徴収の智慧 第8話 原因は外に在らず、内に在り!?

NEW地方自治

2019.07.01

徴収の智慧

第8話 原因は外に在らず、内に在り!?

『月刊 税』2015年2月号

徴収職員に必要な知識や技量とその学習

 徴収職員の任務は、もちろん税収の確保であり、そして、収納率の向上と滞納額の圧縮である。そのためには、関連法規の学習や折衝技量の研鑽など「やるべきこと」は多い。そこで、滞納整理に必要なそうした知識や技量を身に付けるために研修が行われるわけだが、地方税の滞納整理研修の現状を見てみると、そのほとんどが財産調査の方法や滞納処分の方法とその根拠条文の逐条解説といった、いわば「知識偏重」ないしはハウツーものがほとんどなのである。

 私は、知識的なものについては、自学自習が原則であると思っている。今はとても懇切丁寧な逐条解説書が市販されているし、国税徴収法基本通達については、国税庁のホームページで公開されてもいる。更には、基本通達をより一層きめ細かく解説した注釈本まで出版されているのである。そうしたものを丁寧に読み込んでいけば、大抵のことは理解できるはずである。それゆえ単に逐条解説書をトレースする(なぞって読み上げる)かのような研修が行われているとしたら、何とももったいないと思うのである。

 それでなくても地方税務職員を対象とした研修は、時間も回数も限られているのである。ただ、そうは言っても法律の解釈には独特なものがないではないから、研修では、自学自習によっては理解が困難な、そうした法解釈上の一種独特なルールや原理・原則のようなものに特化して取り上げるべきではないだろうか。例えば、「準用する」と「例による」との違いなどは、初学者にとってはなかなか分かりづらいことのひとつではないかと思う。自学自習にはない研修のメリットは、講師自身の言葉(咀嚼して分かりやすい表現)で説明することができることと、実例を取り上げながら説明する臨場感があること、そして何よりも、受講者と講師との質疑応答によって、その場で疑問を解消することができることである。

組織としての滞納整理

 税務事務は、租税法律主義に基づいて行われるものであることを考えれば、関連する法規に関する知識は欠かすことができないし、徴収職員たるもの些かもおろそかにしてはならないものである。すなわち、不断の努力によって関連法規の学習に勤しむとともに、裁判例や行政実例などを渉猟し、最もふさわしい解決策を模索・追求する姿勢こそ徴収職員に求められる資質だと思うのである。

 ところで、冒頭で触れた徴収職員の任務というものを考えると、これだけでは十分でないと考える。すなわち、滞納整理は組織で行っているものであり、個々の徴収職員があたかも「一人親方」のように、個々の判断で行っているわけではない。組織であるから、組織としての目標があり、そして、その目標に向かって力を合わせて段階的・漸進的に近づけていくのが滞納整理なのである。

マネジメントの重要性

 そうだとすると、組織を動かすための指揮命令系統というものがあって、それを効率よく前進させるためのエンジンと、円滑に進めていくための潤滑油に相当するものが必要になってくる。前者は個々の徴収職員のマンパワーであり、前述の研修によってそのパワーアップを図っていく必要がある。ところが、従来の地方税の滞納整理研修では、後者に相当するものがほとんど行われて来なかったのではないか。

 地方税の滞納整理に携わる徴収職員からは、よく「徴収のノウハウがない」ということを耳にする。この言葉の意味するところは、本稿でいうところの前者の研修が不十分であるというように聞こえる。そうした部分がないわけではないと思うが、しかし、実は税収の確保、収納率の向上、滞納額の圧縮に直結し、そのために最も必要なのは、知識量なのではなく、組織としての力をどれだけ引き出し、活かしきることができるかにかかっているのである。つまりは、研修の機会が少ないとか、職員の数が少ないなどといったいわば外的な要素よりも、むしろ自分たちの仕事(滞納整理)をいかにマネジメントしていくか、そして、そのためにいかに自分たちの意識を変えていくかという内的な要素にこそ根本的な原因が潜んでいることに気付くべきだと思われてならない。

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