自治体の防災マネジメント

鍵屋 一

自治体の防災マネジメント[49]東日本大震災9年・福祉を訪ねる(下)──気仙沼市社会福祉協議会

NEW地方自治

2021.01.27

自治体の防災マネジメント―地域の魅力増進と防災力向上の両立をめざして
[49]東日本大震災9年・福祉を訪ねる(下)──気仙沼市社会福祉協議会

鍵屋 一(かぎや・はじめ)
月刊『ガバナンス』2020年4

 前号に続き、2019年12月末、復興庁の調査事業で福祉ヒアリングをしたので紹介したい。今回は、宮城県気仙沼市社会福祉協議会の熊谷直惠常務理事・事務局長、鈴木美紀地域福祉課長、藤村由喜ボランティアセンター所長である。

 なお、3人の発言は、私のメモから書き起こしているため、必ずしも正確ではない。また、〈〉内は私のコメントである。

災害直後の状況

 震災発生当日、津波は市社会福祉協議会本所のある建物の2階まで飲み込んだ。避難所にも指定されていて、デイサービスセンターも併設されていたことから、職員とデイサービス利用者、地域住民約200名が3階と屋上に避難し命を守った。その後、社協本所は内陸部の老人福祉センターに拠点を移した。本所にあったデータが流失してしまったので、立ち上げが大変だった。

〈いかに大きな津波だったか。ハザードマップ上では安全で、避難所にも指定されていた施設が2階まで津波に飲み込まれている。改めて、リスクアセスメントの効果と限界を実感させる。〉

災害ボランティアセンターの立ち上げと運営

 地域防災計画では災害ボランティアセンターは市と協議し連携のもと社協が立ち上げることになっていて毎年、訓練もしていたが、市が手一杯であり、社協としては実際の設置に戸惑っていた。

 このとき、公益社団法人シャンティ国際ボランティア会の白鳥孝太氏ら3名が協力を申し出てくれた。3月28日に、市民健康管理センターに災害ボランティアセンターを立ち上げた。本吉地域にも災害ボランティアセンターを設置した。多いときで1日700人のボランティアの方々が国内外から駆け付け、本格的な活動が続けられた。

 ところで多くの団体が支援を申し出てくれたが、社協職員は、どのNPO、ボランティア団体を信じていいのかわからない。白鳥氏ほどの著名な人でも、最初は大丈夫かなと思っていた。

〈災害ボランティアセンターの開設では運営ノウハウのあるNPOやボランティア団体が、行政や社協とつながっていないことが課題であった。そこで、内閣府は行政、NPO、社会福祉協議会等が三者連携体を構築し、平常時から連携を進めることを推奨している。〉

地域福祉への取り組み

 今思えば、災害直後は災害ボランティアセンターを立ち上げることしか頭の中になかった。本所職員も半分以上はボランティアセンターに従事した。その分、地区社協との連携が十分でなく、地域福祉が十分ではなかった。被災者支援のNPOなどから在宅支援が必要だったのにと言われたが、できなかった。

 5月頃、仮設住宅ができ始めてから、応援社協職員と地元社協職員が仮設住宅回りをした。9月から生活支援相談員、復興支援コーディネーターで仮設住宅を訪問する絆再生事業が始まった。生活支援相談員は、近畿や山形県内の社協職員から相談支援方法を教えていただいた。

 次に、応急仮設住宅入居者等サポートセンター運営業務を受託して、社会福祉士や看護師等の専門職を配置し、3人体制の3チームで巡回した。

 災害公営住宅や防災集団移転の整備が進むと、被災した高齢者等の生活再建や自立生活を支援するため生活援助員(以下、「LSA」という)事業も始まり、委託を受けている。

〈気仙沼市の髙橋義宏高齢介護課長は、上記のサポートセンター、絆再生、LSA事業などを「災害直後から立ち上げることが、被災者の避難生活を支えるには重要だ」と述懐している。一方、このような事業を、災害直後に自治体が考えて国と交渉するのは難しいし、実際に動き出すまでに時間もかかる。これまでの経験を生かして被災者支援事業のパッケージ化と標準化(業務量、業務内容)をしておくことが重要だとも述べている。
 全く同感だ。災害福祉を救助法に位置付け、避難生活支援メニューのパッケージ化、標準化を進めるべきである。〉

