徴収の智慧 第6話 木を見て森を見ず

NEW地方自治

2019.06.28

徴収の智慧

第6話 木を見て森を見ず

『月刊 税』2014年12月号

 「木を見て森を見ず」とは、比較的よく聞く諺であると思う。その意味は、ものごとの細部に気を取られて大局を見失うことのたとえであるとされる。私たちの日常を振り返ってみると、このようなことは意外と多いような気がする。

滞納整理におけるマネジメント

 滞納整理におけるマネジメントには、大別して三つのものがあるといわれる。ひとつは、全体の進行管理であり、年間の事務スケジュールと各月における具体的な事務内容やその割り振りを、どのようにマネジメントしていくかということである。これは単にマネジャーとしての管理監督者だけが承知していればいいというものではなく、徴収職員一人ひとりが理解し、そして共有していなければならないものでもある。つまり、職場全体の目標なり、いつどのような事務をどのようにしてみんなで分担し、遂行していくのかということを、一人ひとりが自覚し、かつ共有されていなければ、職員はあたかも情報の「蛸壺状態」に置かれているかのようになってしまい、それこそ各自がそれぞれの考え、それぞれのペースで業務を進めてしまうリスクが生じてしまうのである。

 もうひとつは、個々の案件の進行管理である。これは、全体の進行管理とは異なり、滞納となっている個々の案件に関する整理の進捗状況をマネジメントすることである。とりわけ、処理困難案件や高額案件においては、この個々の案件の進行管理が重要である。ともすれば職員は、受け持ちの案件を、おしなべて均一の労力をもって画一的に処理しがちな傾向があるものである。処理困難案件にしても高額案件にしても、一般的にその処理に一定の時間を要するものが多く、しかも税収に与える影響が大きい場合が少なくないので、個別の進行管理は不可欠である。

 そして、最後は個々の職員の(業務の)進行管理である。処理のスピードや仕事の緻密さ、丁寧さなどといったものは、職員によってさまざまである。こうした現実に目を背けることなく、現実を事実として直視したうえで、いかに効率的で質の高い滞納整理を進めていくかについて考えてみれば、職場内研修(OJT)や個々の職員指導・育成を通じて、高い水準での職員の業務レベルの均質化・平準化が大切であることが分かる。

潜在能力と発揮能力

 以上見てきたとおり、効率的な滞納整理を推進し、税収の確保・収納率の向上・滞納額の圧縮という滞納整理の目的を達成するためには、管理監督者によるマネジメントが、いかに大切であるかに改めて気づかされるのである。

 滞納整理では、仕事のツールとしての税法を始めとした法的な知識はもとより不可欠であるが、そうした法的な知識が豊富であるにもかかわらず、成果の出せない徴収職員は少なくない。徴収職員に求められているのは、決して「潜在能力」なのではなく、「発揮能力」なのである。能ある鷹は爪を隠すなどと言われるが、とうとう最後まで、その持てる能力を発揮しないままに終わってしまったのでは、「宝の持ち腐れ」以外の何物でもない。

マネジメントの重要性

 滞納整理の実務において、一般に相続がらみの案件であるとか、連帯納税義務に関する案件などは、複雑に入り組んだ権利関係などを整理するのが煩わしく、処理困難案件となっている場合が多いものである。そうした中にあって、そのような案件の処理にばかりに目を奪われて、その案件が解決するまでは、その余の案件への関心と、処理に掛ける労力が手薄になってしまって、少しも前に進まないという状態になってしまうのである。つまり、目の前の処理困難案件が気になって、それにかかりっきりになり全体が見えなくなってしまうのである。当の担当者にしてみれば、目の前の処理困難案件の解決に全力を傾注しているわけであるから、一所懸命に仕事をしているつもりなのである。しかし、その職員には、先に紹介した、全体の進行管理というものは見えていない。ここに滞納整理における管理監督者によるマネジメントの重要性がある。職場全体を見回して、もしも、木を見て森を見ていない職員がいたら、これを指導し、職場全体で支えてあげられるような職場づくりをしていくことが、徴収担当課長の大きな役割であると思う。

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