月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2020年9月号 特集:地方創生ネクストステージ──コロナ禍の先を見据えて

NEW地方自治

2020.08.28

●特集 地方創生ネクストステージ──コロナ禍の先を見据えて

第2期地方創生がスタートした。本格的な人口減少社会の中での持続可能な地域づくりを模索するものだが、今回のコロナ禍が前途に影を落としている。コロナ禍のような災禍の際には社会の「変化が加速する」「課題が顕在化する」と言われるが、日本でもリモートワークなどのIT化が進展する一方、観光に依存した地域経済の脆弱性が露呈するなど、地域を取り巻く環境は大きく変わりつつある。自治体はこうした変化を踏まえながら、その先を見据えた地方創生にどう取り組んでいくのか、考えてみたい。

月刊「ガバナンス」2020年9月号

宮脇 淳(北海道大学法学研究科・公共政策大学院教授)


■ウィズコロナ時代の地方創生/宮脇 淳(北海道大学法学研究科・公共政策大学院教授)

新型コロナウイルス感染症もワクチンの開発等により、今後、時期は不明確なものの感染がある程度抑制される時が来る。その時に仮に経済社会活動が全面再開となっても、再開までの時の経過と紆余曲折の中で経済社会の構図は構造的に変化せざるを得ない。新型コロナウイルス感染拡大以前に検討された地方自治体の基本構想や総合計画、そして地方創生の計画が、どこまでコロナ克服に向けた経済社会活動の変化に対して矛盾なく説明できる内容になっているか、あるいはいかなるリスクを抱えるに至っているか、今後の自治体経営の方向性を検討するに際して一度立ち止まり検証する必要がある。

■コロナ禍の地域と関係人口/田中輝美(ローカルジャーナリスト)

地域に多様に関わる外部者を指す関係人口。地方創生の方針を定める政府の第二期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で初めて関係人口の創出・拡大が盛り込まれたこともあり、関係人口に対する自治体の期待は急速に高まっている。その一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地域からは外部者の受け入れや向き合い方への戸惑いの声も聞こえる。コロナ禍に伴って起きた変化を踏まえつつ、これからの関係人口のあり方や課題を考えていく。

■デジタル技術×本質価値が導く新たな地方創生/藤井篤之(アクセンチュア株式会社ビジネスコンサルティング本部マネジング・ディレクター)

地域の取り組みを検討するには従来、行政区分および地理的な制約・格差が前提にあった。だが、デジタル化の加速によって、地理的な制約・格差が少なくなる可能性がある。人々を土地に縛り付けている要素が変化すると、人々は住む場所を自由に選ぶようになる。第2期地方創生では、その土地が持つ本質的な価値を見出すことができた地方のみがチャンスを手に入れることができる。

■With/Afterコロナの観光
 ~レスポンシブル・ツーリズムに向けて/高坂晶子(日本総合研究所調査部主任研究員)

観光地の生活・自然環境を守るため、訪れる側の取り組みを重視する動きは「レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)」と呼ばれ、近年、注目を浴びている。わが国観光の現状には縁遠いと思われるかもしれない。しかし、コロナ対応に即していえば、訪問先の住民の健康を保ち、日常を脅かさないため、観光客が極力感染リスクの低減に努めることは新常態下におけるレスポンシブル・ツーリズムといえよう。

■コロナ禍の先の地域をどうデザインするか
 ~「new normal」の意味と都市の交流とその変化/小笠原 伸(白鷗大学経営学部教授)

コロナ問題は都市のウィークポイントを裾野から攻めてくる。日頃我々が気にしつつも改善せずにきたことが暴露されるのを感じている。我々は大切な地域の課題にきちんと向き合ってこなかったのではないか、そして我々はリアルな社会で適切につながってきただろうか。今こそ地に足のついた市民向け施策や地域振興のビジョンを打ち出す段階である。コロナ問題は地方都市においては顕在化した地方の課題の象徴的な位置を占めている。

■SDGsを基点にグリーン・リカバリーによる地方創生を/枝廣淳子(環境ジャーナリスト)+新津尚子(幸せ経済社会研究所研究員)

新型コロナウイルスの問題は、社会がこれまでも抱えていた問題を、実感を伴って浮き彫りにする契機となっていることは間違いない。一人ひとりの安全と幸福を考えた「誰一人取り残さない」社会を真摯に目指すならば、地域、市民、あるいは企業レベルで取り組みを進めることが重要だ。

■地域金融機関との連携をどう進めるか/長島 剛(多摩大学経営情報学部教授)

時代とともに地域は変化する。自治体も地域金融機関も、当該地域のリアルタイムの全体像を把握しながら、この先の「withコロナ」の地域課題を見据えていかなければならない。市民の生活を支える役割がある自治体と、地域の中で企業支援を行ってきた地域金融機関が今後どのように連携し動いていくべきかを、戦略的に考えてみたい。

