時事問題の税法学
時事問題の税法学 第47回 副業・兼業
地方自治
2020.02.17
時事問題の税法学 第47回
副業・兼業
(『税』2019年9月号)
企業側は消極的
政府は副業・兼業を推進するための環境整備を積極化させ、企業が副業を認める際にモデルとなる就業規則の普及に取り組むほか、労災保険の拡大など労務管理のルールも見直す、と報じられたが(日経新聞5月23日電子版)、企業側は消極的だと事情通から聞かされた。
テレビの情報番組に弁護士の肩書きも併記された大学教授が登場することがよくある。法学系や経営学系では、弁護士、公認会計士、税理士などを兼務する実務教員は増えているが、国公立大学はもちろん私立大学でも兼職を制限する大学は多い。17年間の専任教員時代も税理士を兼業していたが、大学の公開講座の受講者、同僚や学生の税務相談に応じるなら、厳密にいえば、税理士法に抵触する場合もあるから、当然の措置だった。
詐欺集団と闇営業
7月上旬、昇任試験対策問題集の無許可執筆で警察官21人が処分された。専門書は通販で、小説は電子図書という習慣になっているので、書店は待ち合わせの場所になってしまったが、大型書店の「刑法・刑事訴訟法」のコーナーにこの種の書籍を見た記憶がある。
高額な原稿料に驚いたが、これを強調すると日頃、世話になっている編集者諸氏に皮肉と受け止められるのでさておき、執筆者たちが、執筆の許可がおりないだろうと考えていたことを各紙が報じたことが気になった。警察組織の雰囲気は、ドラマや小説でしか知り得ないが、昇級試験の本質と対策は部外者には分からない閉鎖的な制度なのだろうか。今後は過去の問題と解答は、内部のネットワークで閲覧できるようになるという(読売新聞7月12日夕刊)。
この原稿料について、処分を受けた21名のなかには、「確定申告を怠っていた幹部らもいた」(朝日新聞7月13日)というから、まじめに申告納税をしていた人もいたことになる。これは興味深い。
この事件の中心人物は、当初、報酬の収受を否定していたため、厳しい処分を受けたことを窺える。同様に、発覚した際に、無報酬だったとウソの説明をしたことから大騒ぎに発展した「闇営業」という名の副業が露見したお笑い芸人の話題があった。吉本興業社長は、記者会見で、納税という問題に言及していた。詐欺集団の忘年会は、2014年12月というから、まだ申告に間に合う。
不祥事や違法行為の当事者が、違法所得であっても納税申告をしていることはほとんどない。申告納税していたら、罪一等を減じられることはないだろうが、心証は変わる。申告納税をすればバレると考えがちであるが、申告内容が国税当局から漏洩することはない。複数の給与所得を申告した場合には、合算所得から算出した住民税が、特別徴収を行う主たる勤務先に通知されるから、アルバイトの副業が表面化することはある。しかし、事業、不動産、雑所得などの所得に対する住民税は、普通徴収できることは、案外知られていない。
違法所得でも申告義務がある
かつて、パチンコ景品交換の利権について、市外から進出してきた反社会組織の人物が、パチンコ店主らを恐喝して受け取った喝取金の申告を怠ったとして、刑事責任を問われた事件がある。被告である納税者は、喝取金に申告義務を課すことは、憲法38条1項の「自己に不利益な供述強要禁止」に違反すると主張したが、裁判所は、確定申告書の記載事項は、犯罪発覚の端緒となるような所得の具体的な取得手段方法まで要求していない、と一蹴している(名古屋地判昭和49年9月29日)。
この事件は、週末を過ごす東海道の宿場で城下町であるふるさとの街でおきた事件である。判決文に登場する関係者のパチンコ店主、映画館主、香具師の親分など、いまでも顔を想い出す祖父や父の知人だった。確かに当時は、パチンコ店が多かった駅前付近だったが、いまでは若者たちで繰り出す繁華街に変わった。幼馴染みにも、判決文を読ませたら、彼女も登場人物を懐かしんだ。中学時代のこの街で何があったのか、親たちに聞いてみたいが、いまではもうそのすべはない。彼女も同じだ。