【例規整備】法制執務Q&A―公の施設の使用料の還付等に関する相談事例の紹介

地方自治

2020.10.23

◯法制執務Q&A―公の施設の使用料の還付に関する相談事例の紹介

<公の施設の使用料の還付>

Q 新型コロナウイルス感染症への対応のため公の施設の利用停止を行った。このような場合に、既納の当該施設の使用料を還付するには例規改正が必要か。また、公の施設の供用を再開後において利用を自粛した者に対し、同様に使用料を還付することは可能か。

A 「公の施設」とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(地方自治法第244条第1項)をいい、主な例として体育館、文化会館、博物館、水道施設等が挙げられます。これら公の施設については、地方自治法第225条において、「普通地方公共団体は、行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる」旨の規定があり、当該使用料に関する事項については、条例で定める必要があります(地方自治法第228条第1項)。

 市町村においては、「〇〇市立体育館条例」等といった公の施設の設置及び管理に関する条例を制定し、この中で使用料について定めている例が多く見受けられます。当該条例において、納付済みの使用料については原則として還付しないとしつつも、一定の条件の下で還付を認めると規定している市町村が多いようです。今般の新型コロナウイルス感染症への対応に伴う公の施設の利用停止が、条例又はその委任を受けた規則等で定める還付を認める場合の条件に該当するのであれば、使用料の還付を行うことが可能です。現行例規の規定の適用によることができる場合、例規の改正を行う必要はありません。

 公の施設の設置及び管理に関する条例の規定ぶりは様々ですので、具体例を挙げて検討します。

 次のA市条例の例のように、「利用者の責めに帰することができない理由」により、施設を利用することができない場合には、その使用料を還付することができる旨の規定を置いている場合は、今般の新型コロナウイルス感染症への対応に伴う当該施設の利用停止による利用不可は、これに該当すると考えられるため、当該規定により、使用料の還付を行うことが可能であると考えられます。

A市立体育館条例
(使用料)
第13条 利用者は、別表第1に定める使用料を納付しなければならない。
2・3(略)

(使用料の不還付)
第15条 既納の使用料は、還付しない。ただし、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その全部又は一部を還付することができる。
 (1) 体育館の管理上特に必要があるため、教育委員会が利用の許可を取り消したとき。
 (2) 災害その他利用者の責めに帰することができない理由により、施設等を利用することができないとき。

 また、次のB市条例の例のように、条例では使用料を還付することができる旨の規定を置き、その具体の要件を規則で定めているものもあります。この場合、当該規則で定めている要件を満たせば、使用料の還付を行うことができます。

B市地域センター条例
(使用料)
第4条 前条第1項の規定により承認を受けた者(以下「利用者」という。)は、別表第2に定める使用料を前納しなければならない。

(使用料の還付)
第6条 既納の使用料は、還付しない。ただし、市長が特別の理由があると認めるときは、その全部又は一部を還付することができる。

B市地域センター条例施行規則
(使用料の還付)
第11条 条例第6条ただし書の規定により使用料を還付することができる場合及びその額は、次のとおりとする。
 (1) 公益上の理由により利用の承認を取り消されたとき 全額
 (2) 災害その他やむを得ない理由により施設等が利用できなくなったとき 全額
 (3) 第9条第1項の規定により利用の取消しをした場合において市長が相当の理由があると認めるとき 全額
 (4) 前3号に掲げるもののほか、市長が必要と認めるとき 市長が定める額

2 前項の規定により使用料の還付を受けようとする者は、使用料還付請求書(第6号様式)を市長に提出しなければならない。ただし、同項第1号又は第2号に該当する場合は、当該請求書の提出を省略することができる。

 次のC市条例の例のように、条例で使用料を還付することができる旨の規定を置き、その還付手続を規則で定めているものもあります。還付手続等において、申請期限が定められている場合は、注意が必要です。この場合、申請書の提出時点で所定の申請期限が過ぎている使用料については、申請手続をすることができません。そのため、申請期限を延長したいとお考えの場合は、申請期限の特例を定めておく必要があると考えられます。

C市社会体育館の設置及び管理に関する条例
(使用料)
第8条 略
2 略
3 既に納入した使用料は還付しない。ただし、災害その他利用者の責めに帰することができない理由で、利用不能となったとき、又は教育委員会が特に必要と認めたときは、その全部又は一部を還付することができる。

C市社会体育館の管理及び運営に関する規則
(還付手続)
第6条 条例第8条第3項ただし書の規定により、使用料の還付を受けようとする者は、C市社会体育館使用料還付申請書(別記第4号様式)に利用承認書を添えて、利用予定日の10日後までに教育委員会に提出しなければならない。

 申請期限の特例の定め方としては、新規に申請期限の特例を定める規則等を制定することや、当該規則等の附則に特例規定を設けることが考えられます。前掲のC市規則の附則に、新たに第3項として追加することを想定した場合の規定例を次に掲げます。

附則
1・2 略

(申請期限の特例)
3 令和2年〇月〇日から同年〇月〇日までの間におけるC市社会体育館の利用に係る第6条の規定の適用については、同条中「利用予定日の10日後」とあるのは、「教育委員会が別に定める申請期限」とする。

 他方、条例上、使用料の還付に関する規定が存在しない場合は、使用料の還付を行うことはできません。この場合に、使用料の還付を行うこととする場合は、条例を改正し、上記各市条例の例のように、使用料の還付に関する規定を追加する、使用料の特例に関する条例を新規制定する等が考えられます。

 公の施設の供用を再開した場合に、使用料を還付することが可能かについて、以下検討します。

 A市条例の例の場合は、施設の利用が可能である場合については、「利用者の責めに帰することができない理由により、施設を利用することができないとき」に該当するとは言い難くなりますが、今般の新型コロナウイルス感染症の特性に鑑み、当該自治体の状況によっては、利用者が感染拡大を防ぐために施設の利用を自粛せざるを得ないということであれば、上記の理由に該当すると判断することもあり得ます。そうであれば、現行条例の規定により使用料を還付することが可能といえます。

 また、B市の例のように、規則において「市長が必要と認めるとき」に使用料を還付することができるとしている場合や、C市条例の例のように、「教育委員会が特に必要と認めたとき」に使用料を還付することができるとしている場合は、市長又は教育委員会の判断により、使用料を還付することが可能です。

参考

地方自治法(昭和22年法律第67号)

(使用料)
第二百二十五条 普通地方公共団体は、第二百三十八条の四第七項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。

(分担金等に関する規制及び罰則)
第二百二十八条 分担金、使用料、加入金及び手数料に関する事項については、条例でこれを定めなければならない。この場合において、・・・。

2・3 略

(公の施設)
第二百四十四条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。

2・3 略

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