DX推進人材確保のために

地方自治

2021.12.23

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2021年12月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

DX推進人材確保のために
(よく分かる情報化解説 第81回)

元横須賀市副市長 HIRO研究所 廣川 聡美

(月刊「J-LIS」2021年12月号)

 

学ぶべきPOINT
DX推進リーダーやメンバーに求められるスキル、外部支援も含めた人材確保の方策などについて考察します。

1 はじめに

 自治体DX推進にあたり多くの自治体が直面している課題の1つが、DX推進人材の確保です。誰に推進リーダーを任せるか、スタッフはどうするか等、人材確保の考え方と方策について考えてみましょう。

2 自治体DXとは

 はじめに、自治体DXの意義と目的について再確認しておきましょう。自治体DXとは、デジタル技術とデータを活用して、住民の利便性を向上させるとともに、業務効率化を図り、行政サービスのさらなる向上につなげていくことです。そのためには、技術の適切な導入を機に、自治体経営のあり方や住民との関係、役所の組織風土や文化、組織マネジメントのあり方、職員の働き方などを根本的に改革することが必要です。技術の導入は目的ではありません。また、技術を導入すれば自然とこれらの改革が進むというわけではありません。技術導入を機に、それをてこにしてダイナミックに進めないと、改革は実現できないのです。なぜかというと、変えない方が楽だからです。現状を維持存続しようという有形無形の力が働きます。故に、これらを進めるためには、推進のための専門組織と人材が必要なのです。

3 DX推進組織のイメージ

 人材の話の前に、組織のイメージを共有しておきましょう(図-1)。なお、この体制図は一例です。自治体の事情に合わせてお考えください。

図-1 推進体制のイメージ

 CDO(Chief Digital Officer:デジタル化最高責任者)は、自治体組織全体に号令をかけてもらうのが主な役割で、性質上、首長や副首長など人事権を持つ職位の方に兼務してもらいます。外部から、期限付き採用等により、招聘している団体もあります。

 CDO補佐は、DX推進の実質的リーダーとして、担当部署及び組織横断的プロジェクトチームを動かします。CDOに、DXの考え方や課題、取り組み状況等を説明し、必要に応じて号令をかけてもらうのも仕事です。CDO補佐は、担当部署の長を兼務する場合もあるでしょう。CDO補佐についても、外部から招聘している団体もあります。

 担当部署は、可能であれば既存の情報部門とは別に設置、あるいは既存組織を拡大して設置することを勧めます。理由は、仕事の性質・内容が異なるからです。既存の情報部門は既存システムを安定的に運用するのが主務ですが、DXは変革が仕事です。したがって、名称も「DX推進課」などそれに相応しいものにします。自治体組織の内外に、取り組みをアピールすることが目的です。

 プロジェクトチーム(PT)は、庁内の関係部局間の調整を行うための組織です。企画、財政、人事、行革、産業振興ほか関係部門の管理職で構成します。これらの部門がバラバラでは、絶対に上手くいきません。強い仲間意識を持ってもらうために、チームを編成・運営します。

 ワーキンググループ(WG)は、業務・サービス改革の具体的実行チームです。若手職員をパイロット事業に参加させ、改革手法を身につけさせることも目的の1つです。なお、WGメンバーはDX担当部署に併任とし、WGの活動に参加しやすくします。

 推進組織は、外部の専門家や近隣自治体のDX推進組織と人的ネットワークを構築し、情報交換や連携・協力を活発に行うことが必要です。情報や知識は共有し、システムやサービスは共同利用することにより、効率的・効果的にDXを進めることができます。

4 推進組織に欲しい人材

 次に、推進組織に、こんな人がいてくれたら良いと思う人材像をイメージしてみましょう。分かりやすくするために、3つの類型に整理します。

 1番目は、「デジタル改革のディレクター」です。そのイメージは、国の政策の動向、デジタル技術の概要や動向、技術を活用した業務サービス改革の事例や方法、データの活用方法等に明るく、自団体の実情に合ったDXの方向性をスタッフとともに取りまとめ、チームの指揮を執ることができる人材です。

 2番目は、「組織のまとめ役=オーガナイザー」です。イメージは、首長をはじめ、幹部職員から一般職員にまで、デジタル化と改革の必要性を分かりやすく説明し、理解者・協力者を増やし、自治体組織全体をDX推進モードに転換することができる人材です。あの人がいうのだから協力しようという気持ちにさせるソフトパワーを持つ人材ともいえます。

 3番目は、「人的ネットワークのHUB役」。そのイメージは、国や他自治体の職員、企業の技術者、大学の研究者等と人的ネットワークを築き、課題の検討や解決方法について情報や助言、支援を求めることができる人材です。

 以上の3つのイメージを兼ね備えた人物が、前節に示したCDOもしくはCDO補佐、すなわちDX推進リーダーのポストに就いて欲しい職員の人材像です。しかし、現実には、そのうちの1つでも難しいと感じられると思います。上記は、目標とすべき理想モデルとして示したもので、1人の人物が備える必要はなく、推進組織のチームのスキルとして備えられたら良いというべきものでしょう。いや、必ずしもその必要もなく、プロジェクトチーム、自治体組織全体、さらには外部の専門家や技術者などの力を借りて、目標が達成できればそれで良いと思います。要点は、必要な場面で、誰かしらの力を借りることができるように準備をしておくことにあるのです。なお、上記はリーダー像(CDOもしくはCDO補佐をイメージ)で、そのほかにリーダーを補佐する有能なスタッフの存在が欠かせません。

