【最新行政大事典】用語集―法人税の課税ベース拡大とは

地方自治

2020.11.01

【最新行政大事典】用語集―法人税の課税ベース拡大

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第6章 国税・地方税」から、「法人税の課税ベース拡大」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

法人税の課税ベース拡大とは

 「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2014」において、法人税改革の一環として、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標と整合を図るため、課税ベースの拡大等による恒久財源の確保を具体化することが決定された。

 これを受けて、2015年度税制改正において、以下の課税ベースの拡大等が決定された。

 なお、項目名の次のカッコ書きは、平年度ベースでの財源確保見込み額である。

 (1)欠損金繰越控除の見直し(4,000億円)

 中小法人等以外の法人(大法人)の控除限度を、現行の所得の80%から平成27年度までに65%、平成29年度までに50%に引き下げる。

 (2)受取配当金益金不算入の見直し(900億円)

 関係法人の持ち株比率が25%未満は不算入割合50%、25%以上は不算入割合100%である現行から、持ち株比率5%以下は不算入割合20%、5%超1/3以下は50%、1/3超は100%とし、不算入割合を引き下げた。

 (3)法人事業税の外形標準課税の拡大(6,600億円)

 所得課税部分と外形標準課税部分とからなる法人事業税の外形標準課税割合を、現行の1/4から、平成27年度に3/8に、平成28年度に1/2に拡大する。

 (4)租税特別措置の見直し(1,800億円)

 ・研究開発税制の見直し(控除限度額の総枠(法人税額の30%)を維持しつつ、特別試験研究費の控除限度額を別枠化(5%)し、限度超過額の繰越制度を廃止)

 ・生産等設備投資促進税制の廃止

 ・太陽光発電設備の即時償却の廃止 等

 財源確保の最大項目は、外形課税標準の適用拡大であるが、資本金が1億円超の大企業のみが対象である。

 いっぽう、資本金1億円以下の中小企業は、税法上の800万円以下の法人所得に対し、国の法人税率はすでに15%まで下げられており、この適用がさらに2年間延長となった。

 したがって、大企業は減税、中小企業は不変という状況で、法人税実効税率低下の代替として行う法人課税ベース拡大を、大企業、中小企業間に不公平感が生じないよう、行うことが課題となる。

 その後、2016年度税制改正において、以下のとおり、さらなる拡大が図られた。

 (1)については、平成28年度に60%、平成29年度に55%、平成30年度以降に50%と決定(これについては、「赤字繰越控除(欠損金繰越控除)」参照)。

 (3)については、平成28年度に5/8と決定。

 (4)については、

 ・生産性向上設備投資促進税制について、平成28年度に償却率や税控除を縮小、平成29年度に廃止と決定。

 ・環境関連投資促進税制における特別償却等の見直しにおいて、売電用太陽光発電設備を除外。

 ・雇用促進税制において、対象地域・対象雇用者の限定を図る。

 このほか、建物附属設備や構築物の減価償却法を定額法に一本化した。

 [関連項目]法人税実質減税、法人の実効税率、法人税の税率、外形標準課税、赤字繰越控除(欠損金繰越控除)

*『最新行政大事典』2019年10月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 久保田経三)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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