行政大事典
【最新行政大事典】用語集―印紙税
地方自治
2020.06.27
【最新行政大事典】用語集―印紙税
はじめに
『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第6章 国税・地方税」から、「印紙税」を抜粋して、ご紹介したいと思います。
印紙税とは
印紙税という名称は、広義では、印紙をもって納付するという納付方法を採っている租税をいい、わが国では、狭義の印紙税、すなわち、印紙税法の規定により課税文書に原則として印紙を貼付して納付するものを指称している。
印紙税は、契約文書や領収書など、経済取引に伴って作成される文書のうち、一般的にその作成行使の事実の背後に相当の経済的利益が存在し、これに軽度の補完的課税を行うに足ると認められる担税力があるものに対し、印紙税法により課される国税である。流通税の一種である。
印紙税の課税物件は、印紙税法別表第1の課税物件表に20に分類掲名されている文書(以下「課税文書」という。)である(印税2、別表第1)。
納税義務者は、課税文書の作成者である(印税3〔1〕)。ただし、約束手形又は為替手形で手形金額の記載のないものにつき手形金額の補充がされた場合には、その補充をした者が補充をした時に、約束手形又は為替手形を作成したものとみなされる(印税4〔1〕)。また、通帳等を1年以上継続して使用する場合には、1年を経過した日以後最初の付込みをした時に、新たに通帳等を作成したものとみなされる(印税4〔2〕)。
別表第1の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次のものは、非課税文書として、印紙税は課されない。
すなわち、〔1〕免税点が設けられており、一定の記載金額以下の文書は、非課税物件とされている(印税5I、別表第1)。
また、〔2〕国、地方公共団体又は一定の非課税法人が作成した文書(印税5II、別表第2)及び〔3〕日本銀行等が作成する国庫金又は地方公共団体の公金の取扱いに関する文書のように、特定の者が作成した特定の文書(印税5III、別表第3)についても、非課税物件とされている。
印紙税の課税標準及び税率は、別表第1の課税文書の区分に応じ、その課税標準及び税率の欄に定められている(印税7)。
これを大別すると、〔1〕不動産等の譲渡契約書、消費貸借契約書、請負契約書、手形、株券、売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書のように、記載金額に応じて課されるもの、〔2〕定款、預貯金証書のように文書1通ごとに、定額によって課されるもの、〔3〕預貯金通帳、金銭受取通帳、判取帳のように、1冊1年以内の付込みに対して、定額によって課されるものの、概ね3種類に区分される。
印紙税の課税物件、課税標準、税率及び非課税文書の概要を示すと、次のとおりとなる。
<印紙税の課税物件、課税標準、税率及び非課税文書の概要>
号別 | 課税物件 | 税率 | 免税点 | |
---|---|---|---|---|
1 |
(1)不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書 (2)地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書 (3)消費貸借に関する契約書 (4)運送に関する契約書(用船契約書を含む。) |
契約金額 10万円以下 〃 50万円以下 〃 100万円以下 〃 500万円以下 〃 1,000万円以下 〃 5,000万円以下 〃 1億円以下 〃 5億円以下 〃 10億円以下 〃 50億円以下 〃 50億円超 契約金額の記載のないもの |
200円 400円 1,000円 2,000円 1万円 2万円 6万円 10万円 20万円 40万円 60万円 200円 |
1万円未満 |
2 | 請負に関する契約書 |
契約金額 100万円以下 〃 200万円以下 〃 300万円以下 〃 500万円以下 〃 1,000万円以下 〃 5,000万円以下 〃 1億円以下 〃 5億円以下 〃 10億円以下 〃 50億円以下 〃 50億円超 契約金額の記載のないもの |
200円 400円 1,000円 2,000円 1万円 2万円 6万円 10万円 20万円 40万円 60万円 200円 |
1万円未満 |
3 | 約束手形又は為替手形 |
手形金額 100万円以下 〃 200万円以下 〃 300万円以下 〃 500万円以下 〃 1,000万円以下 〃 2,000万円以下 〃 3,000万円以下 〃 5,000万円以下 〃 1億円以下 〃 2億円以下 〃 3億円以下 〃 5億円以下 〃 10億円以下 〃 10億円超 一覧払手形等 コマーシャル・ペーパー |
200円 400円 600円 1,000円 2,000円 4,000円 6,000円 1万円 2万円 4万円 6万円 10万円 15万円 20万円 200円 |
10万円未満 |
4 | 株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、 特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券 |
券面相当金額 500万円以下 〃 1,000万円以下 〃 5,000万円以下 〃 1億円以下 1億円超 |
200円 1,000円 2,000円 1万円 2万円 |
|
5 | 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書 | 1通につき | 4万円 | |
6 | 定款 | |||
7 | 継続的取引の基本となる契約書 | 1通につき | 4,000円 | |
