知っておきたい危機管理術/酒井 明

酒井明

危機管理術 地震編2 壁と柱が安全

地方自治

2019.03.18

知っておきたい危機管理術 第2回 地震編2 壁と柱が安全

『地方財務』2012年6月号

前回に引き続き、地震のような場合、あなたはどう行動すべきかを考える。(『地方財務』2012年6月号)

多発する地震から家を守る!

—耐震・制震・免震とは?
震度7クラスの東京直下型地震の発生が危惧されている現在、家族の生命と財産を守るために、大地震でも安心な家づくりが欠かせない。近年の相次ぐ大地震によって、より耐震性の高い住宅を求める意識が高まっている。耐震・制震・免震対応の住宅の違いを見てみよう。「耐震」とは建物自体の強度を高めて、地震の揺れに耐えうる建物とすること、「制震」とは特殊な粘生体を取り込んだ壁を用いたり、弾力性のあるダンパーによって揺れを吸収することで建物の振動を制限する技術をいう。「免震」とは基礎部分と上部部分の間に免震装置を置いて、地震による震動を上部部分に伝わりにくくする技術である。一戸建ての場合、ボール状の転がり式か、板状の滑り式が利用されている。

左官仕事を行う人の様子

揺れの軽減には、「免震」が最も効果が大きく、震度7を震度4程度に軽減できるとされる。震度5強を超えると家具の転倒が始まるといわれるだけに、最大震度7でも安全性が確保できることになる。ただし、コストとして、300万から500万円かかるといわれる。
次に有効なのが「制震」技術であり、制震リフォームは100万円未満ですむといわれている。工事期間も短いことから比較的やりやすい。「耐震」は柱の数を増やしたり、ガラスの面を壁に変えたりするが、費用の面は住宅の構造にもよるので一概にはいえない。

まず、やってみよう、住宅のチェック!

新しい住宅が立ち並ぶ街並み

これから住宅を購入しようと考えているなら、コストは高いが免震住宅を選ぶこともできる。しかし、すでに長い間、一戸建て住宅に暮らしている人はそう簡単にはいかない。そこで、自分の住んでいる住宅がどのくらいの耐震性をもつのかを、まずチェックすることである。専門家や建築士に依頼すると数万円かかると思われる。東京都では「建築物の耐震診断マニュアル」を作り都庁や区役所においてあるので、無料で入手できる。県庁や市役所等の他の行政機関でも類似のマニュアルを多く出している。これを参考に、自分でとりあえずやってみることもいいのではないか。その上で不安が残るのであれば、行政機関から紹介された診断受付機関の窓口を通じてプロに依頼するという方法がある。誰が見ても危ないのは、3階建ての木造で、1階の入り口付近に壁がなく、車庫付の全開口型になっている住宅である。車庫をつぶして柱を補強し部屋に改造すべきである。

エレベーター利用中に大地震がきた!

日常的に利用しているエレベーター

揺れを感じたら、行く先階のすべてのボタンを押す。万一、閉じ込められたら、インターホンで通報する。現在、地震時管制運転装置が多く備えられている。地震の発生を感知器がとらえると、運行中のエレベーターを最寄り階に自動的に停止させて、戸を開き避難できるようになっている。地震の発生をP波(初動微動)の段階で感知するか、S波(主微動)を感知するかによって、P波感知器、S波感知器という。もちろん、P波感知器の方が早く対応できるので、こちらの方が優れている。

東京駅で大地震に襲われた!

1日の乗降客が40万人はいる東京駅。東日本大震災においても各ターミナル駅等で大混乱になったが、幸い大きなトラブルは起こらなかった。数万人がパニックを起こしたら大変なことになる。自分がホームにいたら、線路への転落を防ぐために中央で四つん這いになり震動が過ぎるのを待つ。柱に寄り添い、自販機から離れる。バック等を頭に載せ、看板、時刻掲示板の落下に備えるべきである。

大地震がきたとき、カラオケ、銭湯、雑居ビルでマージャンしてた!

麻雀に興じるあいだも地震のリスクはある

カラオケボックスは柱と壁が多用されているため、意外と安全である。ドアを開けて落下物に注意する。パニックにならないようにする。また、銭湯の建物は堅牢である。あわてて裸で飛び出さないで、まずは脱衣所で着替えて様子をうかがう。雑居ビルでマージャンをしていたときも、あわてず、ひとまず、マージャン卓の下に避難し、周囲の様子をうかがい安全な広場等へ移動する。

六本木ヒルズにいたとき、大地震に襲われた!

43階の超高層ビルを含む4つのレジデンス棟で構成された「六本木ヒルズ」は、免震構造の設計がなされているため、震度7クラスの地震エネルギーを震度4程度に吸収して揺れを減殺してくれる。六本木ヒルズの建築物は震度7でも安全なので、建物内に留まっているのがよい。

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特集:平成23年度 公金支出に関する判例

月刊 地方財務2012年6月号

2012/06 発売

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東京福祉大学特任教授

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