【実証実験報告】行政向けABW型オフィス実証実験(一般財団法人行政管理研究センター)

NEW地方自治

2020.12.15

 一般財団法人行政管理研究センターは、ABW型オフィスの実証実験を行い、行政機関のオフィス改革に向けて実験で得られた知見をまとめていただきました。(編集部)
 

はじめに


 新型コロナ対策で在宅勤務やリモートワークが進む中、官民を問わずセンターオフィスの存在意義が改めて問われる局面にある。

 一般財団法人行政管理研究センターは、総務省行政管理局、コクヨ株式会社と協力し、行政管理局の執務室内に実証実験スペースを設置し、ワーカーが業務の内容に応じ働く場所等を自由に選択できるABW(Activity Based Working)型の実証実験を行った。

1 実証実験の概要

 本実験は、2019年4月下旬から約半年の間、職員の様々な行動(チームか個人か、集中作業かコラボか、意思決定か議論か)に応じた多様なスペースを設けた。具体的には、大規模な打ち合わせを行える「コラボスペース」、リラックスした環境で個人の気づきに資する「アイデアソファ」、遮音壁に囲まれた話し合いなどに利用可能な「チームブース」、遮音されたスペースで集中的に業務を行える「集中ブース」である。

大規模な打ち合わせを行える「コラボスペース」
(出典)コクヨ株式会社撮影(場所:総務省行政管理局6階)

 そして、実験スペース設置前の4月、設置後2か月が経過した6月、設置後6か月が経過した10月に意識調査及び行動調査を実施した。

 意識調査では、デスク環境、会議・打合せスペース、共用スペース、収納・セキュリティ、オフィス環境全体等について、満足度と重要度を職員に尋ねた。行動調査では、誰が、いつ、何の仕事を、どの場所において、どの位行っているのかについて、各1週間分のデータを収集した。また、補足的に個別ヒアリングも行った。

リラックスした環境で個人の気づきに資する「アイデアソファ」
(出典)コクヨ株式会社撮影(場所:総務省行政管理局6階)

2 実証実験結果

(1)意識調査と行動調査

 業務内容は、複数で行う会議や打合せなどよりも個人で行う資料作成と情報収集整理の割合が相対的に大きく、実験開始前と実験中とで大きな変化はなかった。また、業務場所については、従来の班ごとの執務スペースが業務の中心と、全体として大きな変化はなかったが、一部の職員には実験スペースが頻繁に利用されていた。

 

(2)個別ヒアリング結果等

 「業務によっては自席を離れた方が効率が良い」、「職員とのコミュニケーションが容易」、「場所を変えることで行き詰る状況に対応」と総じて好評だった。また、チームブースには「執務スペースでは話しにくい内容についても話せた」、集中ブースには「集中して短時間で資料作成を行えた」との肯定的な評価が多かった。

遮音されたスペースで集中的に業務を行える「集中ブース」
(出典)コクヨ株式会社撮影(場所:総務省行政管理局6階)

 また、コラボスペースだからこそできる局内研修や事業者ヒアリング、アイデアソファの気軽さを生かしたインターン学生との議論など、これまではなかった行動が生まれた。

 さらに、行政管理局では、原班(原課)に比べて総括(総務課)の方が実験スペースの利用ニーズがあると考えられたため、職員の所属に着目して調査結果を再度分析した。

 

(3)総括職員と原班職員に分けた分析

 行政管理局には、組織の内部管理や外部との調整を担う「総括」部門と、個別の政策を所管するいわゆる「原班」がある。

 満足度については、総括職員では「接客スペース」、「周囲の目線や会話漏れ」が上昇し、「思考の維持」が減少したが、原班職員では「周囲の目線や会話漏れ」、「思考の維持」が上昇し、「接客スペース」、「業務に応じて場所を選択」が減少した。

 重要度については、原班職員は「デスク(自席)での集中のしやすさ」、「接客スペース」ともほとんど変化がなかったが、総括職員は「デスク(自席)での集中のしやすさ」が大きく減少したのに対し「接客スペース」が増加した。

 行政にABW型オフィスを導入する場合、総括と原班とでは、業務の特性によって職員のスペースに対する満足度と重要度に違いが生じるため、その内容・特性をより分析する必要があろう。

遮音壁に囲まれた話し合いなどに利用可能な「チームブース」
(出典)コクヨ株式会社撮影(場所:総務省行政管理局6階)

3 むすび

 急速なデジタル技術の進展、ビジネス環境の複雑化、働き方の多様化といった環境の変化に応じた働き方改革として、業務の効率化のみならず、これまで以上に自律的な働き方やコミュニケーションの活性化が求められ、ABW型のオフィス改革は問題解決の処方箋の一つと考えられる。

 本実験結果では、業務特性ごとに異なるオフィス改革の可能性が示唆された。実際に実験スペースを活用した職員からは肯定的な評価が得られており、また、職員の行動をみると、ABW型のオフィスを利用すれば、新しい価値を生み出す可能性もあると考えられる。

 今回の調査で新しいオフィス環境を頻繁に活用した職員は少数にとどまっていた。ABW型オフィスの試みは職員の内発的要因も重要であるが、業務運用面の改善や新たな働き方を導入する組織文化も重要である。行政では、職員の部署異動も頻繁に行われるため、新しい組織文化の形成には多くの時間と持続的な強い意思が求められる。ワークスペースの変化は新しい組織文化を形成するきっかけとなり得るが、同時に、リーダーシップによって自律的な働き方を促していくことも必要であろう。組織的要因、業務の特性、業務時期の特性等を明らかにするための更なる実験を通じて、それぞれの組織・業務に適切なABW型のオフィス改革を展開していくことが可能となるであろう。


報告書について

本稿で紹介した実証実験の報告書は、下記にて公開されていますので、
是非ご覧ください。
(外部のサイトに接続します。)
http://www.iam.or.jp/about_abw.html
 
 
一般財団法人行政管理研究センター
 IAM(Institute of Administrative Management) について


 行政管理に関する理論と諸技術について、調査、研究及び開発を行い、並びに知識の普及及び啓蒙等を図り、もって我が国の行政の民主化、合理化及び効率化に寄与することを目的として、臨時行政調査会(第1次)の「行政の研究、研修体制の確立について・・・行政研究所を設ける必要がある」との勧告(1964年9月)を契機に、日本行政学会等関係者の長年にわたる強い要望のもと、1977年に設立された一般財団法人です。
 これまで、行政の組織・制度の基本的在り方を始め、行政改革、情報公開、行政評価、個人情報保護、公文書管理など広く行政管理に関することがらについて、調査研究、研修、出版等の事業を実施しています。

Webサイト(外部のサイトに接続します。)
http://www.iam.or.jp/index.html

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