議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第59回 「根回し」とは「対話」なのか?

地方自治

2021.12.09

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年2月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 昨年11月に、全国市町村国際文化研修所(JIAM)の市町村議会議員研修で、講義する機会があった。今号では、当該講義で印象に残ったことを中心に述べたい。

■改革を必要とする理由は何か

 研修の主題は「議会改革を考える」であり、私からは「議会を改革する意義は何か?」と題して話した。

 議会改革が全国的な潮流となったのは最近10年余りのことであるが、既に様々な視点からの改革の方法論が確立されている。したがって、当面は前例踏襲を打破することを目的に、変化自体を追求することも、改革の端緒としては否定されるものでない。

 だが、様々な論点がある中で、特定の改革手法の運用論から議論が始まり、あえて当該改革を優先する必要性や、自らの議会における親和性を検証せず、何となく導入しようとすることについては疑問を感じることから、あえて設定した研修テーマである。

 自らの議会に改革が必要な理由に遡って考えなければ、何を優先するかの議論は深まらない。

 個人的には、政務活動費や政治倫理などコンプライアンスに関わる課題が最優先であり、次に議会の機能発揮の理想と現実の乖離が大きいものから優先的に改革すべきだと考えている。

 そのような観点から大津市議会の議会改革を事例として、特に議会の政策立案機能強化の必要性と、そのプロセスにおける住民参加と情報公開の必要性について説明した。

■「根回し」は悪いことなのか?

 議会改革や議会の政策立案を成し遂げるために、合議制機関の意思決定過程で必須となるのは、合意形成である。

 研修における質疑では、「合意形成のためには根回しもするのか」との主旨で質問された。

 「根回し」とは、「会議や交渉を円滑、有利に運ぶために、非公式の場で合意の形成をはかること」(注)とされる。ビジネスの上では既に慣用句であるが、一般的には言葉の響きから、公明正大なやり方ではないと感じる人も多いようだ。現に質問からは、否定的なニュアンスが感じられた。

(注)出典:ブリタニカ国際大百科事典・小項目辞典。

 だが、全ての場合において、否定されるべきものなのだろうか。

■議会内での「対話」の必要性

 確かに団体意思決定の経過、特に議案審議における議論の過程は市民へ公開されること自体が重要であり、非公式な場での合意形成は好ましいとはいえないだろう。

 例えば議案審査に際して、委員会前に非公開で事前審査的に議論をする議会もあるようだが、それが委員会で揉めないための根回しなら、もちろん論外である。

 だが、議会改革や議会の政策立案に関する議論など、機関意思決定過程における根回しは、一概に非難されるべきものではないだろう。

 議会自ら原案調製するものについては、事前に合意形成可能な方向性を見出しておかなければ、多くの場合、議論は迷走する。独任制機関の首長とは異なり、議会は議長と言えども議事運営上の指揮命令権しかない合議制機関だからだ。

 合意形成は、それぞれの立場、主張を推し量り、時として「根回し」と称される「対話」のなかで妥協点を模索することに他ならない。

 そして、議会内で「対話」を深めることが、会派を超えた議論や局職員との協働を可能とする「チーム議会」を実現するのではないだろうか。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第60回「地方議会法制はこのままで良いのか?」は2022年1月13日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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