【新刊】『自治体×ベンダー 自治体システム導入の「そういうことだったのか」会議』本書はこうしてつくられた…誌上座談会ウラ話大放談
地方自治
2021.04.27
この度、当社より『自治体×ベンダー 自治体システム導入の「そういうことだったのか」会議 ―ウチのシステムは使えないと言われるのはなぜ?』が発刊!
喫緊の課題となっている行政のデジタル化の実現。しかしデジタル化プロジェクトはムズカシイ! おまけに、システムやサービスの在り方も変化し、発注側と受注側は“パートナー”の関係で臨むべきもの…ということで、発注側である自治体と受注側であるITベンダーとで、デジタル化やシステム導入のアレコレについて話し合ってみました。自治体がベンダーを見る視点、ベンダーが自治体を見る視点、双方の視点からセキララに切り込み、議論は将来の自治体の情報システム部門のあるべき姿にまで発展し…!?
デジタル化をライブトーク調で楽しく読める本書。発刊を記念して、座談会メンバー7人の中から、著者・NPO法人デジタルガバメントラボの代表理事(以下「自C」)と副代表理事(以下「自E」)によるアフタートークをお届けします。(聞き手:本書編集担当)
誌上座談会、ココがおもしろかった
――本書は、実に15時間にも及ぶ座談会がベースとなりました。自治体の情報システム部門の職員5人と、ITベンダー2人の計7人による白熱トークは聞きごたえたっぷりでした。座談会を振り返ってみていかがですか?
自E 3回に分けて行った座談会のうち1回は、(メインの座談会に参加できなかった)ある自治体のYさんと私とで話をした回でした。これがすっごいおもしろかった。1日中みっちり、デジタル化というテーマ1本でこんなに話したことはなかったから新鮮でした。
自C そうですよね。この座談会メンバーの自治体職員とは、同じNPO法人のメンバーとして一緒に活動しているんだけど、ここまでじっくり語り合ったことはなかったですよね。
自E Yさんの取材裏話といえば、音声データに怪奇現象が……。夏になったらその音声データ、この記事内で公開します?(笑)
自C Eさんから「Yさんとのトークがおもしろかった」なんて聞くと、座談会メンバー全員の回とは別に、メンバー2人きりバージョンがあってもおもしろかったかも。
私だったら、Kさんとみっちり話してみたいです。情報推進課(座談会開催当時)のKさんと私は、ほぼ同じ役割なんでしょうが、Kさんが具体的にどんなことをしているかまでは知らないんですよ。
本書でもKさんから紹介がありますが、Kさんとこ、近隣自治体と自治体クラウド導入の取り組みを行っているんですがね……、自治体クラウドを担当者だけで回しているというのは、ホント、すごいの一言に尽きますね。
自E Kさんの推進するそのパワーたるやもすごいですよね。
カオスな座談会メンバーを振り返ってみた
――その取材音声データは二度と聞きません…。まぁ、その怪奇現象は私の中で忘れられないエピソードとなったわけですが、それはさておき、お二人にとっての印象的なトークテーマはどれでしたか?
