月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2020年7月号 特集 新型コロナ時代への適応と地域

NEW地方自治

2020.06.30

●特集 新型コロナ時代への適応と地域

医療面のみならず、社会・経済にも大きな影響を与え、世界の風景を一変させた新型コロナウイルスのパンデミック。日本では4月に緊急事態宣言が出されたが、5月には段階的に解除され、出口戦略を模索する動きが始まっている。だが、外出制限を緩和した諸外国で感染再拡大が生じるなど状況は予断を許さない。世界中で流行が蔓延している間は、常に再流行の可能性は残っており、日本でも「新しい生活様式」への行動変容が求められているように、ワクチンや特効薬が量産されるまで年単位での先の長い取り組みになる。こうした「withコロナ」の時代に地域・自治体はどう適応していかなければならないのか、考えてみたい。

月刊「ガバナンス」2020年7月号

牧原 出氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)

牧原 出氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)

■新型コロナ時代の都道府県・市町村/牧原 出(東京大学先端科学技術研究センター教授)

新型コロナの感染の状況は地域によって異なり、自ずから自治の可能性が広がったと言える。感染拡大の局面は国さらには都道府県主導とならざるをえないが、感染縮小以降の現在の局面でこそ、そこからの立ち直りは市町村の努力次第である。感染症の蔓延は社会の変化を加速するといわれる。感染症を一つのきっかけに地域の未来像が見えてきたとき、新しい自治の可能性が開けるはずである。

■新型コロナに向き合う減災と復興の取り組み/室﨑益輝(兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科長・教授)

今回の新型コロナウイルス災禍も、災害とみて対処しなければならない。地震や台風などと同じように、被害軽減に努め、被災救済をはかり、災害復興に努めることが求められるのだ。阪神・淡路大震災からの復興では、社会のひずみや問題点と向きあって、改善をはかることが求められた。今回の復興でも、変革に取り組まなければならないと思う。新型コロナの蔓延で、社会の脆弱性や問題点が無数に顕在化したからである。

■日本経済のパラダイムシフトと地域社会/諸富 徹(京都大学大学院教授)

緊急事態宣言が解除されたが、その経済影響の全貌が明らかになるのは、むしろこれからだ。パンデミック(感染症の世界的大流行)がもたらす地域影響は一時的なものではなく、深く、永続的なものとなる可能性がある。とりわけ人口と経済活動が集中する都市のあり方の問い直しを、コロナ危機は迫っているといえよう。

■新型コロナで都市・地方間の人の流れは変わるのか/山下祐介(東京都立大学教授)

この数年、政府主導でインバウンドを見込んだ観光投資が進められてきた。観光は地方の重要な核産業になりつつある。交流・観光は、地方移住はもちろん、都市・地域間の人の流れの基本になっている。今後とも交流・観光産業をしっかりと生き延びさせ、パンデミック脱出後の、コロナ後の新たな人の流れを構想するためにも、この状況への十分なサポートと、再開準備へ向けた雌伏の時の応援が不可欠である。

■過疎地域から見たアフターコロナ/作野広和(島根大学教育学部教授)

アフターコロナにおいて過疎地域がとるべき行動は、今一度原点に戻り、安全・安心に暮らすことができるように心がけることである。過疎地域に求められることは、アフターコロナにおいても慌てることなく、地に足のついた活動を確実に行っていくことに他ならない。これらの行動は、過疎地域だけに課せられた課題ではない。都市地域を持続させるためにも、国民全体が取り組むべき課題である。

■新型コロナ時代の地域コミュニティと自治体職員/櫻井常矢(高崎経済大学地域政策学部教授)

未経験の困難を前にしながらも、地域コミュニティの実情を最もよく知るはずの基礎自治体が、今こそその力を発揮するときである。その上で、自治体職員には地域が再始動するための丁寧なサポートをまずは求めたい。そして小手先の技術的な課題ではなく、新型コロナが露呈させた地域づくりの課題や目的を今一度見つめ直す場づくりを期待したい。その動機づけは、自治体職員の役割である。

■withコロナ時代の地域共生社会/原田正樹(日本福祉大学副学長)

新型コロナウイルス感染症とどう向き合うか。感染予防か、経済活動かの議論が盛んになされるが、もうひとつ、私たちの社会が分断されないように注視しなければならない。感染対策が行き過ぎると「隔離」が強化され、経済支援が遅れるほど「格差」が増大されていく。このまま社会的分断が進んでしまってはならない。このような状況下で、どう「つながり」を維持していくことができるかは、大きな課題である。

