【特別企画】対談 親の“こころ”の安定が“こどもまんなか”社会実現の第一歩
地方自治
2024.09.05
(『月刊ガバナンス』2024年9月号)
【特別企画】
対談 親の“こころ”の安定が“こどもまんなか”社会実現の第一歩
社会保険労務士法人プラットワークス代表社員 芳賀 満さん
杏林大学客員教授・こども家庭庁参与・前東京都三鷹市長 清原 慶子さん
人口減少・少子化が進む中、こども・子育て政策に力を入れる自治体が増えている。そのような中、どのような視点や理念が求められているのだろうか。前三鷹市長でこども家庭庁参与の清原慶子さんと心理カウンセリングサービス事業を展開しているプラットワークス代表の芳賀満さんに、自身の活動や事業も交えて語り合ってもらった。
〝こどもまんなか〞がカギ
――経歴をお教えください。
清原 私は、大学の教員を経て2003年4月から東京都三鷹市長を4期16年務めました。就任当時の三鷹市は合計特殊出生率が極めて低かったことから、こどもや若者の参加によるまちづくりや妊産婦支援などのこども・子育て政策に力を入れました。その後、こども家庭庁の設立準備室から関わり、現在、参与として自治体と連携した〝こどもまんなか〞社会の実現を目指しています。
芳賀 私は、厚生労働省で労働基準監督官等を務める中で、働くことを通して幸せや充足感を得るために必要な条件は『働く人の健康と収入の確保、そして、安定した心の状態にある』と考えるに至りました。心への取り組みは行政の力では難しい面があったので民間に転じ、コンサルティング会社勤務を経て2018年にプラットワークスを設立しました。現在、社会保険労務士と公認心理師との共同で心理カウンセリングを行う我が国唯一のサービス「プラットトークス」をはじめ、組織人事コンサルティング、こどものキャリア教育支援などの事業を行っています。
――子育てを取り巻く環境についてどうお考えでしょうか。
清原 若い人たちの声を聴くと、子育て自体への不安があるのではないかと感じます。小学校からキャリア教育が行われているものの、職業教育が中心で結婚や出産を含めたライフデザインに関する教育はほとんど行われておらず、結婚や出産、子育ての幸せが共有されていません。芳賀さんは働く上で心の問題が大事だと話されましたが、こども政策においても精神的なウェルビーイングの実現が重要です。命を尊重する社会を〝こどもまんなか〞の発想で考えていけば、少子化のスピードを緩めることができるかもしれません。
親の〝こころ〞の安定を図る
芳賀 子育てに夢が持て、喜びを実感できるようにするには、安心して生み育てられる環境が大事です。しかし、近隣同士の関係性は希薄化し、こどもが直接関係するのは親が中心になっています。「子は親の鏡」と言われます。親が不安に育てると、こどもも不安になります。そこで親の心を支え、安心して子育てができる仕組みをつくりたいと思いました。
清原 親が悩んだときに受容する社会をつくる。そのための仕組みとして「プラットトークス」のサービスを考えたということでしょうか。
芳賀 はい。親の心を支えることは、同時にそのこどもが安心して主体性や創造性を伸ばしていける土壌をつくることにつながります。「親の〝こころ〞の安定が子どもの未来をひらく」をモットーに、子育て世代の親が早朝から深夜まで好きな時間に安心できる場所でカウンセリングを受けられる相談サービスを提供しています。スマートフォンを使ったオンライン相談ですが、公認心理師と臨床心理士の資格を持った心理カウンセラーが顔の見える関係でカウンセリングしますので、言葉にできない思いも表情や雰囲気から察して適切に支援するのが大きな特色です。
清原 妊婦さんや子育て世帯対象の相談を行っている自治体は多いと思いますが、対応する専門人材の確保に苦労しているのではないでしょうか。また、相談場所が地理的に遠いと通うことが大きなハードルになります。オンラインで距離や時間を気にせず質の高いカウンセリングを受けられるのは大きな魅力です。
芳賀 公認心理師は東京などに集中しており、地方では専門職のカウンセリングが受けにくい状況です。今のところ導入は企業が中心ですが、多くの自治体でご活用頂けるよう取り組んでいます。
こどもたちをパートナーに
清原 災害時など職員の心身に大きな負担がかかる際に利用できたらありがたいですね。職員が住民の命と健康を最優先に働いていることは、そうした災害時に強く感じますが、平時であっても安全・安心な市民生活は職員の地道な業務によって支えられています。それだけに、自治体職員には身体も心も健康でいてほしいと願っています。日々の業務に対し、住民から直接感謝の言葉をかけられることは少ないかもしれませんが、その点、こどもたちは素直に「ありがとう」と感謝してくれます。多世代交流を豊かに進める〝こどもまんなか〞の政策を進めましょう。こども目線によるこども計画をつくり、こどもたちの意見を聞くとともに、まちづくり自体にも参画してもらう。そうすると、こどもたちはまちづくりのパートナーになります。〝こどもたちをまちづくりのパートナーに〞が私のメッセージです。
芳賀 こどもたちをパートナーとして、まちづくりを共創するためには、大人を含む多世代と自由に伸び伸びと語り合えるゆとりある環境も大切です。少子化、核家族化の進展を受け、昨今の子育て環境はゆとりをなくしつつあります。〝こどもまんなか〞社会の実現に向けて、親の〝こころ〞の安定を図ることを通じ、「こどもたちが自由な発想を持って意見を言い合えるように、安心が保障された状態をつくっていきたい」これが私の事業にかける願いです。
社会保険労務士と公認心理師・臨床心理士が共創・運営する国内唯一の心理カウンセリングサービス
「Plattalks(プラットトークス)」は、プラットワークスが提供する心理カウンセリングサービスのプラットフォーム。自治体が導入すれば、市民など利用者はスマートフォンからPlattalks アプリで24 時間365 日予約可能で1回30 分、無料のオンラインカウンセリングが受けられる。公認心理師・臨床心理士が妊娠や出産、育児、子育ての悩み事などの相談に対応。また、社会保険労務士が職場復帰や就労での心の健康をサポートする。
導入自治体には、プラットワークスが利用状況を毎月報告。導入に当たっては、「伴走型相談支援及び出産子育て応援給付金の一体的実施事業」や「母子保健医療対策総合支援事業」、「地域少子化対策重点推進交付金」の補助金が活用できる。 「Plattalks(プラットトークス)」紹介ページ
https://www.plattalks.com/government/
自治体向けオンラインカウンセリングアプリ「Plattalks(プラットトークス)」紹介ページはこちら
企画提供
社会保険労務士法人プラットワークス
URL:https://sr.platworks.jp/
TEL:03-5251-9111