AIで変わる自治体業務

稲継裕昭

第6回(最終回)「AI時代に自治体に求められる役割」

地方自治

2019.11.27

(『Gyosei Cafe』*2019年12月号 株式会社ぎょうせい システム事業部)

 前号まで、AI・RPAの自治体における活用が広まりつつあること、その具体例、その導入・普及後に求められる自治体職員像について見てきました。私たちが暮らす現代社会においてAIの普及は加速度的に進みつつあります。2019年はRPA元年とも言われています。最終回の本号では、このような新しい時代に自治体に求められる役割について考えてみましょう。

市役所・町役場などの存在意義とAIやRPAの利用

 そもそも、市役所や町役場は何のために存在するのでしょうか?あなたが何らかの形でかかわっている(取引のある・住んでいる・働く会社のある・公務員として勤務する)○○市役所の存在意義は何でしょうか?

 地方自治法にその答えがあります。同法第1条の2第1項は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」と規定しています。「住民福祉の増進」つまり、「住民サービスの向上」のために自治体は存在しているのです。では、その業務運営はどのように行われるべきものでしょうか。同法第2条第14項では、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と規定しています。「住民サービスの向上」に努めなければならないが、「最少の経費で最大の効果」つまり、できるだけ「効率的に」それを達成しなければならないと規定しているのです。

 AIやRPAの利用はそのための一手段に過ぎません。職員がPCを手作業で繰り返し操作してきたことをRPAに代替させることによって、より「効率的に」当該業務を行うことができるのであれば、それは「住民サービスの向上」に資するものとなります。この場合、人が作業するか、機械に作業させるかは、住民にとってはあまり関係のないことです。他方で前号でも述べたように、人間でなければできない仕事もあります。地方公務員の仕事はそのようなものへとシフトしていくことでしょう。

AI活用による社会課題の解決

 今後、自治体が抱えるさまざまな社会課題の解決にもAI活用が大きく寄与することが期待されています。

・犯罪の予防、行方不明者や指名手配犯の路上カメラを通じた確保、その他の治安維持
・道路、橋梁、トンネルの安全性チェック、下水道管、水道管の老朽化検査
・災害の発生予知、避難勧告・避難指示の早期発出、災害発生時の対応
・公共交通の自動運転、救急搬送ルートの選定、交通混雑・渋滞の緩和
・消滅集落に住む独居老人に対して、AIスピーカーを通じてケアをしたり、御用聞きをしたりするようなサービスの開始
・ベテラン職員の知識/ノウハウの体系化による維持と伝承
・その他、個々人の必要に応じたきめ細かいサービスの提供

これらは、ほんの一例にすぎません。今後、幅広い分野でAIが様々な形で活用されていくことになるでしょう。

 しかし、自治体の存在意義が「住民サービスの向上」であることは、今も、未来も変わりません。今後の自治体は、上に見てきたようなAIやRPAを活用しつつ「住民サービスの向上」をいかに図るかということが求められるでしょう。同時に、AIが苦手な人間的資質、発想力や創造性、対人関係能力を培った自治体職員が「住民サービスの向上」に努めることも求められています。

(*)「Gyosei Cafe」は法令出版社ぎょうせいのシステム事業部がお届けする、IT情報紙です!隔月で、自治体職員の皆様へお役立ち情報をお届けいたします。

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稲継裕昭

稲継裕昭

早稲田大学政治経済学術院教授

(いなつぐ・ひろあき)。大阪府生まれ。京都大学法学部卒、京都大学博士(法学)。大阪市職員、大阪市立大学教授等を経て2007年から早稲田大学政治経済学術院教授。著書に『自治体の人事システム改革』『プロ公務員を育てる人事戦略』『プロ公務員を育てる人事戦略Part2』『地域公務員になろう』『自治体行政の領域』『評価者のための自治体人事評価Q&A』(以上ぎょうせい)、『行政ビジネス』(東洋経済新報社)、『自治体ガバナンス』(放送大学教育振興会)等多数。

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