月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年8月号 特集:自治体職員のモラルとモチベーション

地方自治

2022.08.01

●特集:自治体職員のモラルとモチベーション

長引くコロナ禍において自治体職員や公選職のモラルが問われる不祥事が頻発している。その背景に厳しい定数管理による職員削減があるかもしれないが、世間の公務職場を見る目は厳しくなる一方だ。業務過多の状況下、いかに自治体職員のモラルとモチベーションを維持・向上させていくのか考えたい。

■公選職に求められるモラルとその向上策/新川達郎

公選職のモラルの向上問題は、モラルの内発性の観点からの改善と、公選職の社会規範への応答可能性を高めて外在的なモラルへの敏感さを確保することにありそうである。政治倫理やモラルの学習機会の提供と、その学習の義務付けが定期的に確保されることにより、学ばない公選職は存在しない社会を展望することが可能となる。

 

■自治体職場のモラルと政策法務/山口道昭

自治体職員を取り巻く法環境と、それを形成する国政の動きは、自治体職員にとって厳しいものがある。しかし、それに甘んじ守備に入っては、モラルを保つことは困難である。自治体は、住民に身近な存在であり、自分たちこそが住民の暮らしを守るという矜恃を持って、政策立案と執行に励んでもらいたい。「攻撃は最大の防御」なのである。

■コロナ感染症対策──苦悩する自治体と健康危機管理/中邨 章

感染症の対応には、高度な医学や薬学の知識と経験が不可欠である。ところが、自治体職員はそうした試験や訓練を受け公務員になったのではない。今後、一般行政職員にも医学や薬学に関する基礎研修を実施することが望まれる。それが健康危機管理を自治体の重要命題に成長させる第一歩になる。

■コロナ禍における職員と市民の関係構築/大杉 覚

自治体の基本が「住民の福祉の増進」にあることは不動だとしても、「新しい日常」のもとでの職員と市民との関係は再考が促されているといってよい。この点を自治体ガバナンスの文脈で捉えるならば、「信託と統制」の論理と「新しい公共」の論理の再定式化だといえる。

■小規模自治体の「小規模性」と職員のモチベーション/嶋田暁文

「小規模性」には確かに職員のモチベーション低下につながりうる面がある。しかし、同時にモチベーション向上につながりうる面もある。「小規模性」のマイナス効果のみに目を奪われるのではなく、プラス効果の発揮のための条件充足など、「小規模自治体の秘めたる可能性」を具現化していくことを前向きに考えていくべきである。

■モラル・モチベーションと職員の幸福度/広井良典

「そもそも(地方)公務員の仕事は何のためにあるのか」をあらためて問いなおす時、それが人々の「幸福の基礎条件」ないし「幸福の土台」を作る仕事だと考えれば、その新たな現代的意味が浮かび上がってくるのではないだろうか。公務員の仕事のもつ価値を、「公共政策としての幸福」とつなげて考えていくことがいま重要になっているのである。

■コロナ禍のハラスメント防止とモチベーション/金子雅臣

モチベーションが高いことは、ホウレンソウをするための土台でもあり、表裏一体の関係にある。部下のモチベーションは、仕事への動機づけのできる情報提供を中心とする上司の対応に関わっている。コロナ下のコミュニケーションの難しい時代はそのことがより問われている時代であると言えるだろう。

■コロナ禍における市民・NPOのモラルと自治体/奥津茂樹

長引くコロナ禍の中で自治体でもカスハラが生じている。こうした現状・課題認識が今回の原稿依頼の趣旨だった。情報公開条例に基づく市民の権利行使において、自治体職員がカスハラと受け止めるような言動が時折あると思われる。自分自身の過去を振り返ると、職員の応対の「理不尽」に反発し、強い叱責をした記憶が何度かある。当時はカスハラなどという言葉はなかったが、今ならばカスハラになるかもしれない。聖人君子ではない自分が、カスハラも含めたモラルを論じる資格があるのだろうか。そう自問しつつも、だからこそ、自身の過去の失敗からの学びと職員に対する要望を合わせて論じなければならないと考えた。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
若手職員の力を伸ばす、活かす

