公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書
【新刊】公務員に特化した『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)―パワハラ都市伝説④「罰則が無いので大げさに考える必要はない」は嘘
地方自治
2020.07.29
パワハラ都市伝説④「罰則が無いので大げさに考える必要はない」は嘘
(単行本公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書)
(株)ぎょうせいは令和2年7月、公務員に特化したパワーハラスメントの専門実務書『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)を刊行しました。パワーハラスメントの防止を企業に義務付けるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が令和2年6月、施行されたことを受けたものです。ここでは、『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』から内容の一部を抜粋してご紹介します。(編集部)
●法的な罰則はなくても懲戒処分はされる
いわゆるパワハラ防止法と俗称される労働施策総合推進法には、パワハラをした人に対する罰則規定はありません。罰則がないことから、この法律の有効性を疑問視する報道も多くあります。しかし、法律で罰則がなくても、組織内のルールで裁かれます。公務員の場合、自分の所属する組織のパワハラに関する部内規程の具体的な内容に若干の差があったとしても、パワハラをした場合には、信用失墜行為等の服務上の問題を起こしたことを事由として処分されます。
法律的、具体的に措置することが義務付けられているのは雇用主であって、個人にパワハラを禁止するような規定は確かに置かれていません。しかし、雇用主がパワハラを防止するために採るべき措置の中に、パワハラをした場合の処分に関する規定を整備することなどが求められています。法律に罰則規定がなくパワハラについて緩い規定しか存在しないからといって、大げさに考える必要はないと理解するのは間違いです。
●公務員は特に厳しい
人事院が定める「懲戒処分の指針」では、パワハラの代表的事例及びその事例に対する標準的な懲戒処分の種類が次のとおり掲げられています。
・パワハラを行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与えた職員
→停職、減給又は戒告
・パワハラを行ったことについて指導、注意等を受けたにもかかわらず、パワハラを繰り返した職員
→停職又は減給
・パワハラを行ったことにより、相手を強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患させた職員
→免職、停職又は減給
この例からもわかるとおり、公務員の場合は、特に厳しく処分されると理解しておくべきです。住民との関係で高い人権意識が求められる公務員は、たとえ職員同士であっても、人権侵害のような言動をしていることが明るみになると、住民から組織全体に対する信頼が損なわれ、円滑な行政の執行にも多大な影響を与えてしまいます。
決して内部だけの問題であると軽く考えないことが肝要です。
「住民の信頼なくして適切な行政執行なし」を自覚して、パワハラの防止に積極的に取り組みましょう。
Point
・法律に罰則規定がなくても、パワハラを軽く考えてはならない。
・パワハラをすれば、厳しい処分が待っている。
・公務員には、パワハラの防止が特に厳しく求められることを自覚しておこう。