議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第62回 続・「地方が国を変える」とはどういうことか?

地方自治

2022.02.24

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年5月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 先月号では、「地方議会が地方を変え、地方が国を変える」との北川正恭・早稲田大学名誉教授の言葉を引用して、地方議会人に求められる意識について述べた。

 今月号では一つの実践例として、大津市議会のオンライン本会議実現への取り組みについて触れたい。

■オンライン本会議実現の必要性

 大津市議会では、全国初の公開での実証実験でもある「オンライン模擬本会議」を、議会BCPにおける議会防災訓練として1月末に行った。

 それは、昨年春の庁内クラスター発生による本庁舎閉鎖の苦い経験によるところが大きい。議場への全員参集が困難となっても、議案審議を完遂できる手段の必要性を実感させられたのである。

 オンライン本会議は、議会の本質に鑑みると、通常の本会議(以下「リアル議会」)を恒常的に代替させるべきものではないが、非常時に二元的代表制を機能させるために、導入は避けられないものであろう。

 だが、昨年10月号でも述べたとおり、オンライン本会議を現行地方自治法(以下「自治法」)の解釈論で運用するには無理があり、「会議方法」、「出席の概念」、「会議公開原則」等について、法改正が必要との考えに変わりはない。

 大津市議会としても昨年6月16日付で「オンライン本会議の実現に必要となる地方自治法改正を求める意見書」を提出している。

■オンライン模擬本会議の概要

 一方、実務面からの検証も不可欠と考えたため、模擬本会議を実証実験として行った。

 形態はZoomによる完全オンライン型で、議場は議長と局職員のみで進行し、議場インターネット中継システムに接続して公開した(注1)。

注1 大津市議会HPで録画が視聴可能。

 自治法115条1項では「普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する」と定められているが、判例では「公開」とは傍聴と会議録の閲覧を認める趣旨とされている。「傍聴」とは「会議の状況を直接見聞すること」(注2)であり、テレビ放送やインターネットによる実況中継をもって、「公開」しているとは解せないのは課題の一つである。

注2 「地方議会運営辞典(第2次改訂版)」(ぎょうせい、2014年)。

 採決方法に関しては、アプリ上の挙手機能を採用した。それによって賛否態度の意思表示が明確、かつ、挙手者数がホスト端末に即時表示されるため、スムーズな議事進行が可能となった。

 全体としては、ハード面での議場放送システムとの接続やハウリング対策で一部課題が残ったものの、ソフト面ではリアル本会議と遜色のない議事運営が可能であることを実証できた。

■オンライン化の目的は何か?

 議会の最も重要な機能は議案の議決である。だが、議案審議のオンライン化を目指しても、そのプロセス上、議決を担う本会議をオンライン化できなければ、コロナ禍対策としては未完であり、抜本的解決策とはなり得ない。

 現行法の解釈論で可能なものだけでお茶を濁されても、本来の目的に合致する手段が保障されなければ、現場では本質的利益に乏しい。

 一方で、国策としてデジタル化が推進されようとしている今般、オンライン本会議実現のための法改正には絶好のタイミングと感じる。

 今こそ地方議会の総意として、国会に先駆けてオンライン本会議を実現しようとする強い意思を、国に伝えるべきではないだろうか。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第63回 議選廃止によって監視機能は本当に低下するのか? は2022年3月10日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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