近年、自治体では団塊世代との入れ替わりで若手職員の割合が高まっています。
その力を伸ばし、どう活かしていくか自治体の組織力そのものにつながる大きな課題。
特に今年入庁した職員の多くは、学生生活の半分をコロナ禍の中で過ごし、人との接触機会が大きく制限されてきた世代であるとともに、オンラインが当たり前になったデジタルネイティブ世代でもあります。
これまでとは違う環境で育ってきた若手職員の力をどう伸ばし、さらにその力を活かしていけばいいのか、今月は考えます。

■コロナ禍後の若手職員育成をどう考えるか/勝浦信幸

人材育成基本方針では、求められる公務員像や求められる能力の側面からどのような研修が効果的か検討されているものが多い。しかしながら、効果的な人材育成のためには、受け手側(近年の若者)の特徴を踏まえた内容・手法の研修の検討を忘れてはならない。従来型の自学、Off-JT、OJTだけでは不十分なことは明らかだ。職員の能力は結局住民に返ってくる。「登庁が不安(恐怖)でしかない」という若者が安心して成長していくために、思い切った人材育成基本方針の見直しを期待したい。

■若手職員の長所を伸ばす/齋藤綾治

将来を担う若手職員が意欲を保ち、力を伸ばしていけるよう、大切に育てていく必要がある。そして育てる際には、若手職員の長所を伸ばすことを忘れずにいてほしい。周囲が長所を認め、長所の発揮に期待をかける。この繰り返しが本人に自信を持たせ、仕事に対する意欲を向上させるのである。そして、長所が承認され、自覚が起こり、長所の発揮を本人が工夫しはじめると、それは必ず大きな成果に結びつく。

〈取材リポート〉
◆「地域へ飛び込む職員PJ」で若手職員が地域の魅力を取材
──滋賀県長浜市

平成の大合併により、湖北地方の大部分に市域を拡大した滋賀県長浜市。職員の一体感を高め実務能力の底上げを図るため、2010年の第2次合併当初から、若手職員がチームを組んで政策形成や接遇向上などに取り組むプロジェクトを実施してきた。20年度は、「地域へ飛び込む職員プロジェクト」と銘打ち、各地域で活躍している市民を取材してそれを冊子にまとめた。これからの職員には、積極的に地域の現場に入り込んで市民協働により課題を解決していくという視点が求められる。その大きな第一歩となったようだ。

●連載

■管理職って面白い! みかんていいな(DESC法)/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
人材の流動化に関する人事施策の新たな動き/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/岡部真矢 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人 ■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫 ■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介 ■次世代職員から見た自治の世界/吉村彼武人 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/藤原好伸・大脇章広 ■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/大石貴司(関東学院大学地域創生実践研究所) ■にっぽんの田舎を元気に!「食」と「人」で支える地域づくり/寺本英仁

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
横尾俊彦・佐賀県多久市長
「未来創造実証都市」をめざした行政経営を

2021年9月に現職市長として最多の7選を果たした佐賀県多久市の横尾俊彦市長。「初心忘れず、どんどん挑む」「市民に役立つ市役所」を基本に、市民に寄り添い、そして「未来創造実証都市」をめざした行政経営を進めている。

横尾俊彦・佐賀県多久市長(66)。多久聖廟内の孔子像の前にて。「初心忘れず」「市民に役立つ市役所」「市民に寄り添い」など横尾市長が基本にしていることは多分に孔子の教えが反映されているようだ。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
伊達政宗(三) 東京を復旧でなく創造しよう

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
何を「復興」させるのか──福島県大熊町、6割が「住む」土地の避難指示解除
[原発事故、続く模索]

