月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2021年2月号 特集:「新しい日常」における首長・議員と職員、住民の関係

NEW地方自治

2021.01.28

●特集:「新しい日常」における首長・議員と職員、住民の関係

新型コロナの第三波の拡大で、政府は1月7日、1都3県を対象に緊急事態宣言を再発出した(その後、7府県を追加)。感染拡大防止に向け、いわゆる3密回避など「新しい日常」「新しい生活様式」の徹底が求められている。コロナ禍の中で自治体においては税収減に伴い、住民サービスの見直しが迫られ、首長・議員と職員、住民の関係に軋轢が生じる例も出始めている。「新しい日常」における首長・議員と職員、住民の関係を探ってみたい。
(月刊「ガバナンス」2021年2月)

金井利之氏(東京大学大学院法学政治学研究科/法学部・公共政策大学院教授)

■「コロナ対策禍(あたらしいにちじょう)」における首長と補佐機構としての職員/金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/法学部・公共政策大学院教授)

国・自治体の為政者にとって、無為無策を続けることは、政治的には困難である。リーダーシップを発揮していないなどと非難されるからである。それゆえに、為政者は無謀な偽政に手を染め、その苛政がさらなる犠牲を生む危険もある。首長の補佐機構としての自治体職員は、そのような苛政への誘因のなかで、適切な有為無為が問われている。

■地方自治体における「新しい日常」と庁内クラスターの危機管理/新川達郎(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)

危機事態は想定できるものと想定できないものがあり、そのいずれにも対応できる体制をとることが、「新しい日常」の基本となる。様々な災害や感染症が繰り返し発生する今日においては、危機管理それ自体が「新しい日常」として地方自治体に準備されることは当然である。

■ポピュリズム的公約の台頭と選挙──リモート・デモクラシー元年によせて/白鳥 浩(法政大学大学院公共政策研究科教授・同大学院政策科学研究所所長)

新型コロナウイルスの蔓延は、日本の政治、特に民主主義の在り方に大きな変化をおよぼした。このコロナ禍における民主主義の特徴は、ヒトとヒトとが直接の接触を行えないということであった。首長や議員は、住民との関係で直接ではなく、距離をとった遠隔(リモート)状態で触れ合うこととなった。この状況は「リモート・デモクラシー(remote democracy)」と呼ばれる。そうした状況下において、特に影響を受けたのは選挙における公職の候補者と有権者との間の関係である。

■コロナ禍と暴言/阿部昌樹(大阪市立大学大学院法学研究科教授/都市研究プラザ所長)

自治体職員は「全体の奉仕者」である以上、暴言は厳しく自制しなければならないとしたならば、そのためにまず必要なのは、住民の多様性を認識することである。地域社会は、けっして同質な人々の集まりではない。そのことを前提として、異質な他者への配慮を怠らないことが、暴言を自制するために、まず求められることなのである。

■コロナ禍における河村ポピュリズムの不発──愛知県知事リコール署名運動の顚末/後 房雄(愛知大学地域政策学部教授)

新型コロナの感染第二波が収まりつつあった昨年8月25日から10月25日までの2か月間に渡って、高須克弥氏(「高須クリニック」院長)が代表となり、河村たかし名古屋市長が「全面的にバックアップ」する大村秀章愛知県知事のリコールを求める署名運動が展開された。以下では、この運動を、今年4月に予定されている名古屋市長選挙を睨んだ「河村ポピュリズム」の最新エピソードとして位置付けてその顚末を分析してみたい。

■コロナ禍の自治体現場に三ゲン(資源・人間・権限)を/役重眞喜子(岩手県立大学総合政策学部講師)

この原稿を書いている時点で緊急事態宣言が全国11の都府県に拡大されている。メディアは非正規雇用の雇止めや困窮者相談の増加、女性自殺者の急増などを毎日のように報じている。こうした中、ひっ迫した自治体現場で働き続ける職員の疲弊を私は案じている。事態は長丁場になるだろう。まずは自分の体と心をしっかり守ってほしい。支える人が元気でなければ誰かを支えることもできない。その上で、この危機を職員と住民が一体となって乗り切るため、考えうる検討事項を示したい。

■「新しい日常」と地域コミュニティ/岩崎恭典(四日市大学学長)

コロナ禍が地域コミュニティの存立条件に大きな影響を与えつつある今、地域コミュニティの側も、その支援にあたる自治体職員も、異口同音に「今はアイドリングの時期だ」という。今、取り組むべきことは、コロナ禍により加速した地域の劣化、環境の悪化の状況を的確に予測し、さらに、将来に向けての判断材料を整えることであろう。

■コロナ禍における情報の過剰と不足/奥津茂樹(情報公開クリアリングハウス理事)

