知っておきたい危機管理術/酒井 明

酒井明

危機管理術 新型コロナウイルスのリスクを減らすための日常生活の工夫(2020年11月執筆時点の内容です。)

地方自治

2021.02.19

知っておきたい危機管理術 第53回 新型コロナウイルスのリスクを減らすための日常生活の工夫
東京福祉大学 酒井 明

『地方財務』2020年12月号

① 北海道で100名超え

 (2020年11月執筆時点では、)冬を迎える北海道で1日100名を超える新型コロナウイルス感染者が出ている。気温の低下とともにコロナが感染力を増していること、若い世代を中心にコロナ慣れが生じ警戒心が薄れていることが挙げられる。東京都も1日200名を超え、高止まり状態が続いている。これに対していかに対応するか。コロナについて、個人レベル、地域レベル、国家レベルでの対応が考えられるが、今回は個人レベルの対応を考える。

 個人レベルではマスク、手洗い、部屋の換気をよくすることなどで日々の予防を徹底することはだれしも行っていると思われる。意外と忘れられているのは免疫力を上げることである。免疫力が強ければ、ウイルスの体内への侵入を最小限に抑え、たとえ発症しても、重症化を防ぐことができる。コロナを正しく知って正しく恐れることが重要である。

② 自然免疫と獲得免疫

 免疫力を高める方策を考える前に、免疫の具体的な働きを理解しよう。免疫には大きく分けて、自然免疫と獲得免疫の2つがある。自然免疫は生まれながらにして備わっている免疫。獲得免疫はワクチン等の予防接種や過去にその病気に感染することによって後から獲得する免疫である。それぞれの免疫がウイルスを撃退する仕組みを見てみよう。自然免疫としてはNK細胞、マクロファージがある。常時体内をパトロールし、異物を見つけたら直ちに攻撃する前線部隊といえる。未知のウイルスに対しても最前線で戦い、それ以上の侵入を食い止める役割をする。一方、獲得免疫はキラーT細胞、B細胞、ヘルパーT細胞がある。自然免疫がウイルスを食い止めている間に、自然免疫の応援の依頼を受けて出動する。ウイルスという敵に対して、それに合わせた武器(抗体)を作って攻撃し撃退する。すなわち、自然免疫がウイルスを攻撃し、食い止めている間に獲得免疫のリーダーであるヘルパーT細胞がB細胞に命じてウイルス撃退のための抗体を作らせる。さらにもう1つの獲得免疫のキラーT細胞がその抗体を使って、ウイルスに攻撃を仕掛ける。ここで自然免疫と獲得免疫が協力してウイルスを撃退するのである。このようにウイルスなどを撃退し、体を守るために不可欠なのが免疫細胞というわけである。しかし、その働きは加齢等により衰える。20歳前後でピークに達し、それ以後衰えていき、70代ではピーク時の10%程度にまで落ち込むといわれている。また、不健全な食事や運動不足などの生活習慣の乱れも免疫力を下げる原因といわれる。その他免疫力を下げる大きな原因にストレスがある。

③ 免疫力を上げるには

 免疫力を上げる日常の過ごし方はどのようにしたらよいか。毎日の生活にちょっとした工夫を取り入れて免疫力を高めておくことが重要である。例えば適度の運動。自然免疫の要であるNK細胞は適度な運動により活性化するといわれる。過激な運動は逆効果になる場合がある。運動には適正な程度が必要である。会話が隣の人とでき、あまり息が上がらない程度の早歩きは免疫力をアップしてくれる。また、有酸素運動と無酸素運動を組み合わせてやると免疫力アップ効果が倍増するといわれる。有酸素運動はウォーキングや水泳など筋肉への負担が軽い運動であり、無酸素運動は筋力トレーニングなど、短時間で激しい負荷がかかる運動を意味する。この2つの運動を組み合わせると代謝が上がって体が温まり、免疫力がアップするという。例えば有酸素運動として足踏み運動。背筋をまっすぐに伸ばし、太ももを高く上げる運動を2、3分ぐらい行う。無酸素運動としてスクワット。肩幅程度に足を開き、つま先を前に向ける。お尻を突き出すようなスタイルで、太ももと床が平行になるまで膝を曲げる。その姿勢で3秒ぐらいキープした後、膝をのばして元の姿勢に戻る。これを20~30回体力に応じて繰り返す。回数や時間はその人の体力に応じて柔軟に取り込めばよいと思われる。

 免疫力アップのための食事はどうか。腸内には免疫細胞の7割近くが集中しているため、腸内環境をよくすれば免疫力は効率よく上がる。乳酸菌としてヨーグルト、みそ、キムチ、植物繊維として蓮根、ゴボウ、バナナ等が腸によい。特に乳酸菌は自然免疫のNK細胞とマクロファージを活性化する。さらに、免疫力を高める上で忘れてはならないのがメンタルヘルスである。不安やイライラなど、心を乱すストレスはNK細胞の働きを弱め、免疫力を下げる要因となる。悩みや不安の多い環境下でいかにうまくストレスと付き合っていくかは大事である。心身ともリラックスをする時間を作り、ストレスと上手に向き合う。特に笑うことはストレスを抑え、NK細胞を活性化する。獲得免疫を支えるワクチンの普及が一刻も早くなされることを祈りたい。

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酒井明

東京福祉大学特任教授

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