行政のデジタルトランスフォーメーションは何から始めればいいのか

地方自治

2021.10.15

 9月、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するデジタル庁が発足し、急ピッチで行政のデジタル化が進もうとしています。そんななか、霞が関でいち早くデジタルトランスフォーメーションを推進している著者・吉田泰己氏による『行政をハックしよう』が10月下旬に発刊! 公務員が行政サービスを考えるうえでのエッセンスを凝縮した、いわば‟公務員のためのDXの教科書”。本記事では発刊に先駆けて、著者のメッセージを紹介します。

行政サービスと市民の期待するクオリティの大きなギャップ

 本書は、筆者が留学時の学びと経済産業省 情報プロジェクト室の実務を通じて行政サービスのデジタル化を進めるうえで重要だと考えるポイントや方法論をまとめた本です。

 行政のデジタル化においては、行政官の意識改革や、ITスキルを持つ専門人材の採用・協業など、組織の変革が欠かせません。ユーザー中心のサービスの考え方であるサービスデザイン思考や、システム全体の構造を理解したうえで自部署が担当しているサービスがどう位置づけられるかを考えるアーキテクチャ思考の2つが重要であり、これを実践するうえでの方法論もまとめています。
 また、実際に行政デジタル化が進んだ際に考えられる行政のあり方についてもアイデアをまとめています。

 社会にデジタルサービスが普及するなかで行政サービスとのクオリティの間に大きなギャップが生じており、この結果として市民の批判や不満は見過ごせないレベルに高まっています。これは新型コロナウイルス感染拡大に伴い、より鮮明になりました。
 また、行政官自身もデジタルテクノロジーを活用しきれていないために非効率な業務が残業につながり、本来もっと注力すべき政策検討等に十分時間が割けなくなっています。こうした状況を変えるには1人ひとりの行政官が現状の業務のあり方自体を見直し、デジタルテクノロジーを活用したサービスの向上、業務の効率化を追求する態度を身につけなければなりません。

 私自身もこれまでのキャリアのなかで非効率な業務を多く経験し、こうした状況を構造的に見直さなければ、本来果たすべき行政の役割が果たせなくなるのではないかという強い危機感を感じました。そして、海外のデジタルガバメント事例に触れた留学での経験が、行政のデジタル化の取り組みを本気でやろうという自分の内発的動機を後押ししました。
 行政官の意識改革、組織改革を皆で進めていくことがこれらの課題を解決するには最も重要であり、これまで私が考えてきたことを多くの行政官の方々にも共有したいとの思いから本書を執筆しました。

DXは意識改革と組織改革から始まる

 本書を通じて読者の皆さんが現在の行政の何が課題であるかを認識し、デジタル化を進めるうえでどのような態度を身につけるべきかを考え、その取り組みの一歩を踏み出してもらうことが目標です。
 デジタルという言葉を聞くと、「情報システム部門やITベンダーに任せておけばいい」と考えてしまいがちですが、そうではありません。
 市民に利便性の高いデジタルサービスを届けるため、行政組織は現在のITサービス企業のような組織にならなければなりません。デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、組織がオンラインで市民に高い品質のサービスを提供できるような能力を備え、実際に提供することを指すからです。
 ITサービス企業でも、すべての社員がプログラミングを行っているわけではありません。デジタルを前提として、サービスを企画したり、プロジェクトを管理したり、さまざまな仕事があります。
 一方で、ITサービスを効果的に届けるために、行政官とITサービス企業の社員にはユーザー中心主義やアジャイルな業務の進め方など、大きな態度の違いがあります。まずはこのギャップを埋めなければ、デジタル化を推進することはできないのです。
 こうした考え方のギャップについて本書を通じて感じてもらえると、一歩前に踏み出すことが可能になると考えます。

当事者意識を持って一歩踏み出そう

 新型コロナウイルス感染拡大のなかで、自治体職員の皆さんも、市民へのサービス提供においてさまざまな苦労をされているかと思います。オンラインを通じた遠隔でのサービス提供、リモートでの効率的な業務の前に多くのハードルがあることは想像に難くありません。
 これを変えていくためには、これまで前例踏襲で行ってきた業務のプロセスやサービスのあり方を各業務に当たる行政官が当事者意識を持って見直していくことが重要だと思います。自部署の業務の非効率な部分や、サービスに対する市民の不満は、本来その部署に所属する自分が一番よくわかっているはずなのです。たとえ自分がいる間にはそのすべての課題を解決できないとしても、行政官がそれぞれ問題意識を持って取り組むカルチャーをつくることができれば、課題意識は引き継がれ、徐々に解決できるはずです。
 すでに述べたとおり、デジタル化の取り組みはさまざまな役割のなかで実現します。行政官を含む行政デジタルサービスに携わるすべての関係者が協業しながら前進するため、まずはそれぞれが一歩踏み出す後押しを本書ができれば嬉しいです。

 

著者について
吉田泰己(よしだ・ひろき)
経済産業省 情報プロジェクト室長、デジタル庁 企画官
経済産業省に2008年入省。法人税制や温暖化対策、エネルギー政策等を担当の後、2015年から2017年までシンガポール、米国に留学し、海外のデジタルガバメントの動向について研究する。2017年7月より経済産業省情報プロジェクト室にて事業者向けの行政サービスのデジタル化に携わり、2020年7月より同室室長となるとともに、9月1日よりデジタル庁にも併任。

 

(書籍の詳細はコチラ

 

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