■ポストコロナに向けて、オンラインによる市民対話を行政はいかに活用していくか
 ~「オンライン自分ごと化会議」を事例として/伊藤 伸(構想日本総括ディレクター)

新型コロナの感染拡大の影響で、多くの自治体で市民向けのイベントや市民が参加する会議を中止している。当然の判断ではあるが、職員の中には、市民対話は時間と負担がかかるので、できれば避けたいと考える人もいる。市民と対話しない環境が常態化しないよう気を付けなければならない。

 

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
新型コロナ対策、自治体窓口の最前線

相談・窓口業務の急増と接触機会の回避──。自治体はいま、本来なら相反するはずの二つの事案を同時に乗り越える必要性に迫られています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生んだ、かつてない事態。感染症そのものに加え、経済的な生活困窮からも住民の生活と命を守らなければならない中、難局に挑む自治体の現場を追います。

■非常時に求められる自治体相談窓口の危機管理対応/鈴木秀洋(日本大学危機管理学部准教授)

自治体には多種多様な相談が持ち込まれる窓口があり、職員は多大なストレスを抱えながら日々の業務をこなしている。コロナ禍の今、住民と自治体の相談窓口で何が起きているのか。その体制・業務運営の検証は、事後ではなく、現在進行形の検証と改善が、喫緊の課題となっている。ここではもう一度根本から相談窓口の理念・制度設計・運用について考えてみたい。

〈取材リポート〉
■動画サイトを活用し窓口混雑を緩和──事前ネット申請で待ち時間短縮も/千葉市

新型コロナウイルスの感染者が全国的に一段と増えて緊張感が高まっていた3月31日。千葉市は新型コロナウイルス対策を契機として、外出などの行動制約下でも社会経済活動を維持できる環境整備を一層、推進することを目的に、「ちばしチェンジ宣言!」(チェンジ宣言)を発出した。大きく△市役所が変わる!△教育が変わる!△企業が変わる!──の3基軸で施策を展開。市役所関連では窓口業務の改善策などを打ち出し、窓口混雑による市民の不安を解消する姿勢を強く示した。

■ひとり親世帯などに申請手続きなしで緊急給付を実施/滋賀県野洲市

滋賀県野洲市は、今回のコロナ禍に際して、市民向けに四つの生活支援緊急給付金制度を設けた。なかでも、児童扶養手当または就学援助費を受給している世帯に対しては、申請手続きなしで1世帯あたり4万円(子ども1人の場合)を給付。申請主義という役所の常識にとらわれない柔軟な対応、そして本当に困っている人や制度の隙間で苦しむ人を見極めての的確な支援は、長年にわたって生活困窮者の支援に注力してきた野洲市ならではと言える。

●キャリサポ連載

■管理職って面白い! ウィズ・コロナ/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 新型コロナがもたらした働き方の変化──リアルとバーチャルのバランスの大切さ/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/髙本理絵
■AI時代の自治体人事戦略/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■独立機動遊軍 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■We are ASAGOiNG ! 地域公務員ライフ/馬袋真紀
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■“三方よし”の職場づくり/東 克宏
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク
 /自主研等ネットワーク活動をきっかけに語る会

●巻頭グラビア

山田啓二氏(京都産業大学教授元全国知事会会長)

山田啓二氏(京都産業大学教授元全国知事会会長)

□シリーズ・自治の貌(特別編)(特集との連動企画)
 山田啓二・京都産業大学教授(元全国知事会会長)
 ポスト地方分権の時代、新しい住民自治の時代へ

京都府知事を4期16年間、全国知事会会長を4期7年間務め、地域再生、地方分権の推進に精力を注いできた山田啓二氏。地方分権一括法の施行から20年が経過し、山田氏(京都産業大学教授)はポスト地方分権の時代、新しい住民自治の時代へと歩みを進めていく必要性を訴える。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細川幽斎(四) 敵を味方にする文化力

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 震災、台風、そしてコロナ【「福島醤油」日本一の情景(4)】
 原発事故、続く模索

東日本大震災で自宅兼店舗が壊れて建て直し、昨年の台風19号災害でも浸水。その修復作業が終わらないうちに、新型コロナウイルスでダメージを受けた醤油蔵がある。福島県いわき市の山田屋醸造だ。度重なる災害だけでなく、狭まる醤油市場に立ち向かうため、自社の製品でどんな料理が美味しく作れるか、レシピ集を発行するなどして、逆に経営戦略を見定めた。

