徴収の智慧 第18話 財産調査の意味

NEW地方自治

2019.08.01

徴収の智慧

第18話 財産調査の意味

『月刊 税』2015年12月号

最も身近な行政機関

 最近は、さまざまな分野の職業で活躍する人物に焦点を当てたドラマや、ワイドニュースの中で、仕事の内容そのものを紹介したりする臨場感のあるテレビ番組を、しばしば見受ける。前者の例としては、例えば、検察官が活躍する「ヒーロー」というドラマや、特別国税徴収官に焦点を当てた「トッカン」といったドラマが記憶に新しい。また後者の例としては、警察の取り締まりに密着した「警察24時」とか、地方税の滞納整理の模様を紹介する「税金Gメンの活躍」なる番組がある。それぞれの番組にはそれぞれの意図があるのだろうが、いずれにしても、これらの番組で取り上げられている職業は、芸能界のような華やかさがあるわけではなく、むしろどちらかといえば地味な職業といった印象のものが多い。中でも地方税の滞納整理の模様を紹介する「税金Gメンの活躍」などを見て、地方税でも国税のマルサや税務調査と似たようなことをしていることについて認識を新たにした人は、少なくないのではないか。その意味では、住民に最も身近な行政機関である市役所や県庁が財源確保のために一生懸命頑張っている姿をテレビで紹介してくれるのは、肯定的に捉えていいと思う。

滞納整理

 ところが、ここのところ何度かテレビで放映されたこの種の番組を見ていて、違和感ないしは疑問を感じたのは、恐らく私一人ではないように思う。と言うのも、ある日の番組では、同一の滞納者に対して13回目の捜索に入るところを紹介していたのである。なんと13回も!である。これはもう尋常ではない数字である。そもそも滞納整理で、徴税吏員が質問・検査や捜索をするのは、滞納処分をするために必要だと認めたから行うのである(国税徴収法141、142)。つまり、任意納税が期待できない滞納者について、職権で財産調査をして、納税できるのか、それとも納税できないのかを判断するための資料を収集するということである。したがって、財産調査の結果、資産・資力があれば、滞納処分をするし、資産・資力がないのであれば、滞納処分の執行停止をするのである。そうして整理を進めていくのが、滞納整理なのである。それなのに、テレビで紹介されていたGメンは、同一の滞納者に13回も捜索に入ったというのであるから、何回捜索しても、整理の方向を一向に判断しなかったということになるのである。整理の方向を判断しないのであれば、一体何のための捜索だったのだろうか。この先、差し押さえられる物が見つかるまで何回でも捜索を繰り返すとでもいうのであろうか。

財産調査

 思うに、こうした疑問符の付く実務が行われるのは、「何のために財産調査を行うのか」、その意味が理解されていないからだと思われてならない。つまり、徴税吏員が職権で財産調査をする目的が、収集した資料によって任意に納税しない滞納者の納付能力(納税することができるだけの資産・資力の有無)を判断するために行うということを正確に理解していないから、差し押さえられる物が見つかるまで何度でも繰り返すという珍妙な(?)実務が罷り通ってしまっているのだろう。こんなことを繰り返していたら、整理が足踏みしてしまって、一向に前に進まないから、効率的な滞納整理がいつまで経っても実現しないことになる。それだけではない。捜索というのは、直接強制の処分であるから、滞納者にとっては非常に厳しいものである。いつまでも処理の方向を判断しないで、それを何回も繰り返すのは、権利の濫用ですらあると思う。これはもう財産調査権本来の目的に沿った権限の行使ではないから、見ようによっては「嫌がらせ」とも映るのではないか。

 同番組を見ていて、もうひとつ奇異に思ったことがある。それは、捜索という強力な権限を行使してまでも差し押さえることのできる財産を発見すべく調査に入ったのに、その場で滞納者と「納税誓約」をしているのである。これは驚くべきことである。任意に納税することが期待できない滞納者だからこそ、捜索に入ったのに、そのような滞納者に任意納税(分納)を認めているのである。Gメンのみなさん、財産調査の意味について、改めてよく考えてみましょう!

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