自治体最新情報にアクセス DATABANK
自治体最新情報にアクセス|DATABANK2022 月刊「ガバナンス」2022年7月号
地方自治
2022.07.29
目次
自治体最新情報にアクセス DATABANK
(月刊「ガバナンス」2022年7月号)
●空き家や別荘など非居住住宅への新税導入を進める
京都市(140万700人)は、22年3月に「京都市非居住住宅利活用促進税条例」を制定し、非居住住宅(空き家や別荘、セカンドハウスなどの居住者のいない住宅)所有者に課税する準備を開始した。非居住住宅の存在は、市内居住希望者への住宅供給を妨げ、防災・防犯・生活環境上の問題や地域コミュニティの活力低下を生じさせる原因の一つになっている。そのため、非居住住宅所有者に「非居住住宅利活用促進税」を課することで、非居住住宅の有効活用を促すとともに、その税収入で空き家等の活用を支援する施策を講じて、住宅供給の促進や安心・安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化などを図るのが目的。別荘だけでなく空き家も含めた非居住住宅所有者への課税は、全国初とみられる。
課税対象は市街化区域内の非居住住宅で、居住・非居住は住民票の有無にかかわらず調査等による居住実態の有無で判断。事業用住宅や固定資産税非課税・課税免除住宅、景観重要建造物等は課税を免除する。課税標準は、①家屋価値割(非居住住宅の家屋の固定資産評価額)、②立地床面積割(非居住住宅の敷地の1㎡当たり固定資産評価額×当該非居住住宅の延床面積)で、税率は、①は0.7%、②は家屋の固定資産評価額が700万円未満で0.15%、700万円以上900万円未満で0.3%、900万円以上で0.6%に設定し①と②の合算で課税。家屋価値割の課税標準が20万円(条例施行後当初5年間は100万円)に満たない非居住住宅は免税する。
新税は法定外普通税で、5月末現在で導入に向けた総務大臣との協議を行っており、同意が得られ次第、制度の周知やシステム構築を進め、26年以降から課税を開始する予定。市では平年度ベースで課税件数を約1万5000件、税収は約9億5000万円と見積もっている。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●複合型サービスロボット活用の実証実験を実施
熊本県宇城市(5万8400人)は、22年4月にリニューアルオープンした不知火美術館・図書館において、清掃・警備・案内の役割を同時に併せ持つ複合型サービスロボットを活用する実証実験を実施した。市は20年にオムロンソーシアルソリューションズと包括連携協定を締結し、相互に連携して新たな技術で地域課題を解決する取組みを進めている。その一環として実施したもので、市民にITを活用して効率化されたサービスを体感してもらい、未来技術への興味を高めてもらうのがねらい。
実証実験は、複合型サービスロボット1台を配置して4月12日〜28日に実施。その結果、ロボットの清掃機能は、人の清掃作業の補助になるものの、テーブル下や壁際の清掃は人作業として残ったため十分力を発揮できなかった。一方で、警備機能が安心・安全な施設運営の補助と窃盗犯など不審者の行動抑止に繋がることや、現場スタッフの手を煩わせずに自立して稼働し、また施設の来館者や施設に損害を与える恐れがないことなどの安全性を実証。ロボットのサイネージによる告知・広告効果も一定程度認められた。市は今後も連携協定に基づき、新たな技術導入の可能性を探っていく。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●県境を越える3市1町の共同運営で電子図書館を開館
福岡県大牟田市(11万1200人)は、同県柳川市(6万5000人)、みやま市(3万6600人)、熊本県長洲町(1万5900人)と共同運営で「ありあけ圏域電子図書館」を開設した。いつでもどこでも電子書籍を借りて読むことができるサービスで、インターネットに接続したPC・スマートフォン・タブレット端末などで24時間利用可能。複数の自治体が県境を越えて電子図書館を共同運営するのは全国初とみられる。
利用できるのは、3市1町の在住・通勤・通学者。端末から電子図書館のサイトにアクセスの上、利用者IDとパスワードを入力してログインし、「借りる」ボタンを押すと貸し出されて読むことができる。返却は「返す」ボタンで行うが、貸出期限を過ぎると自動的に返却される。電子書籍のダウンロード・保存・印刷はできない。所蔵数は約8500タイトル、貸出点数は3点まで、貸出期間は15日間(延長も可能)で、予約もできる。
また、同市では、有明圏域定住自立圏協定に基づき、同圏域(福岡県柳川市・みやま市、熊本県荒尾市・長洲町・南関町)の図書館の本(電子書籍除く)が借りられる「図書サービス相互利用」を行い、図書サービスの充実も図っている。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●自殺リスクの社会・経済的要因を調査・分析
山梨県(82万1100人)は、「自殺リスクの低い社会の実現に向けた社会・経済的要因の調査・分析」を行った。県の自殺死亡率は年度によって変動はあるものの全国で中位から上位で推移していることから、自殺リスク要因を明らかにし、自殺リスクを下げる施策の強化など、今後の自殺対策検討の基礎資料とするのがねらい。調査は、①定量調査(政府統計の各指標と自殺の相関の分析)、②定性調査(県内自殺対策関係機関等へのアンケート)、③個別調査(自損行為者のカルテからの背景の調査)で行った。