□現場発!自治体の「政策開発」
 野菜産地の魅力を発信し儲かる農業都市を実現する
 ──深谷市産業ブランディング推進方針(埼玉県深谷市)

日本有数の野菜産地である埼玉県深谷市は、「深谷市産業ブランディング推進方針」を策定し、強みである農業を基軸にした産業振興と地域経済活性化に取り組んでいる。人を呼び込むための「野菜を楽しめるまちづくり」を進めるとともに、農業とテクノロジーを融合させた新たな企業の集積に乗り出し、地域通貨を活用した地域内経済循環を高める取り組みを展開。元気と笑顔の"儲かる農業都市"の実現をめざしている。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 「チーム議会」でオンライン会議を導入し、議会の機能を維持・強化
 ──茨城県取手市議会

新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から急速に社会に広がったオンライン会議。自治体議会でもオンライン会議に対する関心が高まっているが、その先頭を走る議会として注目されているのが茨城県取手市議会だ。まさに議員と議会事務局職員が「チーム議会」として、議会機能の維持・強化に向け、前例のない挑戦をしている同市議会を取材した。

●Governance Focus

□太陽光発電による地域環境のかく乱は止まるか(上)
 国の環境アセス制度、太陽光発電を対象に/河野博子(ジャーナリスト)
見慣れた里山や田畑に太陽光パネルが広がる光景が全国各地で珍しくなくなった。そんな中、国の環境影響評価(環境アセス)制度が4月施行の政令改正で変わり、新たに太陽光発電事業が対象に加わった。景観の悪化に加え、大雨により樹々を伐り払った斜面が崩れて太陽光パネルが崩落するなどの事故が各地で続発しているためだ。周辺住民の反対も増え、全国の自治体は頭を抱える。

□コロナ禍で明らかになった自治体危機管理の課題と展望(上)
 リスク・マネジメントにおける危機管理4機能の構築/福田 充(日本大学危機管理学部教授)
2019年冬に中国武漢で発生した新型コロナウイルスは2020年に入り日本や韓国などアジア周辺国に拡大し、瞬く間に世界規模のパンデミックとなった。日本国内にウイルスが入ってきた1月から日本政府は新型コロナウイルス対策に注力し、4月には新型インフルエンザ等対策特別措置法のコロナ改正法による史上初めての緊急事態宣言を発出した。5月で緊急事態宣言は全国解除され、新型コロナ対策が次のステージへと移行する現在、新感染症対策のための自治体ガバナンスの課題と展望を危機管理とリスク・コミュニケーションの観点から2回にわたり検証したい。

●Governance Topics

□官民学の連携協定で、新しい民主主義の手法構築にチャレンジ
 ──茨城県取手市議会・同議会事務局が「デモテック宣言」
コロナ禍においてオンライン会議を駆使して注目を集めている茨城県取手市議会。同市議会・議会事務局は6月15日、官民学の連携協定で、ICTのさらなる活用による新しい民主主義の手法構築にチャレンジしようと「デモテック宣言」を行った。

□緊急事態宣言解除後の新型コロナからの再生などを議論──全国知事会議
全国の都道府県知事が一堂に会する全国知事会議が6月4日に開催された。今年は当初、滋賀県(大津市)で開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で初のウェブ会議での開催に。議題の中心はもちろん新型コロナ対策で、前週に政府の緊急事態宣言が全面解除されたことを受け、第2波、第3波に備えながら、社会経済活動を再生していくための「コロナを乗り越える日本再生宣言」をとりまとめた。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□自治体のダウンスケーリング戦略/大杉 覚
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□Bizモデルの地域づくり/小出宗昭
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『首都改造』源川真希]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 4代にわたって、ガラス浮き玉で北海道の漁を支え続ける
 ──ガラス浮き玉職人・浅原硝子製造所(北海道小樽市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ/群馬県中之条町
 自然・温泉・文化 スケッチに残したい風景の宝庫
□山・海・暮・人/芥川 仁
 忍耐強く繊細な漁師たち──鹿児島県志布志市志布志町
□土木写真部が行く~暮らしを支える土木構造物
 朝日橋~玉石で装飾されたアーチ橋
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/安田朗(高知県安田町)
□クローズ・アップ
 海水浴場、「発祥の地」で史上初の開設中止──コロナ禍で苦渋の決断・神奈川県大磯町

■DATA・BANK2020

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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