災害時の流言が生み出されるメカニズムとは?その対策と留意点

NEW地方自治

2019.03.18

知っておきたい危機管理術 第26回 これは流言

『地方財務』2016年6月号

暗雲の立ち込める被災地

災害時には、必ずと言ってよいほど、流言が飛び交います。東日本大震災では、ガスタンク爆発事故後に、有害物質が雲などに付着し、黒い雨が降る、という根拠のない情報がSNS等を通じて拡散したことを記憶している方も多いでしょう。流言とは、証拠や根拠が不確かにもかかわらず、広範に拡散していくものです。政治的意図を持って意識的に相手を陥れるために流す情報や、真実でないことを知っていながら誰かが意図的に広げていくデマとは全く違います。しかし、一般には混同して使われることが多いようです。

そこで今回は、災害時に流言に惑わされない方法を考えてみましょう。

災害発生時のデマ発生のメカニズム

本当か、ウソか、どちらが正しいのか

災害時のデマはなぜ起きるでしょうか。これは、情報が欲しいのに正確な情報がない上に、人々の不安な心が重なるためです。こうしたメカニズムは、オルポート・ポストマンが示した「流言の拡散の公式(Rumor(流言・うわさ)=Importance(重要性)×Ambiguity(曖昧さ))」に、人々の不安な心を掛け合わせることで理解できます。そして、決して悪気のない「善意による拡散」が生じることで、流言はさらに広がっていきます。

善意による拡散とは、他人を愛したい、助けたいという愛他的な心理の結果として起こる行動で、災害時には特に現れやすいのです。

また、危機的状況(被災)に陥ると、愛他的行動に加え、「情報に対する欲求と伝達欲求の相乗」という心理効果も生じます。これは、不正確な情報でも、収集した以上は信じたい、そしてその情報を(善意で)人に伝えたい・教えてあげたい、人を助けたい(思い込みであっても)と考える心理です。

例えば、災害時ではありませんが、豊川信用金庫や佐賀銀行の風評被害事件は、悪意ではなく、知らない人に教えなくては、という善意で噂を一生懸命に広げた結果の事件だったといってもよいでしょう。

前者は、1973年に、愛知県豊川市で、女子高生が電車の中で交わした冗談「この金融機関は就職先として危ないよ(注‥強盗があると危ないという意味だった)」が口コミによって拡散し、倒産説が預金者の間に流布し、相当な金額が引き出される事態に陥ったものです。警察が信用毀損業務妨害として捜査した結果、雑談をきっかけとした自然発生的な流言が原因であったことが判明しました。

後者は、2003年に、翌日に佐賀銀行がつぶれる、という根拠のないメールがチェーンメールと化して、預金者の不安をあおり、結果として取り付け騒ぎを起こしたものです。発端となったメールを流した女性は、信用毀損容疑で書類送検されました。

流言は、不安の心理と認知的不協和の相乗が生じることで、さらに拡散していきます。つまり、「自分は不安でも良いんだ」と思うために、不安な情報を他人と共有することで「安心する」ことに加え、「人は見たいものを見る、信じたいものを信じる(認知的不協和の解消)」からです。

人間の心理傾向を踏まえつつ正確な情報を入手することの大切さ

信頼される自治体職員の姿勢

では、流言に惑わされないためにはどうすれば良いでしょうか。それは、「人間の心理傾向を普段からよく認識」した上で、「正確な情報をいち早く知る」ことに尽きるでしょう。そのためには、政府や自治体等が、マスメディアを活用して正しい情報を発信し続けることが大事です。というのも、流言がネットにより拡散しやすいのは、マスメディアと違って情報のチェック機能が働かないまま、個々人が次々に転送・リツイート・拡散させていくからです。また、企業は、流言に巻き込まれたら、自社のHPなどを通じて、「打ち消し情報」「ワクチン情報」を発信し続けることが重要です。

震災などの災害非常時の情報伝達で気をつけることは、個々の市民は、拡散する前にニュースソースと情報の真偽を確認することです。企業は、「ワクチン(中和)情報」の継続発信、そして、情報がなくても定期的に記者会見を行うなど、情報発信を継続することが肝要です。

行政の場合は、プッシュ型での情報発信に努めなければならないでしょう。情報の受信者(市民)側が情報の発信者(行政)側にアクセスして、欲しい情報を選択しながら入手する形、つまりHPからの情報入手に頼らせるようなプル型の情報発信ではなく、情報の発信者(行政)側から、受信者(市民)側にアクセスして、伝えなければならない情報をきちんと峻別して情報を入手してもらう形(防災行政無線による同報、携帯メールへのメール送信、個別訪問等)が必須ということです。

こうしたことに、市民・企業・行政ともに留意していかなければならないでしょう。

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