その結果、①では婚姻率や貯蓄が低いほど自殺リスクが高くなること、②では人口が少なくて移動も少なく価値観が多様になりづらいことや雇用環境が厳しいことなどが自殺の促進要因となり、一方、無尽(特定メンバーによる食事会・飲み会)等の地域のつながりが自殺の抑制要因となっていることなどが分かった。③では自損行為者の約8%に新型コロナウイルス感染症の影響がみられ、自損行為の要因として、精神疾患に加え、家庭問題(しつけ・叱責、関係不和等)が多いことや病気の悩み以外では被虐待が最も多いことなどが分かった。県は調査結果を踏まえ、自殺対策を推進していく。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●自治体WEBサイトにアップロードされたPDFを自動収集するシステムを地元企業と開発
静岡県(368万6300人)立中央図書館は、県内の自治体WEBサイトにアップロードされたPDFを自動収集するクローリングシステムを同県三島市のGeolocation Technology社と共同開発した。21年度から県立中央図書館が行っている「図書館DX実証実験」の一環で、マンパワーをかけて収集していたPDFの自動収集が可能になった。公共図書館におけるクローリングシステムの開発は、全国初の取組みという。
昨今自治体資料は、各自治体のWEBサイトの掲載のみで、紙を発行しない例も多くなり、WEBサイトのみの資料は納本の対象外だった。県中央図書館では、人力で収集していたが、収集漏れや職員の負担の削減と効率化を図り、図書館のDX化推進のため同システムを開発した。
クローリング対象は、県内の自治体WEBサイトのドメイン内に格納されたPDFで、Googleドライブで収集した日付ごと、収集元ドメインと同じディレクトリ構造で保存される。また世代管理も行い、収集したPDFをリネームし管理する。これまで収集できたPDFの数は45万5133件。県は、今後収集したPDFを活かしたサービスの可能性を検証していくという。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●社会科学と工学の融合的視点に立ち地域力創発に向けた産学連携研究を開始
東京大学社会科学研究所(以下、社研)、東京大学生産技術研究所(以下、生研)、(株)関電工、東芝エネルギーシステムズ(株)、アストモスエネルギー(株)、(株)日建設計総合研究所は、5月30日に生研にて記者会見を行い、「地域力創発デザイン」をテーマに産学連携の共同研究を開始すると発表した。研究にあたっては、社研と上記企業4社が社会連携研究部門の設置についての契約を締結し、生研と同4社が共同研究契約を締結した。
研究では、地域の安全性(レジリエンス)、環境貢献(カーボンニュートラル)、持続性(サステナビリティ)を主軸とした空間・機能・社会システムの再デザインを目的とし、社研と生研が連携して社会科学と工学が融合したアプローチで地域の未来を拓くことを目指す。▷関電工の地域マイクログリッド技術と再生可能エネルギー技術▷東芝エネルギーシステムズのエネルギーマネジメント技術とデジタル技術▷アストモスエネルギーの分散型エネルギー源としてのカーボンニュートラルLPガスと地域密着型の供給網▷日建設計総合研究所の地域づくりの幅広い経験──を基盤に、▷社研の法学、経済学の知見を重ねること▷生研の地域連携の経験と地域づくりのプランニング技術──によって、文理が融合する実効性の高い研究を展開する。自治体や省庁と連携した活動も予定している。
具体的な研究項目は以下のとおり。
①大規模災害に備えた「災害時自立生活圏」の具体化(レジリエンス)
②分散型のエネルギー供給のあり方の確立(カーボンニュートラル)
③地域社会を対象とした「総合化の計画技術」の確立(サステナビリティ)
④地域類型別の未来像の提示
⑤社会的な議論の場づくりと議論の深化
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)
●WEBアプリで漁獲情報を迅速収集しデジタルデータ化
滋賀県(141万8900人)は4月から、県の漁獲報告システム「湖レコ」の本格運用を開始した。「湖レコ」は、県内の琵琶湖の漁業者がスマホなどを使って漁獲量や操業場所といった情報を、簡単にかつ迅速に報告できるウェブアプリ。
琵琶湖の水産資源を未来にわたって持続的に利用するためには、どの種類の魚が、どこで、どんな方法で、どれだけ獲れているか、といった漁獲情報の把握が欠かせない。そこで県では全国に先駆け、漁業許可等を所有する全ての漁業者がスマホ等で漁獲情報を報告できるシステムとして湖レコを開発。これにより、琵琶湖からスマート水産業を推進していくとしている。
漁獲情報の報告は、現在紙媒体で行われているが、漁業者にとって大きな負担となっているだけでなく、集計や報告内容のデータ化にも時間を要している。このため漁業者の負担の軽減を図りつつ、漁獲報告の履行と資源評価に必要なデータ収集を一元的に可能とするシステムが必要とされていたことから、湖レコが考案された。利用対象は約1500の漁業許可等で、対象漁業者数は約520人になる。県は、精度の高い資源評価が迅速に可能になると期待している。
(月刊「ガバナンス」2022年7月号・DATA BANK2022より抜粋)