時事問題の税法学 第30回 課税と非課税

NEW地方自治

2019.08.22

時事問題の税法学 第30回

課税と非課税
『税』2018年4月号

上納金は誰のもの

 冬季五輪史上最多の13個のメダル獲得で閉幕した平昌大会に対する感激も収まってきた。選手団解団式後は、メダリストが受け取る報奨金に話題は移った。日本オリンピック委員会(JOC)がメダリストに贈る報奨金は金500万円、銀200万円、銅100万円である。この他にも、日本スケート連盟、全日本スキー連盟なども独自に報奨金を支払うという。日本カーリング協会には報奨金制度はないが、スポンサーの全国農業協同組合連合会(JA全農)が「メダル獲得なら米100俵」と決定し、銅メダルに輝いた選手には6トンの米が贈呈されると報道された。

 平昌五輪と同時期に開催された、東京マラソンで日本記録を更新した選手が、日本実業団陸上競技連合から1億円の褒賞が支給されたことから、金額の多寡も話題になった。こうなるとスポーツ選手に支給される高額な報奨金等への課税が気になる。

 いうまでもなくわが国の所得税は、包括所得概念が採用されている。すべての経済的利益にはもれなく課税対象となる。理論的には合法、違法という手段を選ばない。

 違法所得への課税となると、法定金利を超えた違法利息を得た金融業者に対する課税が争点となった事例(最高裁昭和46年1月9日判決)が著名であるが、やはり違法所得といえば反社会組織への課税が話題となる。税務調査などでは、中小企業のオヤジ達は、「暴力団の事務所には怖くて行けないだろう」と税務職員をからかうことがあるが、実態は摑めないのが実情だろう。ただ、現在、福岡地裁で審理が始まった暴力団工藤会の脱税に絡む裁判では、上納金が組織の所得か個人の所得かが争点となっている。昨年2月に日弁連(日本弁護士連合会)は、暴力団における上納金は組織代表者の所得とすべきという意見書を公表しているが、裁判の動向に目が離せない。

宝くじは非課税、カジノはどうなる

 包括所得概念の下では、非課税所得は限られるが、オリンピックの報奨金は全額非課税とされ、JOC加盟競技団体の支給分も最大300万円までは非課税となっている(所法9①十四・所令28)。このJOCのメダリストへの報奨金制度は、アルベールビル冬季五輪から導入されたが、その後のバルセロナ夏季五輪の水泳競技で金メダルを獲得した、当時中学生の岩崎恭子選手が報奨金課税で確定申告をすると報道されたことから(読売新聞平成5年1月20日)、一挙に非課税議論が高まった記憶がある。

 他にも所得税の非課税対象は、文化功労者の年金やノーベル賞など一般庶民の日常には縁のない収入があるが、唯一、関わりがあるとするならば、いわゆる宝くじの賞金がある。この非課税は、所得税法ではなく、当せん金付証票法第12条で規定されていることは余り知られていない。宝くじを公営ギャンブルのひとつといえば語弊があるかもしれないが、競馬、競輪、競艇などの収益は課税対象となっていることと比べると、公益性はともかく、この非課税措置は政策的要素も強い。確かに、宝くじにはまって、ギャンブル依存症になったという話も聞かない。もっとも、宝くじ当選券を、脱税マネーの洗浄のためにプレミア付きで売買されるという話は、都市伝説化しているが、いまでも語られることはある。

 カジノを解禁する統合型リゾート(IR)実施法案に関し、「日本人と日本在住の外国人」の客を対象にカジノへの入場料を1回当たり2千円徴収する方針が示された。安易な入場を防ぎ、一定のギャンブル依存症の防止を狙うという。カジノにおける収益は、現行では一時所得となるはずであるが、非課税特区にでもするのだろうか。

 「日本人と日本在住の外国人」とは、税法では居住者である。居住者と非居住者の判別は、マイナンバーカード等やパスポートで、身元確認はできる。当然、入場者のデータは政府に集積される。併せてカジノで使うチップの購入・換金時に身元確認をすれば所得の捕捉は万全となり、観光収入とともに税収もアップするだろう。もちろん儲かったときの話ではあるが。

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