コロナの感染拡大の中で、私たちのまわりにはコロナに関する無数の情報があふれている。それらをながめながら、私は違和感を抱え続けてきた。私が情報公開に関心をもつきっかけになったのが、故奥平康広氏の名著『知る権利』(現代法叢書)だ。この中で同氏が述べていた「情報の自由で豊かな流れ」という言葉にひかれ、めざすべき社会の理想を見出した。その後、情報公開の制度化が進み、ネットやSNSが広がる中で、「情報の自由で豊かな流れ」は実現したかのように見える。しかし、少なくともコロナに関する情報は「豊かな流れ」とは言えない。それが私の抱く違和感である。

■新型コロナ禍での「チーム議会」の構築/岩﨑弘宜(茨城県取手市議会事務局次長)

取手市議会の「チーム議会」、そして「議会愛」。この知名度、認知度、本気度は、コロナ禍での議会における「オンラインの活用」でますます向上した。まだ「チーム議会」が形成されていない議会の皆さんには、議員と職員が、まずは「傾聴」「受容」「共感」し、遠赤外線のようにジワっと暖かく、時には激しく、ゆっくりと「議会愛」を育んでいただきたい。そうすれば、その街の議会にニューノーマルが誕生すると確信している。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
非接触型住民サービスの最前線

コロナ禍はいまだ終わりが見えませんが、“ウィズコロナ”でデジタル技術などを活用した新たな住民サービスが次々と自治体現場に導入されています。自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も待ったなし。非接触型のサービスを中心に、住民目線で知恵を絞る自治体現場の動向を見ていきたいと思います。

■ウィズコロナ時代の非接触型住民サービス/森本浩之(ITbook株式会社西日本支社エグゼクティブシニアマネージャー)

本来のDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、課題を解決し、デジタル化を前提とした社会に「変革」することである。非接触型サービスは、住民と役所の関係を大きく変容させることにつながる。担当者から積み上げて理解を得るボトムアップの手法に加えてトップダウンの手法が有効であり、首長自らが意義を理解して住民や議会に説明し、役所全体を牽引することで、はじめて非接触型サービスの実現が可能となる。

〈取材リポート〉
■ダイナミックな官民連携でデジタル・スマートシティへ──浜松市

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、浜松市は民間企業と連携しながら新たな非接触型の住民サービスを相次いで導入している。一つは、市独自のデリバリーサービス。コロナ禍で苦境に立たされる外食産業の支援などを目的に、早期の事業実施を果たした。このほか、公共施設や飲食店などの混雑状況を知らせるシステムや、複数の輸送手段を用いての遠隔診療など、デジタル・スマートシティの実現に向けた取り組みがダイナミックに進んでいる。

■対話型ロボットやZoomを使って健康二次被害を防ぐ──新潟県見附市

新型コロナウイルスの感染拡大は、地域住民に多様な影響を及ぼしている。心身の活力が低下するフレイル(虚弱)問題もその一つ。高齢者でも健“幸”に暮らせる地域社会「スマートウエルネスシティ」の実現を目指す新潟県見附市は、コロナ禍を踏まえたフレイル対策を迅速に実施。遠隔操作が可能な対話型ロボットや健康運動教室へのオンライン会議システム「Zoom」の導入など、非接触型のサービスを活用し、外出自粛による運動・コミュニケーション不足を起因とした“健康二次被害”の防止策を矢継ぎ早に講じた。

■ウィズコロナの図書館サービス/佐藤達生(株式会社図書館流通センター代表取締役副社長)

新型コロナは図書館サービスにも大きな影響を与えた。緊急事態宣言により多くの図書館が休館し、その後も感染対策を徹底しながら、非接触、非来館型のサービスを拡充。コロナ後の変化の方向性も見据えながら模索を続けている。

●キャリサポ連載

■管理職って面白い! カラーバス効果/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ 単純に真似するだけではないTTPの本質/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/永富ひとみ
■AI時代の自治体人事戦略/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■独立機動遊軍 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■We are ASAGOiNG ! 地域公務員ライフ/馬袋真紀
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■“三方よし”の職場づくり/中道 眞
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク/公務員人材開発研究会

●巻頭グラビア

□シリーズ・自治の貌
   古川雅典・岐阜県多治見市長  マニフェストを起点に、「共につくる。まるごと元気!多治見」の実現を

マニフェストを基軸とした政策競争を行政運営の原動力にしている岐阜県多治見市。その体制を市長就任以来、強力に推進してきた古川雅典氏は昨年11月、第15回マニフェスト大賞でグランプリを受賞した。古川市長は、マニフェストを事業計画に落とし込むとともに財政的な担保を確保し、「共につくる。まるごと元気!多治見」の実現をめざす。

