【新刊】『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』(稲継裕昭・大谷基道/著)

地方自治

2021.10.21

【新刊紹介】「残業が減らない」「若手がすぐ辞める」「メンタル不調の増加」……
人事に関する現場の悩みから問題点を分析し、トータルな人事戦略による課題解決のヒントを提示します!

『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』(稲継裕昭・大谷基道/著))

 (株)ぎょうせいは令和3年9月、『現場のリアルな悩みを解決する!職員減少時代の自治体人事戦略』(稲継裕昭・大谷基道/著)を刊行しました。

 人口減少や少子高齢化が進み、自治体職員の数も減っていく中、必要な行政サービスを提供し続けるためには、どうすればよいでしょうか。自治体の対応力、組織力は職員の能力次第だと著者は言います。本書では、今後の自治体に求められる職員像を示し、現状の問題点を分析した上で、必要な人材を育てるトータルな人事戦略を考えます。職員の採用、配置、異動、育成、能力開発、人事評価、昇任のあり方などについて、現場に寄り添いながら、先進事例を交えて課題解決のヒントを提示しています。

 著者からのメッセージとして、稲継裕昭・早稲田大学政治経済学術院教授による本書の「はしがき」を掲載します。自治体の人事担当者や現場の管理職をはじめ、多くの職員の方々に本書をお読みいただき、業務の参考にしていただければ幸いです。                                    

(編集部)

 

自治体業務に大きな影響を与えた新型コロナの感染拡大

 地球規模の広がりを見せた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、「住民福祉の増進」(地方自治法第1条の2)を目的とする地方自治体に甚大な影響を与えた。

 政府から小中学校の一斉休校の要請が出され、大部分の自治体では休校を決定した。特別定額給付金の支給事務は基礎自治体である市区町村に任された。ワクチン接種が感染症の広がりを抑える切り札だとされたが、接種券の発送や医師の確保など接種体制の確保もまた市区町村に任された。

 どの業務においても、自治体は限られたマンパワーを最大限動員して当該業務を住民のために迅速に進めるように努力している。「自治体によるサボタージュ」はないにもかかわらず、自治体規模の大小という要因を割り引いても、自治体ごとの差は大きく、住民からの不満にもつながった。

 当該自治体における業務遂行手順はどのようなものだったのか、緊急時の柔軟な対応ができる仕組みはできていたか、組織間の業務割当や応援支援体制はどうだったのか、業務委託する際のノウハウは引き継がれていたのか、何より、業務遂行の要となる職にはどのような職員が充てられていたのか、自治体ごとにその程度は様々である。

職員に求められるのは前例にとらわれない新しい発想

 自治体の対応力、組織力は、そこに勤務する自治体職員の能力に依存する。人的資源は、伸縮自在の資源である。どのような人事戦略を展開して、住民サービスの向上に資する有能な職員集団を作るのかが、各自治体に問われている。人口減少や少子高齢化が進み、2040 年には高齢者人口がピークを迎える。自治体の職員数も今後さらに減ることが見込まれる中で、自治体が本来担うべき機能を発揮し、行政サービスを提供し続けるためには、どのような人事戦略が求められるのだろうか。

 自治体の中では、地方自治法をはじめとする関係諸法規や条例に基づいて日々の業務の執行を粛々と行っている公務員が数多くいる。ルーティンの業務をおろそかにすることはできないし、市民が安全安心に暮らすことのできるように様々なサービスを継続的に提供するのは行政の重要な役割である。

 だが他方で、公務を取り巻く環境は大きく変化しており、また、災害時の対応も求められる。非ルーティン型の意思決定が求められる場合も少なくない。従来型の業務遂行が重要な意味を持つ仕事が多いものの、新しい発想での変革が求められる仕事も確実に増えてきている。前例踏襲にとらわれない新しい発想を持って様々な角度から問題を発見、分析して、考える職員が求められている。

人事政策をトータルなシステムとして考える必要性

 自治体が行う政策・施策は様々な手段の組み合わせで行われる。人事政策も同じで、諸課題は密接に連関し合っている。不定期に発生する諸課題に対してその場しのぎの応急措置を繰り返しても、効果は上がらない。ある制度の変更が他の制度に逆機能をもたらす場合もあり得る。やはり、人事政策全体を見渡して、また、組織の仕事の進め方も見渡して、トータルなシステムとして考える必要がある。そして、それをどのように変革していくかを、現場と人事担当者が一体となって、組織全体として考えていく必要がある。人事制度は人事担当部門だけが当事者ではなく、すべての職員が当事者である。とりわけ現場のマネジャーは極めて重要な当事者だ。現場からの発信は不可欠なものとなってくる。

 本書では、今後の自治体に求められる職員像を提示し、そうした人材を育てるためのトータルな人事戦略を考える。職員の採用、配置、異動、育成、能力開発、人事評価、昇任などのあり方などについて、現状の問題点を分析しながら考えることとした。考察にあたっては、職員の定年延長やAI・RPAの導入など、今日的な動向や自治体の先進事例等を交えて構成した。多くの自治体職員に手に取ってもらえるよう、現場のリアルな悩みを踏まえて、できるだけ現場に寄り添う形で考えていったつもりである。

 本書が自治体の人事を少しでも良くしようと日夜奮闘しておられる、自治体の人事担当者、現場のマネジャーにとって何らかのヒントになれば幸いである。

執筆者を代表して 稲継 裕昭

 

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注目の1冊

現場のリアルな悩みを解決する!

職員減少時代の自治体人事戦略

2021年10月 発売

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