月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2020年10月号 特集:緊急時の予算編成・執行・評価

NEW地方自治

2020.09.30

●特集:緊急時の予算編成・執行・評価

毎年のように相次ぐ自然災害、そしてウィズコロナ時代を迎えた日本。日本で新型コロナウイルスの感染が深刻化したのは3月のことで、自治体では新年度の予算編成を終えたばかりだった。自治体ではその後、コロナ対策で毎月のように補正予算の編成、執行に追われている。緊急時であっても、限りある財源を最大限有効かつ適切に執行する(自治法による「最少経費・最大効果」)のは当然のこと。緊急時における自治体の予算編成、執行(実行)体制、そして評価というサイクルのあり方をいまこそ考えてみたい。

月刊「ガバナンス」2020年10月

山田啓二(京都産業大学教授(元全国知事会会長))


■緊急時の予算編成と首長の役割/山田啓二(京都産業大学教授(元全国知事会会長))

コロナウイルスの蔓延の中で、今や国も地方公共団体も補正予算を組むのは当然のこととなっている。では、首長はこうした緊急時の予算編成に当たってはどう考え、どう対処すべきなのだろうか? 本稿では私の経験も踏まえながら、そのあり方を考えてみたい。

■曲折たどった「自治体主導」の原則──議会の機能維持が今後の課題に/人羅 格(毎日新聞論説委員)

新型コロナウイルスの感染対策は国と地方の権限を巡る混乱を経て、自治体を担い手とする原則が確立されつつある。ただし、広域対応の枠組みや、休業補償問題などの懸案は積み残されている。自治体の役割が認められるとともに、地方議会の機能維持も課題として浮上している。

■緊急時の条例制定と立法事実/山口道昭(立正大学法学部教授)

安倍総理の突然の辞任表明を受け、新たな内閣が成立したが、インフル特措法改正の行方は定かではない。そうであれば、条例による対応があってもよいと考えられる。損失補償のみならず協力金の支給にしても、裏付けとなる財源が必要である.財源論を最優先で考えれば、自治体では規制に及び腰になり、国に法改正を要望するにとどまることも理解できる。しかし、理解はできるものの、それでよいのかといえば、腑に落ちないものが残る。条例ならではの措置を盛り込んだ規定を期待したい。

■不測事態の発生と自治体──首長リーダーシップと組織編成の課題/中邨 章(明治大学名誉教授)

災害や事故が発生すると、あらゆる政策判断は首長に集中する。ところが残念なことに、現在のコロナ問題を含め緊急時の難問に立ち向かう首長は、通常、危機管理のアマチュアである。危うい事態を改善するため、自治体は平静時から現行の首長中心の意思決定制度に、一工夫加えておくことが望ましい。首長の補佐機能を充実するという施策が、それにあたる。「ワーキンググループ」がさまざまな政策課題を検討し、最終方針を決定する。首長の役割は、ワーキンググループが下した政策判断に、最終的な結論を下すことである。

■緊急時の地方自治体の広報・広聴を進める具体的視点/牧瀬 稔(関東学院大学法学部地域創生学科准教授)

新型コロナウイルス感染症は、緊急時における地方自治体の広報と広聴を考える一つの契機となった。筆者はシティプロモーションという観点から、自治体の広報と広聴に取り組んできた。筆者の経験は、緊急時の広報と広聴においても有効な視点を提供できると考える(最近は緊急時における広報・広聴に関する講演や相談が増えている)。本稿は新型コロナウイルス感染症を事例として、緊急時の自治体の広報と広聴を進める具体的な視点を言及する。実際に筆者が活用していた技法の一部を紹介する。

■緊急時の自治体政策の評価──「さよならPDCA」と三つの断捨離/西出順郎(明治大学公共政策大学院教授)

緊急時の政策評価。それは、第一に即断即行の政策決定に資すること、第二に即断即行の政策を総括し、その価値を改めて問うことにある。「さよならPDCA」も三つの断捨離もそれらを実装する基礎工事として捉えてもらえたら有難い。本格工事は各首長の腕の見せ所である。

■ウィズコロナ期の地方議会のあり方とオンライン会議導入の意義/河村和徳(東北大学大学院情報科学研究科准教授)

2020年秋以降、地方議会は執行部に対する配慮を徐々に減らし、非常時の議会運営を改めていくべきであると、筆者は考える。また、それに合わせ、執行部のコロナに対する初動対応を検証し始める必要がある。ウィズコロナ期は、平時の議会運営に戻すのではなく、新型コロナを意識した「新しい議会運営」の方法を検討し、実践に移し始める必要がある。

