によるシステム共同調達もスタートした。
日出町と情報化推進の取り組み
「日出」と書いて「ひじ」と読む日出町は、大分県の中部に位置する温暖で災害が少ない町。海岸線から観る別府湾の眺望は絶景です。人口はここ数年微減傾向ですが、2006年以来2万8,000人台を維持しています。また、民間の賃貸住宅メーカーが行った住み心地ランキングでは、2年連続大分県内第1位となり、地下水と湧水で賄っている上水道は安価でおいしく町の自慢です。
当町の情報担当職員は、自治体DXの推進を踏まえ、今年度より正規職員が1名増員されましたが、年々増加するシステムや情報機器の維持管理並びに各課からの相談業務等に追われている状況です。GIGAスクール構想に伴う学校部門の情報化業務も増加の一途をたどっており、教育委員会も含め大きな負担となりつつあります。
情報化の大きな取り組みとしては、まず2002年度の地域イントラネット基盤施設整備事業が挙げられます。役場本庁舎を中心に町内の公共施設、幼稚園、小中学校を自前の光ケーブルで結び、さらに大分県が整備した豊の国ハイパーネットワークに接続することにより、高速大容量の通信環境を実現しました。なお、大分県とは、その後も電子申請や仮想ブラウザ等でも共同利用を行い、経費の抑制につなげています。
その後は、行財政改革による人員削減もあり、業務効率化の観点から福祉や子育て部門のシステム導入、小中学校における校内LAN整備、防災無線、マイナンバーなどの業務で、情報担当職員がそのたびに協議等に加わることから所掌する範囲は拡大の一途です。
また、住民記録や各種税業務等で使用する基幹系システムが、1999年の導入から20年が経過したことから更新が大きな課題となっていました。そこで、大分県内で同じシステムを利用する8市町村で「大分県共同利用システム運用団体協議会」(OCUSA)を設立し、導入経費及び維持管理費の抑制を図ることを目的にノンカスタマイズを基本とした新たなシステムの共同調達を行いました。2019年3月から約2年に渡り導入業者や8市町村の担当職員による協議、操作研修、ユーザテスト等を行い準備を進め、2020年11月24日に予定どおり移行することができました。今回、23業務ものシステムが更新となり職員も不安を抱えながらのスタートでしたが、大きなトラブルもなく運用できています。なお、OCUSAでは引き続き、保守業者との定期的な意見交換、部会による業務担当者同士の情報共有、自治体DXについて共同で取り組むこととしています。
自治体DXへの取り組み
自治体DXを進めるうえで重要である業務改革(BPR)については、行革担当課によるヒアリングを行い、その結果を踏まえた「日出町自治体DX推進計画」(仮称)を今年度末までに策定することとしています。
また、DXを進めるには町長をはじめ職員の意識醸成が欠かせないことから、2021年10月に全職員を対象にセキュリティポリシーの改定と自治体DXに関する研修を行いました。さらに、同月には隣接する別府市と杵築市の2市1町で「別杵速見地域DX推進協議会」を設立し、地域社会のデジタル化やマイナンバーカードの普及活動等を共同で実施することとしています。
これまでも、押印を求める様式の93.2%の廃止や上水道の閉開栓手続きにおけるLINE活用等を進めてきましたが、本年度は、国が2022年度までに求めている介護保険業務等26業務のオンライン化、AI・OCRやRPAの実証実験、携帯通信会社と連携した初心者向けのスマホ教室の開催等を行っています。中でも、ふ
るさと寄附金における証明書発行業務へのRPA導入では大きな効果を上げており、引き続きRPAを推進していきます。
マイナンバーカードの交付率は、町民の関心の高さと担当課の尽力により県内第2位の44.2%(2021年12月末現在)となっています。新たなマイナポイント制度も2022年1月から開始されたことから国の補助金を最大限活用し、ありとあらゆる機会を捉え普及促進に努めていきます。
今後の目標
2022年度からは、機構改革に伴い政策企画課デジタル戦略係となる予定です。予算規模も拡大し、DXへの取り組みも本格化することから職員の増員も人事担当課にお願いしています。国が示した重点取り組み6項目以外にもデジタル・デバイドやキャッシュレス決済等課題は山積しています。どれも一筋縄ではいかないものばかりですが、周囲の協力を得ながら2025年度の計画達成に向け着実に取り組んでいくつもりです。
自治体DXの推進により町民と職員がWin-Winの関係になり、少ない職員でも町民の多様なニーズに対応できる組織となることが理想の姿であると考えています。今年は寅年、筆者も年男となりました。デジタル・トラ(寅)ンスフォーメーションに邁進します。