自C いやー、いっぱい話しましたねー。
なかでも、ベンダー側で参加いただいた、GovTechスタートアップのDさんの話がとにかく新鮮でした。ベンダー側のもう1人、Mさんは、いわゆる昔の汎用機時代からのシステムをよくご存じの経験豊富な方ですから、我々と思考回路が似ているんです。自治体勤務のご経験もあって、自治体職員のことよくご存じ。だから、Mさんのお話はストンと腑に落ちるのは当然で。
一方で、Dさんからは、「民間企業のトレンドはこうだ」「民間でもこんな傾向がある」といった視野の広い話を多く紹介いただきました。(組織文化の違いがある)民間という「自治体の外」の方ながら、自治体職員が民間人に抱いてしまいがちな精神的な距離をあまり感じさせず、なるほどと思う話ばかり。
Dさんはみずからコードを書かれるし、開発の現場で自治体と多くのやり取りを経験されているからなのでしょうね。Dさんの話には説得力があるんですよね。
(本書のプロローグで話題にのぼった)ベンダーの営業さんが的外れな話をして帰っていくだけ、というパターンが多い中、われわれ自治体職員の特性もよく押さえていらっしゃる。そういう点が事業者の中でも一線を画していますね。
自E Dさんの会社はフロントサービスなので、考え方が違うという点でもおもしろさを感じましたよね。バックヤードとフロントサービスの関係性を考えるいいきっかけになりました。本書でDさんの会社は「ログを見てサービス改善をしている」と紹介しているんですが、その発想はなかったなー。我々がログと見ると、犯人探しというか、「悪いことをしている人がいないか?」みたいに勘ぐる視点になっちゃうので。ログの活用方法がサービス寄りなのが、「考えたことなかった!」と思いましたね。
自C ログの視点はね、私も感じました。
あと、自治体側の5人の多様性も特筆ものだと思いますよ。たとえば、この5人(※)を説明すると、Eさんと私はホストコンピューターの人間、Yさんはホストコンピューターを触っておらず、情報担当としてシステム導入を経験している。Kさんも同じく、多分コードを書くまではやっていない。これまでの4人が基幹系の担当ですが、Iさんはまったく違い、(基幹系と二分するもう1つの分類の)情報系の担当で、データ利活用などに取り組んでいます。本書ではそのあたりのニュアンスが会話に如実に現れていて、特に情報システム部門の読者にはよく伝わるんじゃないかな。
(※)Cさん、Eさん、Yさん、Kさん、Iさん。5人のプロフィールの詳細は本書にて。
自E これが5人全員、基幹系のホストコンピューターの人間が集まってしまったら、たぶんここまでおもしろい内容になっていませんね。話の幅が広がっていないかも。
――え! 皆さんの役割にそんな細かな違いがあったんですね。ということは、計15時間に及んだこの座談会、得たものもたくさんあったりするのでは?
自C 「やれば実現できる」と再認識しましたね。気持ちも新たにしました。
自E 自治体メンバーの役割が違えど、考えは一貫しているんだと確信を得ました。情シスの立ち位置ってどの自治体でもあんまり変わらないんだね。あとは、成長している会社って1本の芯が通っていますね。自治体サイドも、発注側なんだからという対応をしていたら、いいベンダーさんと出会えないんだなと感じました。自治体側も勉強して体制を整えたり、目的や課題をきちんと捉えて開発に臨むなど、基本的な点を踏まえなきゃ。
自C GovTech企業を語れるほど精通しているわけではありませんが、「この企業がなぜ成長しているのか」は実感できます。企業のトップがきちんと推進しているからなんだろうな、こういう考えの企業が地方自治体に選ばれているんだなってことはわかる!
自E Cさんみたいな感覚を持っている人はいいお客さんなんだよね。そういう人の心をがっちりつかめるベンダーがいいベンダーなんだよね。
本書のキャッチコピーを考えてみた
――それでは最後。本書のアピールポイントをひとことキャッチコピーで締めてください!
自C うーん…そうだなー、“自治体職員の生態が分かる本”!
自E “情シスの脳内思考がわかる本”とかね!
自C いや~、でもですよ、自治体職員はもちろんですが、ベンダーにこそ本書を読んでもらいたい! ベンダーのほうが首肯しきりの内容だと思うんですよね。公共分野のベンダーなら絶対共感してくれる!! もちろん、「何言っちゃっているの?」な部分もあるかもしれませんが、だって、これが自治体職員なんだもーん。しょうがないのよ、お願いわかって(笑)。
自E これからバリバリやっていこうと思っている新進気鋭の若手情シス職員って、本書の内容を理解してくれるかな(笑)。
そういう意味で、“自治体情シスの「現状」を赤裸々に語った本”ですね。「情シスって何?」「何しているところ?」がわかる。
自C 新進気鋭の若手の自治体職員には、本書に書いてあるようなことを反面教師にしてほしいという想いがあるんですよ? 「君たちはこんな人たちを倒さなければいけないのだ」って。そのためのテキストとしても売れますね(笑)。
(そして10分経過)
――いやあの、「一言で」ってお願いしたのに…。
ええい、最後にまとめます! 本書は、自治体情シスとベンダーの2つの視点で一気にわかる本です。デジタル化プロジェクトにあたっての留意点、庁内のまとめ方などを自治体メンバー5人の視点で知ることができます。自治体システム標準化にどう備えれば? もわかります。
行政のデジタル化にかかわるすべての皆さんのための本です。よろしくお願いします!