■2021年度予算を起点とした今後の自治体財政──緊急時の対応力を高めるために/稲沢克祐(関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科教授)

2021年度当初予算編成に求められる対応は、第一に、20年度に取り組んでいるコロナ禍対策事業について、21年度の当初予算と補正予算のどちらに配置するのかを議論し、補正財源を確保することである。第二に、平常時から懸案であった事項について解決の道筋をつけること、第三に、職員負担への対応である。これらを踏まえ、平常時に戻る時期を探りつつ、財政計画を改定しておくことが必要であろう。

■緊急時の自治体と市民協働/杉岡秀紀(福知山公立大学地域経営学部准教授)

わが国における市民協働は、「形式的参加」で留まっていた面がある。しかし、今回のコ
ロナ禍による緊急対応により、これまでなかなか越えられなかった壁をオンラインなどの
手法で想像以上のスピードやツールで越えられる可能性が出てきた。すなわちピンチを
チャンスにではないが、このタイミングを活かせるか否かはまさに危機感やビジョンを共
有する市民と自治体にかかっていると言えよう。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
“ニューノーマル”時代のメンタルケア

新型コロナウイルス対策に追われ続ける自治体現場。地域によっては大規模な気象災害にも見舞われ、公務職場はより厳しい状況にあります。そんな今だからこそ、発想や気分を転換し、時には息抜きをしながら、日々の活力を維持することも重要です。非常時が続く自治体職員を組織としてどうケアしていけば良いのか。“ニューノーマル”時代のメンタルケアを一緒に考えてみませんか。


■“ニューノーマル”時代のメンタルケア/松井 豊(筑波大学名誉教授)

ストレスケアで最も重要なことは、人と話すことである。外出自粛生活では「家族との会話」が中心となるが、狭い自宅の中で家族とばかり話していると、かえって煮詰まってしまうことがある。そこで重要になるのは、「知人友人との会話」である。ZoomやSkypeなどの映像を介した通話手段が普及し、ふだん会っている友人や仲間とだけでなく、これまで連絡が途切れがちだった旧友との映像を介した通話も、この時代の楽しみになるであろう。

〈インタビュー〉
■コロナ禍で求められる自治体現場のメンタルヘルスとは/𠮷野 聡(新宿ゲートウェイクリニック院長・精神保健指定医)

新型コロナウイルスの感染拡大にいまだ終わりが見えず、緊張感が社会を覆い続けている。医療機関とともに、その緊張を直に受け止めているのは自治体だ。コロナ対応で業務量も増える中、多発する災害への対応も迫られ、職員の心身への負担はこれまで以上に過重になっている。そんな“ニューノーマル”の自治体職場に求められるメンタルヘルスについて、元東京都精神科健康管理医で新宿ゲートウェイクリニックの吉野聡院長に聞いた。

■“感情労働”としての自治体業務との向き合い方/関谷大輝(東京成徳大学応用心理学部准教授)

本誌18年4月号でも紹介したが、自治体の仕事も「感情労働」の側面が強くなっている。今回のコロナ禍のような状況では、より住民対応などでストレスがかかりやすい場面も増えているはずだ。そうした中でどう対処すればいいだろうか。

●キャリサポ連載

■管理職って面白い! タイムトラベル/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ 地域づくりで大切なこと──行政目線から住民目線の視点へ/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/戸張昌代
■AI時代の自治体人事戦略/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■独立機動遊軍 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■We are ASAGOiNG ! 地域公務員ライフ/馬袋真紀
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■“三方よし”の職場づくり/小嶋敦夫
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク/だるマルシェ(群馬県高崎市)

●巻頭グラビア

□シリーズ・自治の貌
 小園拓志・長野県御代田町長 まちの宝を活かし、御代田の未来に新しい風を!

北海道から長野県御代田町に移住し、1か月で町長選への出馬を決め、半年後の2019年2月に現職を破って町長に就任した小園拓志氏。大学時代は行政学者の西尾勝氏のゼミで学び、北海道新聞記者として自治の現場を取材してきた小園町長は、町長選で「御代田の未来に新しい風を!」と訴えた。「公設塾」の開設など御代田では「新しい風」が吹き始めている。

小園拓志・長野県御代田町長(43)。御代田町役場の敷地入り口に展示されているメルシャンの初代ポットスチル(蒸留器、1950年式)の前にて。小園町長は、御代田産ウイスキーの復活にも思いを馳せている。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細川幽斎(七) 息子夫婦の確執

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 観光が低迷し、醤油蔵が苦境に陥る【「福島醤油」日本一の情景(7)】
 原発事故、続く模索