■進化するローカルファイナンス/深尾昌峰(龍谷大学政策学部教授)

本誌2017年6月号で、地域に社会的投資を取り込み、地域変革を促す「ローカルファイナンス」の概念提起と萌芽的な動きを紹介した。それ以降も果敢な地域での取り組みや新たな動きが起こっており、本稿ではそれらの動きを紹介していきたい。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
想定外に挑む清掃現場の“柔軟力”

先行きがいまだ見通せない新型コロナパンデミック。全国的に猛威を振るうなか、その影響は日々の生活を下支えする自治体の清掃現場にも及んでいます。緊急事態宣言中を中心に、外出自粛や在宅勤務の広まりから、ごみ量が増加。加えて、エッセンシャル・ワーカーでもある清掃職員の感染防止対策も喫緊の課題となりました。一方、毎年のように発生する大規模災害における廃棄物の処理でも、その度に柔軟な対応を求められています。そんな想定外に挑み続ける“柔軟力”に焦点をあて、清掃現場の今を探ってみます。

■コロナ禍と豪雨災害から見える清掃行政の今/藤井誠一郎(大東文化大学法学部准教授)

新型コロナウイルス感染症や災害等の想定外の事態が発生しても清掃サービスが提供されるのは、これまで蓄積してきた数々の経験に裏付けされた「柔軟性」を清掃部門が有しているからである。状況に応じて自らのリソースをいわば自由自在に変化させて対処していくことが自治体の清掃部門の強みの一つであり、この柔軟力や機動力こそがその真骨頂である。

〈取材リポート〉

■災害廃棄物の処理で県・市町村・産廃事業者間の連携を強化/茨城県+県内市町村

激甚化、広域化する気象災害が毎年のように発生する日本列島。こうした災害に対応するには、自治体間や民間事業者との連携が欠かせない。そんななか、茨城県では、昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)での経験を踏まえ、今年6月1日、県や市町村、産業廃棄物(産廃)事業者などが一体となって「災害廃棄物に係る連携及び協力に関する協定書」を締結。関係者間の協力関係を一層強化し、災害の際により円滑な対策を講じていくことを目指す。

■清掃職員のコロナ感染を想定してBCPを策定/東京都世田谷区

いまだ終息の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。中でも全国最多の感染者を抱えている東京都内の自治体は対応に追われ続けている。それは清掃業務の現場も同じ。こうしたなか、東京都内で最も人口が多い世田谷区は、早期に「新型コロナウイルス感染症の発生時における業務継続計画(BCP)」を策定。清掃職員がコロナに感染した場合を想定し、「重要区民サービス」に設定した可燃ごみの収集を継続あるいは復旧させることを前提に、対応方針を定めた。

●キャリサポ連載

■管理職って面白い! 言霊(ことだま)/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
 自主研の未来──オンラインの活用と民官交流の場へ/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/佐藤美穂
■AI時代の自治体人事戦略/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■未来志向で考える自治体職員のキャリアデザイン/堤 直規
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■独立機動遊軍 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■We are ASAGOiNG ! 地域公務員ライフ/馬袋真紀
■ファシリテーションdeコミュニケーション/加留部貴行
■“三方よし”の職場づくり/鈴木一博
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子
■地方分権改革と自治体実務──政策法務型思考のススメ/分権型政策法務研究会
■もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク
 /神奈川県政策形成実践研究会(神奈川県)

●巻頭グラビア

□シリーズ・自治の貌
 吉田信解・埼玉県本庄市長
 「世のため、後のため」、そして持続可能な市政の進展を

埼玉県本庄市は、『群書類従』で知られる盲目の国学者・塙保己一生誕の地。吉田信解(よしだ・しんげ)市長は今年2月25日の施政方針で塙保己一の言葉「世のため、後のため」を引き、持続可能な市政の進展に全力で挑むと表明した。

吉田信解・埼玉県本庄市長(52)。「本庄レンガ倉庫」にて。全国市長会社会文教委員会委員長を務める吉田市長は、無電柱化を進める全国市区町村長の会会長、日本李登輝友の会理事、そして住職など多彩な顔を持つ。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 細川幽斎(六) 家族模様

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 翻弄された末に、大臣賞を狙う【「福島醤油」日本一の情景(6)】
 原発事故、続く模索

福島県会津坂下町は醸造の町だ。人口は約1万5000人しかないのに、醤油蔵が二つ、酒蔵は三つもある。東日本大震災では激しい揺れにさらされ、各蔵とも大ダメージを受けた。そのうちの一つ、醤油醸造の高砂屋商店では機械が壊れて、製造方法を大きく変えることになった。風評被害にも翻弄され、全国醤油品評会に活路を見いだそうとする。見事に農林水産大臣賞を獲得して次へと踏み出した時、コロナ禍に遭った。

□現場発!自治体の「政策開発」
 係全体の業務量を見える化し、分担して迅速な処理を図る
 ──シェアボックス+やりかけBOX(さいたま市南区)

