徴収の智慧 第9話 本丸に迫る差押え

NEW地方自治

2019.07.01

徴収の智慧

第9話 本丸に迫る差押え

『月刊 税』2015年3月号

効率的な滞納整理と職場慣行

 徴収職員として「効率的で効果的な滞納整理」に努めなければならないのは、もとより当然のことであって、改めて述べるまでもないだろう。しかしである。折衝中心の滞納整理などは最たるものであるが、これまで職場の中で連綿と引き継がれてきたこの種の実務慣行から抜け出せずに呻吟している地方団体も少なくないのではないか。厄介なのは、長年の慣行というものは、人の感覚をマヒさせる「魔力」があることである。すなわち、同じような処理、同じような取扱いが続くと、人は感覚がマヒしてしまい、そのような処理や取扱いに対して何の疑問も湧かず、あたかもそれが当然のことであるかのような錯覚に陥ってしまうのである。それも、そうした慣行が長く続けば続くほどその傾向は顕著である。

一回的な解決

 そもそも租税は、納税者による自主的な納税が制度本来の姿であり、それが最も省力的でもある。ところが、何らかの理由で納期限までに納税されずに滞納となれば、督促状や催告書により履行を請求することになるし、さらには財産調査をして滞納処分によって強制的に税収を確保するということになれば、自主的な納税に比べて、その何倍もの労力と費用とを要することは必定である。ことほどさように滞納処分というものは、労力と費用とを要するのであり、必然とも言うべく、(通信催告に比べれば)効率は落ちることにならざるを得ない。だからこそ、滞納整理では、まずもって督促状や催告書などの通信催告によって、真に滞納処分を必要とする対象案件を絞り込むことが必要になってくるのである。倒産案件や高額案件など一部の優先処理案件を除けば、滞納整理では概ねこうした段取りで整理が進捗していくことになる。

 ところで、税務行政全般に通底することであるが、滞納整理においても「公平であること」は貫かれなければならない(租税公平主義)。その意味では、とりわけ延滞金の徴収が重要である。すなわち、納期内に納税した者と納期限後に納税した者との負担が同じであるならば納期限の意義が没却されてしまうだけでなく、納期内に納税した「正直者(遵法者)」がばかを見ることになり、それこそ納期内に納税するという健全な「納税モラル」(=規範意識)の鈍麻ないしは崩壊を招くことにつながる。このように延滞金の徴収は、公平性を担保する重要なポイントではあるが、それはあくまでも納期内納税を促すための、そしてまた滞納者に一定のペナルティを課すことによって納期内納税者との衡平を保つための手段であるに過ぎず、延滞金を徴収すること自体は目的ではない。

 滞納整理の主たる目的はあくまでも税収の早期確保である。だとすれば、滞納整理においては、できるだけ早期に本税を確保すべく、早期着手・早期処分を心掛けるのが王道であり、延滞金の収入というのは、本税の確保に随伴するものに過ぎない。延滞金の負担は、本税の納付が遅れれば遅れるほど嵩むものであるから、滞納者の経済的な負担を考えても、本税の早期完納が望ましいわけである。以上要するに、税収の確保という徴税側の立場からも、そして、負担の軽減という滞納者側の立場からしても、いずれの立場に立つにせよ、早期決着(完納)が望ましいことは明白である。ここに滞納整理において「一回的な解決」が求められる理由がある。

本丸に迫る差押えを

 滞納整理を長引かせてしまう要因のひとつに、差押えはするものの、1回の差押えで滞納税を充足させるだけの価額の財産を差し押さえずに、わざわざいったん軽微な財産の差押えをして滞納者の出方(様子)を窺うといった、いわば最終的な解決の前にワンクッション置くかのような滞納整理が行われていないだろうか。確かに滞納整理は段階的・漸進的に進めるものではあるが、滞納処分によって徴収するという整理方針が立てられた以上は、こうした迂遠な方法は執るべきではなく、考えられる最も合理的で効率的な方法により整理を進めなくてはならない。すなわち、滞納額に見合う価額の財産の発見に努め、一回の差押えで滞納税の確保という本丸を目指すことこそが、徴収職員が目指すべき本来の滞納整理であると思う。

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