著者に訊く! 今村 寛著 『自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?』(ぎょうせい)

地方自治

2019.06.28

著者に訊く!
自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?
今村 寛
『ガバナンス』2019年1月号

出張財政出前講座+SIM2030の魅力に迫る

 対話型自治体経営シミュレーションゲーム「SIM2030」をご存知だろうか。熊本県庁有志職員の「くまもとSMILEネット」が開発したもので、人口減少や財政逼迫が進む仮想自治体を舞台に、部長役となったメンバーが、直面する地域課題に対応しながら2030年までのまちづくりをしていくものだ。自治体の仕事を楽しみながら学び、地域の将来を考える機会にもなることから人気を博し、全国に拡大。自主研グループから始まり、現在では職員研修や総合計画策定での活用、ご当地版の作成も行われている。

 この火付け役の一人が福岡市の今村寛さんだ。九州の自治体職員ネットワークを通じてSIMの存在を知った今村さんは15年9月、市のメンバーとともに福岡市版を開発。前年から行ってきた「出張財政出前講座」の中に組み込み、「出張財政出前講座withSIMふくおか2030」を全国各地で実施している。出張財政出前講座は、財政調整課長だった今村さんが、市職員向けに財政状況や財政政策などを説明する「財政出前講座」を他自治体で行うようになったもの。SIMとのパッケージ化で、座学と体験の両面から学ぶことができるようになった。今村さんの出張出前講座も全国に広がり、これまでに30都府県で100回近く開催されているという。

 本書はこの講座を書籍化したもの。出前講座の内容を文章化するとともに、ネタバレにならないようSIMは具体的な中身ではなく、ゲームに込めたねらいや意義などを語っている。今村さんは「これからは対話によって物事を動かしていくことが求められる。自治体職員にはぜひそこに気づいてほしい」と話す。

重要なのはまず発信すること

 今村さんが一番読んでほしいという第5章では、出前講座やSIMに今村さんがどう取り組んできたかを紹介。「『今村さんだからできる』といわれるが、私も最初からできたわけではない。出前講座も最初は受講者が寝てしまうようなものだった。それをどう変えてきたのかを記した。そもそも私が大きく変われたきっかけは、39歳で東京財団の研修に行ったこと。人はいつからでも、どんなふうにでも変わっていくことができるはず」。

 こう話す今村さんが大切にしているのは「フォロワー」の存在だ。講座参加者やSNSでつながっている人たちからの賛同や意見などを感じ取りながら、より良いものにしてきたという。「重要なのはまず発信すること。発信することで、自分が変わるきっかけをみんながくれるのだから発信しない手はない。出前講座やSIMの次の進化もそうした中から生まれてくると思うので、ぜひ本書を読んだ反応などもどんどん返してほしい」と今村さん。出前講座やSIMがこれからどう広がり、どんな進化が起きるのか楽しみだ。(M)

今村寛氏近景
今村 寛
いまむら・ひろし 福岡市経済観光文化局中小企業振興部長。1969年生まれ。神戸出身。1991年、京都大学卒業、福岡市入庁。産業廃棄物指導課、都市計画課、企画課等を経て、2012年4月より財政調整課長。2016年、経済観光文化局創業・立地推進部長、2017年から現職。福岡市職員を中心メンバーとするオフサイトミーティング「明日晴れるかな」を主宰するほか、「ビルド&スクラップ型財政の伝道師」として、「出張財政出前講座with SIMふくおか2030」を携え全国を飛び回る。

 

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