連載 vol.30「つながる」力 つながりと「たぐり寄せる力」──大義あるまちづくりのための信念 【貮又〈ふたまた〉聖規(福井市職員)】
地方自治
2022.02.21
本記事は、月刊『ガバナンス』2016年9月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に自治体職員によるネットワークのメンバーがリレー形式で執筆します。
つながりと「たぐり寄せる力」──大義あるまちづくりのための信念
僕は、とても運の良い人間である。自分の頭の中で思い描いたプロジェクトが、偶然とも思えるような出会いや支援によって実を結ぶことが多いからだ。
自分の想いを実現するために、意識していることがある。それは、他地域の自治体職員や異業種の方々とのつながりを大切にすることと、運を味方につけるための強い信念を持ち続けることである。そして、自らのネットワークをまちづくりに活かすことである。
実際の行動は、まずは、積極的に地域に出て、様々な立場の人の声に耳を傾け、多様な価値観や情報収集をする。その際、常に何とかしたいという強い信念のもと、諦めずに小さなことから実践を重ねることで、いつしか道が切り拓かれる。そして、「ジブンゴト」として真剣に向き合い役場職員として、解決の糸口を探ることである。これらの力を僕は「たぐり寄せる力」と表現したい。
2014年度に、東京財団週末学校に参加する機会を得た。志が高い全国から集った20人の仲間は、唯一無二の存在だ。
このプログラムには、全米で最も住んでみたい街とされるポートランド市への調査研究がある。滞在期間中に、白老町における多文化共生のヒントを得て、翌年には、白老町とポートランド州立大学との交流事業が実現した。平坦な道のりではなかったが、「たぐり寄せる力」が発揮されたと考える。
白老町は先住民族アイヌの文化伝承の地であり、2020年には国立のアイヌ民族博物館が開設される。アイヌにとって鮭は、「神の魚」と言われる尊い存在であるが、交流事業の際訪れたワームスプリングス地方にて同じような風習をもつワスコ部族に出会う。そこで、現地ラジオ局から取材を受けた。「この取り組みを踏まえて持ち帰ってから何をしたいか?夢は?」という問いに僕はこう答えた。「文化や宗教、言葉の壁を越え、人々の心をひとつにするサーモン文化を基軸に将来、我が町にて各国が集うサミットを行いたい」
新たなプロジェクトの胎動。大義あるまちづくりの実現に向けて邁進していく。
(北海道・白老町職員/貮又〈ふたまた〉聖規)