東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町で6月30日、町民の6割が住民票を持つ土地の避難指示が解除された。旧町役場や唯一の鉄道駅がある中心部が含まれていて、産業拠点や住宅整備の計画が次々と進む。だが、避難から11年という年月が経ち、どれだけの町民が戻れるのか。故郷への思いを抱きながらも、実際には帰れない人が多い。そうした「現実」の中で、町は何を復興しようとしているのか。

□現場発!自治体の「政策開発」
市民本位の総合計画を策定し絵本などで全世代に周知
──ターゲット層を意識した「美濃加茂市第6次総合計画」(岐阜県美濃加茂市)

岐阜県美濃加茂市は、従来の総合計画のあり方を全面的に見直し、小冊子の計画書に凝縮した「美濃加茂市第6次総合計画」を策定した。市民への周知では、総合計画を童話で紹介した乳幼児読み聞かせ用の絵本を作成。市内外への発信では、総合計画の紹介動画を制作してユーチューブなどで配信している。あらゆる世代に美濃加茂市の10年間の進むべき方向性を知ってもらい、ともにまちづくりを進めていくのがねらいだ。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
次期統一選に向け、「ローカル・マニフェストで地域から日本を変える」──マニフェスト大賞2022キックオフ研修会

ローカル・マニフェスト推進連盟とマニフェスト大賞実行委員会は7月14日、「ローカル・マニフェストで地域から日本を変える」をテーマにマニフェスト大賞2022キックオフ研修会を開催した。前年の同賞受賞者などが実践発表。来春の次期統一選に向け、会派マニフェストのあり方などが注目された。

●Governance Focus

□人口増加の陰で進む若者流出
──長野県原村。空き家、耕作地継承……、潜在危機をどうする/葉上太郎

八ヶ岳連峰の麓に位置する長野県原村は、役場の標高が1000mという高原にある。中央自動車道を使えば、東京から約2時間半という〝近さ〞もあって、別荘地への移住が相次ぎ、人口は増加中だ。ところが、村生まれの若者は流出して帰村せず、このままでは村の維持が難しくなりかねないという。総合戦略でも若手世代のUターンを重要施策として挙げた。人口増加の村でなぜ、そのようなことが課題になっているのか。

●Governance Topics

□「これからの自治体人事行政」をテーマにシンポジウムを開催──地方行政実務学会第2回春季大会

自治体職員経験のある研究者と現役自治体職員による「地方行政実務学会」(理事長/稲継裕昭・早稲田大学教授)は7月2日、第2回春季大会を開催した。今回も昨年末の全国大会と同様に、リアルとオンラインのハイブリッドで実施。「21世紀の人事戦略」を大会テーマに設定し、これからの自治体人事のあり方などについて議論した。

□〝高校魅力化〟は地域に何をもたらすか──高校魅力化プロジェクト・セミナー

島根県海士町の隠岐島前高校での取り組みで注目を集め、全国に広がる「高校魅力化プロジェクト」。5月31日、その成果や取り組みのポイントなどを紹介する自治体向けのオンラインセミナーが開催された。コロナ禍により、地方創生の再構築が模索される中で、改めてその可能性を認識させるものとなった。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人 □自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『ベイビー・ブローカー』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『スポーツ毒親』島沢優子]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
先祖との橋渡しの八女産線香
──線香製粉・馬場水車場(福岡県八女市上陽町)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
輝く大地に咲く200万本のひまわりが出迎える/北海道北竜町
□山・海・暮・人/芥川 仁
時代に翻弄される葭職人──滋賀県近江八幡市円山
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
山林とともに生き、伝統が息づく天孫降臨の地
──高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム(宮崎県高千穂郷・椎葉山地域)


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【特別企画】

□DXによって自治体改革をどう進めるか?④
デジタル化の進展によって行政サービスと働き方は飛躍的に進化する──熊本市
□自治体DX最前線
──チャットツールでコミュニケーション力を高め業務の負担軽減と効率化を図る

※「人と地域をつなぐご当地愛キャラ」は休みます。

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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