5 3種類のスキル

 前節に述べたような働きを可能とするスキルは、Dのスキル、Xのスキル、Mのスキルの3種類に分解することができます(図-2)

図-2 3種類のスキル

 Dのスキルとは、1つはデジタルのスキルです。すなわち様々なデジタル技術の概要・効果、利活用事例、留意点等に関する知識、データの取り扱いや利活用の方法等の知識、論理的思考力、分析力、推論の方法等、セキュリティや個人情報保護に関する知識等です。さらに、国等のデジタル政策に関する方針や計画等に関する知識、IT企業の動向等についての知識も不可欠です。さらに、常に知識をアップデートしていることが求められます。Dのスキルのもう1つは、デザインのスキルです。センスといっても良いかもしれません。行政サービスのあり方、住民への提供方法、お知らせの仕方、分かりやすい伝え方などを構想し、改革する能力に加えて、住民の声から課題を発見し、サービスに反映させる能力もここに含まれると思います。

 Xのスキルとは、改革の構想と実行のスキルです。課題の本質を掴むスキル、解決策を構想する能力、突破力、破壊力、説得力、交渉力などです。なんとなく乱暴なスキルのように思いますが、改革は強引に進めても上手くいきません。丁寧に説明し、理解してもらい、細部まで納得してもらった上で進める必要があります。しかし、時には、強く押す必要がある場合もあるでしょう。そのようなシーンでも、できる限りしこりを残さないようにすることが大切です。それを可能にするのは人間力です。自治体DXだからといって頭ごなしに話をしたのでは上手くいかないことはいうまでもありません。

 Mのスキルとは、組織マネジメントのスキルです。自治体の内部・外部とのコミュニケーション、職員のコーチングやメンタリング、積極的な情報発信、住民や関係者の声を聞く傾聴等のスキル、プロジェクトの管理、トラブルへの対処、利害関係の調整、組織文化の構築や見直しなどに関する知識や能力がこれにあたります。そして、何といっても、困った時に相談する相手を知っているという人材が頼りになります。

 DとXとMの関係は、図-2のように、3次元でマッピングすることができます。個人の特性や得意不得意などにより、スキルの構成が変化します。図の直方体の容積が大きいほど、いわゆるキャパが大きいということになりますが、それぞれのバランスも重要です。なお、前節に述べた欲しい人材の1番目の「デジタル改革のディレクター」は、図のD-X面、2番目の「組織のまとめ役=オーガナイザー」はX-M面、3番目の「人的ネットワークのHUB役」はM-D面の面積が広いタイプと考えることができます。

6 人材確保のシナリオ

 DX推進組織が、チームとして、D-X-Mスキルの総和が最大化できるように、職員を配置します。情報部門の職員のほか、企画、財政、人事、行革などの業務経験のある職員を含めると良いと思います。人数には限りがありますが、多様性に富んだメンバーであるほど、良いパフォーマンスが期待できます。今まで役所がやってこなかった仕事をやるのですから、多様な視点、役所的でない視点が大事です。女性の視点も重要です。サービス設計や業務プロセスの見直し等に、女性の視点は欠かせません。

 Dスキルについては、情報部門の職員がスキルアップして対応することが期待されますが、適当な人材が見当たらなければ、当面、外部の力を借りると良いでしょう。外部の力とは、大学や企業、NPO、外部専門家等の支援を得ることです。技術者を公募し、期限付き等で採用している自治体も多いですし、もちろん正規職員としての採用も行われています。しかし、デジタル技術者の不足は問題となっており、確保は課題であるといえるでしょう。一方、民間企業で副業を認める動きもあり、また増加している個人事業主に、複業人材として力を貸してもらうことも可能と思われます。地域のITベンダー等と連携協定を締結して、公民連携事業を行う中で、協力してもらう等の方法もあると思います。民間企業等と連携して、特定の社会課題解決のために実証実験を行う事例も増えています。そのような機会に、DX推進組織や関係部署の若手職員を積極的に参加させ、スキルアップの機会とすると良いと思います。その取り組みを、段階的に、職員全体に広げて行くことにより、DX人材の確保を図るのです。

 スキルアップは、基礎的知識は、J-LIS等が提供するオンラインの研修で学び、その後、個人あるいはグループで自学自習を行うことが望まれます。自治体としても、なんらかの形で、奨励すると良いと思います。デジタル社会への移行について行くために、職業人として、然るべき努力をする必要があると考えます。

7 ポストDXを見据えた人材育成プランの必要性

 今後、人口減少と少子高齢化が進むと自治体職員の数も減る、減らさざるを得ないことになります。自治体戦略2040構想研究会第8回(2018年2月23日)の資料3(総務省提出資料P.18)によると、2013-2040比の職員数減少率(見込み)は、人口10万人未満の都市では▲17.0%と試算されています。一方で住民ニーズの増加が予想され、これらに対応するためには、ルーチン業務や作業は極力自動化、委託化し、職員は職員でなければできない仕事にシフトする必要があります。福祉や健康、危機管理などの仕事です。このシフトに関しては、比較的容易に可能な仕事もあれば難易度が高い業務もあり、今後、移行計画と合わせて、新しく担当する業務のスキル育成を検討していく必要があります。まだ先のことのように思われますが、早めに準備を始められることをお勧めします。

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