Q様々なボランティアニーズにどう応えたか?
A社協としては、例えばボランティアニーズで産業支援などの申し出があっても、どの範囲までボランティアを調整するのか悩ましい。社協ボラセンではやりきれないところも多いので、その部分をいろいろな団体が支えてくれた。

〈公としての社協には、経済支援、宗教施設支援などは直接には難しい。その部分を任意に活動できるボランティア団体が担ってきた。公費でないからこそできる支援は重要だ。〉

Q災害後の見守り、福祉支援活動はどうであったか?
A最初は仮設住宅などハードへの不満が多かったが、次第に個別の生活相談へと変わっていく。隣同士の関係性やコミュニティを意識して回ってくれた。みなし仮設(現・応急借上げ住宅)の人を地域の人にも理解してもらいながら、進めていった。3事業(サポートセンター、絆再生事業、LSA)が連携して進めている。関連死、孤立死は気仙沼では少ないと思う。地域に入って孤立している人にとってはLSAが継続して必要だ。平常時の地域包括ケアがうまくいっていると、災害時にも役立つ。現状では国も自治体も費用負担をちゃんとしていないのでうまくいかない。

〈平常時の自治体、地域の福祉力が、災害時にこそ大きくものをいう。特に、地域住民や福祉NPOが活発な地域では、家庭や施設にすぐに高齢者、障がい者を受け入れるなど目を見張るような支援活動がなされている。災害時の多くの福祉支援メニューは、見守り、介護、生活相談、就労支援など平常時の福祉支援とほとんど重なっているからだ。〉

Q仮設や復興住宅のコミュニティづくりは?
A災害後に様々な場所から集まった住民は、自治会を作るまではがんばれるが、その後は役員が大変になる。災害公営住宅自治会等への県の補助事業は3年で終わるので、その後が大変だ。コミュニティの活性化は最大の課題。公営住宅への入居者は、入る前から自己紹介の場が作られたのは良かったが、その後の活動は低調になりやすい。公営住宅と地域とのモデル事業で、勉強会、交流会などをやったことは効果があった。小規模公営住宅は地域と一体で自治会が多いし、そのほうが良い。

〈ずっと被災者支援活動を担ってきた社協職員が「コミュニティの活性化は最大の課題」と指摘するのは重い。コミュニティのような金銭では測れない社会的価値について、もっともっと目を向けるべきだ。〉

QLSAの効果については?
ALSAは実態として、高齢者だけでなく一般の住民も回っている。災害時だけでなく、一般制度にしたい。高齢者だけでなく障がい者も妊産婦も支え合いが望ましい。国が地域を応援するというなら、それなりの評価、経費をお願いしたい。効果が高いならば単なる見守りではなく、価値付与事業になる。

〈LSAは、地域包括支援センターの訪問相談に似ているが、障がい者も回っている。これが重要だ。国の縦割りでなく、地域でまさに障がい者も妊産婦も包括で支援できる制度に変えることによって、災害時にも同じ制度を拡充するだけで、すぐに対応できるはずだ。〉

Q災害時の社協活動はどうあるべきか?
A社協職員はマルチタスクとなってしまうが、使命感が強い。気仙沼社協では職員の犠牲はゼロ、家族で犠牲になった人も少ないのが良かったかもしれない。

 

Profile
跡見学園女子大学教授
鍵屋 一(かぎや・はじめ)
1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。避難所役割検討委員会(座長)、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事 なども務める。 著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』 (学陽書房、19年6月改訂)など。

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(かぎや・はじめ) 1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。避難所役割検討委員会(座長)、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事 なども務める。 著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』 (学陽書房、19年6月改訂)など。

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