8 | 預貯金証書 | 1通につき | 200円 | 特定1万円未満 |
9 | 貨物引換証、倉庫証券又は船荷証券 | |||
10 | 保険証券 | |||
11 | 信用状 | |||
12 | 信託行為に関する契約書 | |||
13 | 債務の保証に関する契約書 | |||
14 | 金銭又は有価証券の寄託に関する契約書 | |||
15 | 債権譲渡又は債務引受けに関する契約書 | 1万円未満 | ||
16 | 配当金領収証又は配当金振込通知書 | 3,000円未満 | ||
17 | (1)売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書 |
受取金額 100万円以下 〃 200万円以下 〃 300万円以下 〃 500万円以下 〃 1,000万円以下 〃 2,000万円以下 〃 3,000万円以下 〃 5,000万円以下 〃 1億円以下 〃 2億円以下 〃 3億円以下 〃 5億円以下 〃 10億円以下 〃 10億円超 受取金額の記載のないもの |
200円 400円 600円 1,000円 2,000円 4,000円 6,000円 1万円 2万円 4万円 6万円 10万円 15万円 20万円 200円 |
3万円未満 |
(2)売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書 | 200円 | |||
18 | 預貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳、掛金通帳 | 1冊につき | 200円 | |
19 | 消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の 受取通帳などの通帳 | 1冊につき | 400円 | |
20 | 判取帳 | 1冊につき | 4,000円 | |
〔平成17年3月改訂〕 注:1号欄について 1に該当する「不動産の譲渡に関する契約書」のうち、平成26年4月1日から令和2年3月31日までの間に作成されるものについては、契約書に記載された契約金額に応じ、以下のとおり印紙税額が軽減されている。(注)契約金額の記載のないものの印紙税額は、本則どおり200円となる。 【平成26年4月1日~令和2年3月31日】 記載された契約金額が 1万円以上 50万円以下のもの 200円 50万円を超え 100万円以下 〃 500円 100万円を超え 500万円以下 〃1千円 500万円を超え1千万円以下 〃 5千円 1千万円を超え5千万円以下 〃 1万円 5千万円を超え 1億円以下 〃 3万円 1億円を超え 5億円以下 〃 6万円 5億円を超え 10億円以下 〃 16万円 10億円を超え 50億円以下 〃 32万円 50億円を超えるもの 48万円 注2:2号欄について 「請負に関する契約書」のうち、建設業法第2条第1項に規定する建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるもので、平成26年4月1日から令和2年3月31日までの間に作成されるものについては、契約書に記載された契約金額に応じ、以下のとおり印紙税額が軽減されている。(注)契約金額の記載のないものの印紙税額は、本則どおり200円となる。 【平成26年4月1日~令和2年3月31日】 記載された契約金額が 1万円以上 200万円以下のもの 200円 200万円を超え 300万円以下 〃 500円 300万円を超え 500万円以下 〃 1千円 500万円を超え1千万円以下 〃 5千円 1千万円を超え5千万円以下 〃 1万円 5千万円を超え 1億円以下 〃 3万円 1億円を超え 5億円以下 〃 6万円 5億円を超え 10億円以下 〃 16万円 10億円を超え 50億円以下 〃 32万円 50億円を超えるもの 48万円 (各表は令和元年6月現在である) |
印紙税の納付方法は、課税文書の作成者である納税義務者が、原則として、その課税文書に印紙税に相当する金額の収入印紙を貼り付け、これを消印することにより納税することとされている(印税8)。ただし、この印紙の貼り付けに代えて、税印の押なつによる納付(印税9)、印紙税納付計器による納付印の押なつによる納付(印税10)の各特例が認められているほか、様式又は形式が同一で、かつ、その作成の事実が後日においても明らかにされている毎月継続して作成されることとされている課税文書や預貯金通帳等については、所轄税務署長の承認を受け、印紙の貼り付けに代えて、金銭で印紙税を納付することができることとされている(印税11・12)。
課税文書の作成者が印紙を貼り付け納付すべき印紙税を納付しなかった場合には、納付しなかった印紙税の額とその2倍の金額との合計額に相当する過怠税が徴収される(印税20〔1〕)。ただし、印紙税を納付していない旨の申出があり、かつ、その申出が印紙税についての調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、過怠税の額は、納付しなかった印紙税額とその額に100分の10の割合を乗じて計算した金額との合計額に相当する金額とされている(印税20〔2〕)。
また、貼り付けた印紙を消さなかった場合には、消さなかった印紙の額面金額に相当する金額の過怠税が徴収される(印税20〔3〕)。
平成30年度の印紙収入決算額は1兆729億円である。
*『最新行政大事典』2018年11月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 髙木祥勝)
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