行政大事典

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【最新行政大事典】用語集―税理士

地方自治

2020.06.28

【最新行政大事典】用語集―税理士

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第6章 国税・地方税」から、「税理士」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

税理士とは

 

 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図ることを使命としている(税理士1)。この税務に関する専門家による税理士制度は、税理士が納税義務者を援助することを通じて、納税義務者が自己の負う納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の円滑かつ適正な運営に資することを期待して設けられたものである。

 このような税理士の業務の社会的、公共的性格に鑑み、税理士に対し法的保護を与えることとし、税理士業務を税理士のみの独占的業務とするとともに、これに伴う義務を課すこととしている。

 税理士の業務とは、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、関税、とん税、特別とん税及び狩猟税並びに法定外普通税及び法定外目的税を除く。)に関し、〔1〕税務代理、〔2〕税務書類の作成及び〔3〕税務相談の3つの事務(以下「税理士業務」という。)を行うことをいう。

 「税務代理」とは、税務官公署(税関官署を除き、国税不服審判所を含む。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行することをいう(税理士2〔1〕I)。

 「税務書類の作成」とは、税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書等を作成することをいう(税理士2〔1〕II)。

 「税務相談」とは、税務官公署に対する申告等、税務官公署に対してする主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応じることをいう(税理士2〔1〕III)。

 また、税理士は、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の代行その他財務に関する事務についても、業として行うことができる(税理士2〔2〕)。

 さらに、税理士の税務に関する専門家としての立場を尊重する見地から、税理士は、租税に関する事項について、裁判所の許可を要することなく、弁護士である訴訟代理人とともに補佐人として裁判所に出頭し、陳述をすることができる(税理士2の2〔1〕)。

 

 このような税理士の業務について、個人として自然人である税理士が行うほか、税理士が共同して税理士法人を設立し法人形態でも行うことができる(税理士48の2)。

 税理士となる資格を有する者は、税理士試験に合格した者、税理士試験の試験科目の全部について免除された者、弁護士又は公認会計士とされている。なお、税理士試験は、一定の受験資格のある者について、税法と会計学につき、筆記の方法により行うものであり、これには科目別合格制度が採用されている(税理士5~8)。

 このような税理士の資格を有する者が、税理士となるには、日本税理士会連合会に備えている税理士名簿に、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他の一定の事項の登録を受けなければならない(税理士18・19)。また、税理士法人については、設立登記を行った上、日本税理士会連合会に届出なければならず、他の税理士又は税理士法人の補助者として税理士業務に従事する税理士は、補助税理士として登録しなければならない。

 税理士業務は、このような税理士の登録等を受けた者に限って行うことが認められ、これ以外の者は、原則として、税理士業務を行うことができないことになっている。この原則に対し、弁護士又は弁護士法人は、税理士の登録を受けることなく、所属弁護士会を経て、国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる(通知弁護士・弁護士法人)こととされている。

 このほか、国税局長又は地方公共団体の長は、租税の申告時期において、又はその管轄区域内に災害があった場合、その他特別の必要がある場合においては、納税者の便宜を図るため、税理士以外の者に対し、その申請により、2月以内の期間を限り、かつ、租税を指定して、無報酬で申告書等の作成及び課税標準等に関する事項について相談に応ずること(臨時の税務書類の作成)を許可することができることとされている。

 税理士の権利としては、〔1〕税務調査の事前の通知、〔2〕税務職員が帳簿書類を調査する場合における意見の聴取の機会の付与などが受けられる旨規定されており、他方、税理士の義務としては、〔1〕税理士証票の提示、〔2〕署名押印の義務、〔3〕脱税相談等の禁止、〔4〕信用失墜行為の禁止、〔5〕秘密を守る義務、〔6〕会則を守る義務、〔7〕事務所設置の義務、〔8〕帳簿作成の義務、〔9〕使用人等に対する監督義務、〔10〕助言義務などがある(税理士32~41の3)。


 税理士の使命は重く、その業務の執行は、一般納税者に対しても、また、税務行政に対しても、重大な影響を与えるものである。したがって、税理士は、その使命にそって、納税者及び税務官庁の信頼に応えるものでなければならないところ、これを裏切り、法令等の規定に違反するような税理士に対しては、税理士の信用と品位を保つために、財務大臣は懲戒処分を行うことができることとされている。

 税理士に対する懲戒の種類としては、〔1〕戒告、〔2〕1年以内の税理士業務の停止、〔3〕税理士業務の禁止の3種類がある(税理士44)。なお、税理士の懲戒処分をしたときは、財務大臣は、その旨を官報で公告することとされている(税理士48)。

 税理士の組織団体としては、税理士法により設立が認められている税理士会及び日本税理士会連合会がある。税理士は、原則として、国税局の管轄区域ごとに一つの税理士会を設立しなければならない(税理士49〔1〕)。税理士会は、一つの税務署の管轄区域ごとに支部を設けなければならない(税理士49の3〔1〕)。また、税理士会は、毎年定期総会を開かなければならない(税理士49の8〔1〕)。

 現在、全国に15の税理士会があり、登録を受けた税理士は、登録時にその税理士の事務所を含む管轄地域に設立されている税理士会の会員となる。また、日本税理士会連合会は、全国の15の税理士会を会員として設立されている。税理士の登録をしている者は、平成31年3月末において、全国で78,028人となっている。うち東京税理士会23,023人、近畿税理士会14,835人、関東信越税理士会7,374と大宗を占めている。


*『最新行政大事典』2018年11月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 髙木祥勝)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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