古川雅典・岐阜県多治見市長(68)。多治見市マスコットキャラクター「うながっぱ」とともに。多治見市は“あついまち”として知られるが、マニフェストを起点とした総合計画に基づく行政運営でも全国の注目を集める。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細川幽斎(十一) アフター関ヶ原

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 原発禍からのV7、コロナ後へのV8【福島酒・番外編(上)】
 原発事故、続く模索

東日本大震災(2011年)で苦しみ、台風19号災害(19年)でも大打撃を受けた福島県の酒蔵。たび重なる災害をはね除ける原動力となったのは、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した蔵数の7年連続日本一だった。今年、8連覇への挑戦は、コロナ禍という新たな厄災での消費低迷を生き抜く闘いの一つになる。昨年まで17回にわたって掲載した「福島酒シリーズ」の番外編として報告する。

□現場発!自治体の「政策開発」
   全国の自治体に先駆けて自動運転の路線バスを運行
 ──自動運転バスの定常運行(茨城県境町)

茨城県境町は、ソフトバンク株式会社の子会社であるBOLDLY株式会社(ボードリー)と株式会社マクニカの協力によって自動運転バスの定常運行を行っている。町民が安心して利用できる生活の足を確保し、いつまでも住み続けられる町を実現するのがねらいだ。自動運転バスの公道での実用化は全国自治体初の取組みで、運行開始後、バス停や路線を増やし、町民利用の利便性を高めていく。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 「チーム議会」として議会改革、政策条例制定が加速──岡山市議会

「議会改革度調査」(早稲田大学マニフェスト研究所調べ)で政令指定都市最後尾が続いていた岡山市議会。2019年の改選後、正副議長が議会改革の推進を訴え、個人や会派の枠を超えた「チーム議会」としての取組みが加速。議員提案による政策条例の制定など存在感を高めている同市議会を取材した。

●Governance Focus

□震災、原発事故、磯焼け……。追い詰められた「豊穣の浜」
 ──宮城県石巻市の牡鹿半島、漁協青年部が活路を探る/葉上太郎

東日本大震災による津波で壊滅的な打撃を受けた三陸沿岸の漁業。今もまだ復興に向け てもがいている浜が多い。なかでも牡鹿半島(宮城県石巻市)の谷川地区が置かれた状況は厳しい。主力産品の養殖ホヤが、最大の出荷先だった韓国から輸入禁止にされたのだ。福島第1原発の爆発事故が原因である。このままでは将来が見通せない。若手漁師が青年部を結成し、水産資源が枯渇する「磯焼け」対策なども含めて活路を探り始めた。

●Governance Topics

□新しい住民自治の構築を/第50回『都市問題』公開講座

(公財)後藤・安田記念東京都市研究所(小早川光郎理事長)は12月12日、都内で「『分権』から『自治』へ│地方分権改革から二十年」をテーマに第50回『都市問題』公開講座を開催した。2000年4月の地方分権一括法施行から20年を迎え、その意義と今後の分権の方向性を考えようというもの。公開講座では、地方分権を進めることの難しさ、新しい住民自治の構築の必要性などが強調された。

□“カイゼン運動”の火をこれからも灯し続けるために/カイゼン・サミット2020

クリスマス間近の昨年12月20日、「カイゼン・サミット2020~DNA運動から20年目のクリスマスプレゼント!」がオンラインで開催された。毎年開催されてきた「全国都市改善改革実践事例発表会」がコロナ禍のため1年順延されることから、その火を消さないための代替イベントに向けたキックオフの位置づけだ。

□SDGsの実現へ産官学の連携などを議論/名古屋市立大学都市政策研究センター・シンポジウム

名古屋市立大学都市政策研究センターは1月14日~24日、シンポジウム「SDGsの達成に向けた都市の役割」をYouTubeで録画配信した。SDGsへの社会的な関心がますます高まるなか、SDGsをめぐる世界的な取り組み状況や産官学の連携のあり方などについて、活発な議論が展開された。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□自治体のダウンスケーリング戦略/大杉 覚
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
 [著者に訊く!/『地域学をはじめよう』山下祐介]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 木蝋の魅力を一人でも多くの人に──本多木蝋工業所(長崎県島原市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ/茨城県筑西市
 人と自然、文化芸術の共生を未来へつなぐ
□山・海・暮・人/芥川 仁
 自然に逆らわず自然を読む──島根県浜田市三隅町西河内
□土木写真部が行く~暮らしを支える土木構造物
 出町の飛び石~川を感じる橋の原型
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/ずーしーほっきー(北海道北斗市)
□クローズ・アップ
 けん玉を条例で「市技」に──山形県長井市

■DATA・BANK2021

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W/Aコロナ時代の自治体職員

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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