業務改善を推進しているさいたま市南区では、支援課障害福祉係が各職員の業務を平準化する仕組みとして「シェアボックス」を設置した。事務処理が溜まっている職員の自己申告に応じて手の空いている職員が手伝う取り組みだ。さらに、係全体の業務量を見える化する「やりかけBOX」を導入。業務平準化による事務処理の迅速化とともに、担当者不在時の問い合わせ対応も可能にし、市民の満足度を高めている。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 オンラインでの委員会開会など議会改革に邁進──大阪府議会

大阪府議会は5月26日、委員会のオンラインでの開会を可能とする委員会条例等の一部改正を全会一致で可決、早ければ9月定例会から実現する予定だ。また、議会改革検討協議会がエンジン役となり、議会のペーパーレス化や会議の欠席事由に育児や出産支援等を加える会議規則の改正などを実現。都道府県議会のトップランナーとして改革に邁進する大阪府議会を取材した。

●Governance Focus

□JR只見線被災から9年、ようやく進む復旧工事
 ──上下分離方式で求められる大胆な発想転換/葉上太郎(地方自治ジャーナリスト)

東日本大震災から4箇月後の2011年7月、福島県を豪雨災害が襲った。寸断されたJR只見線は、会津川口(金山町)―只見(只見町)間の27・6㎞だけ復旧されず、JR東日本はバス転換を図る。だが、地元の粘り強い運動で復旧が決まり、2022年の運転再開に向けて工事が行われている。発災から10年以上という歳月。全国初の上下分離方式の採用とあって地元負担は大きい。ただ、この方式は新しい仕掛けへの可能性も秘めている。

□「立候補者の選挙」から「有権者・市民の選挙」に
 ──愛知県新城市が公開政策討論会条例を制定/松下啓一(地方自治研究家・実践家(元相模女子大学教授)

今年6月、愛知県新城市は、「市長選挙立候補予定者公開政策討論会条例」を制定した。公の選挙のうち、市長選挙における公開政策討論会を公設で行う制度で、全国初の条例である。この条例は、直接には市民の知る権利に応え、市政への参加、そして住民自治の実質化を図るものであるが、これによって選挙を「候補者の選挙」から「有権者・市民の選挙」に代える試みでもある。

●Governance Topics

□自主研やネットワーク活動の「未来」を展望
 /全国自治体職員ネットワークサミット・スピンオフ企画
全国で自主研やネットワーク活動などに携わる自治体職員が集う「全国自治体職員ネットワークサミット」が7月25日、スピンオフ企画としてZoomによるオンラインイベントを開催した(東北OMと関東自主研サミットも共催)。テーマは「オンライン活用によるネットワーク活動の未来」。コロナ禍により自主研活動も変わらざるを得ないなかで、これからの姿をどう描いていくのか展望した。

□議会録画中継への字幕表示を実施/大阪府岸和田市議会事務局
大阪府岸和田市議会事務局は2019年の第3回定例会分から、インターネット録画中継で利用しているYouTubeの字幕表示機能を活用し、議会録画中継への字幕表示を実施している。字幕表示は聴覚障害者はもとより、障害がない人にとっても音声に文字情報が加わることでわかりやすいものとなっている。

□「議会不要論」を乗り越え、さらなる改革を
 /マニフェスト大賞実行委員会がオンラインで記念シンポジウム
マニフェスト大賞実行委員会は7月27日、オンラインで第15回マニフェスト大賞に向けた記念シンポジウムを開催した。シンポでは地方議員は必要か否かをめぐって議論。議会不要論を乗り越え、さらに改革を進めていく必要性が強調された。

□オンラインならではの工夫も凝らし、500人超が参加する交流会を開催
 /よんなな会
全国の自治体職員と国家公務員がつながる交流の場である「よんなな会」は8月1日、オンラインでの交流会を開催した。当日は全都道府県・全省庁から500人以上が参加。運営にオンラインならではの工夫も凝らし、リアルを超えた「withコロナ」時代の新しい交流のあり方を探るものとなった。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□自治体のダウンスケーリング戦略/大杉 覚
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『つながりが生み出すイノベーション』菅野 拓]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 次世代の職人たちに日本文化の想いを伝えていく
 ──漆芸修復師・清川廣樹さん(京都市北区)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ/大分県豊後大野市
 人も自然も優しい、心和らぐふるさとの風景が広がるまち
□山・海・暮・人/芥川 仁
 大海原に鍛えられ、自然と対等に生きる男たち──沖縄県南城市知念
□土木写真部が行く~暮らしを支える土木構造物
 白水溜池堰堤~造形美と流水美が織り成す日本一美しいダム
□クローズ・アップ
 市民が守り、国の文化財に登録される──新潟県長岡市摂田屋、機那サフラン酒本舗

■DATA・BANK2020

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※「人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ」は休みます。

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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