新型コロナウイルスの流行で観光が低迷し、醤油蔵が深刻な打撃を受けている。一見して関係ないように思える業種だが、観光は裾野の広い産業なのだ。福島県の会津地方では、人口減少や大手メーカーの攻勢に耐えるために、観光商品として醤油を売り出し、活路を見いだしてきた蔵があった。だが、今回のウイルス禍では、東日本大震災に勝るとも劣らない苦境に陥った。

□現場発!自治体の「政策開発」
 職員自ら被害防止に携わり防護から捕獲・利活用を推進
 ──総合的な鳥獣被害防止対策(静岡県伊豆市)

シカやイノシシなどによる農林産物の被害が拡大していた静岡県伊豆市は、市と地域住民が一丸となって鳥獣被害の防止対策を推進している。集落ぐるみで防護柵を設置するとともに、地元狩猟者による捕獲隊を結成。捕獲物は食肉加工施設で活用を図り、活用できない個体は減容化施設で処理するなど、総合的な対策を講じている。担当職員が現場作業に関わっているのも特徴で、農林産物被害額は着実に減少している。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 新型コロナも対象にした議会BCPの改訂版を作成──静岡県御殿場市議会

静岡県御殿場市議会は2019年12月11日に「議会災害対応マニュアル・議会BCP(業務継続計画)」を策定。今年4月20日、5月19日には、新型コロナウイルス感染症も対象にした改訂版を作成した。明治大学とパートナーシップ協定を結ぶことで外部の知見も活用しながら議会改革を進めている同市議会を取材した。

●Governance Focus

□3年間に2度被災し、いつまで耐えるのか──島根県江の川流域、7月豪雨で無堤地区の叫び/葉上太郎(地方自治ジャーナリスト)

長期間停滞した梅雨前線が全国で災害を引き起こした「7月豪雨」。島根県を流れる江の川流域では、堤防のない「無堤地区」で洪水が発生した。2018年7月の西日本豪雨でも被災した地区が、また氾濫に見舞われたのである。築堤は50年来の地元の悲願なのに実現していない。それどころか、国は「流域治水」として集団移転なども選択肢に入れ始めた。「見放された地区」という言葉が住民から漏れる。

●Governance Topics

□議会版BCPは議会のミッション遂行に不可欠/LM九州「輝け議会!!対話による地方議会活性化フォーラム」

ローカル・マニフェスト(LM)推進ネットワーク九州(神吉信之代表)は8月29日、オンラインによる「輝け議会. 対話による地方議会活性化フォーラム」を開催した。フォーラムでは、議会版のBCP(業務継続計画)や政策サイクルを中心に議論。コロナ禍の中でも議会のミッションを遂行するために、議会版BCPの策定は不可欠との声が出ていた。

□外出自粛による健康二次被害を予防する社会参加や健康づくりを/自治体+研究機関の3団体が緊急提言

自治体と研究機関が連携し、健康なまちづくりなどに取り組む3団体は、コロナ禍によって進む「健康二次被害」の予防に向けた緊急提言をとりまとめ、8月27日に自民党のスポーツ立国調査会とヘルス&コミュニティ議連に提出した。コロナ禍による外出自粛などで、高齢者の健康への影響がすでに出ていることから、早期の対策の必要性を訴えている。

□子どもの声を聴き、里親の子育てを考える/「ナイス!な親プロジェクト──こども&おとな会議」発表会

里親や子育て中の親などが活動する「一般社団法人グローハッピー」が1年間かけて進めてきた「ナイス!な親プロジェクト」のオンライン発表会が8月29日に行われた。当日はプロジェクトが「こども会議」「おとな会議」を通じてまとめた「子どもの考えるナイスな社会」「里親に必要な子育てスキル12か条」の概要などを説明。そこに込められた思いなどを紹介した。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□自治体のダウンスケーリング戦略/大杉 覚
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『公務員という仕事』村木厚子]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 自然環境の時間軸に委ねるい草づくり──い草織り師・岡 初義さん(熊本県八代市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ/新潟県妙高市
 妙高山麓に広がる、大地の恵みと人の営みが調和した「生命地域」
□山・海・暮・人/芥川 仁
 命を預かる覚悟と乳牛への慈しみ──北海道沙流郡日高町富川西
□土木写真部が行く~暮らしを支える土木構造物
 伊良部大橋~耐久性設計の最先端技術を結集した悲願の離島架橋
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/おおまぴょん(長野県大町市)
□クローズ・アップ
 地震、コロナ……。「三瓶温泉の公衆浴場を助けて」──島根県大田市、志学地区

■DATA・BANK2020

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「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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