公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書
【新刊】公務員に特化した『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)―「対価型」セクハラとは?
地方自治
2020.08.06
「対価型」セクハラとは?
(単行本公務員のためのハラスメント“ゼロ”の教科書)
(株)ぎょうせいは令和2年7月、公務員に特化したパワーハラスメントの専門実務書『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』(高嶋直人/著)を刊行しました。パワーハラスメントの防止を企業に義務付けるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が令和2年6月、施行されたことを受けたものです。ここでは、『公務員のためのハラスメント“ ゼロ” の教科書』から内容の一部を抜粋してご紹介します。(編集部)
●セクハラの類型を知る意味
セクハラには、「対価型」と「環境型」の二種類があります。この類型を知る意味は、「何がセクハラに当たるか」を理解する手がかりを得ることです。自分勝手にセクハラの定義を狭く捉え、「見解の相違である」と主張しても退けられます。法令で規制の対象となるセクハラの範囲を正しく理解しておかなければ、むしろ理解していなかったことの責任が問われることになります。
そういった意味において、法令で規制されているハラスメントは、モラルの問題ではなくコンプライアンスの問題です。特に、私的な動機から起こしてしまうセクハラは、注意が必要になります。仮に「個人的な問題である」と主張しても、法律で規制されているセクハラの範囲で行われた言動は、「個人的な問題ではない」からです。
とかく「どこまでがセクハラか?」という表現で語られますが、それは実質的に「どこまでが法令で規制されているセクハラか?」ということを意味します。「個人的な問題では済まされない言動の範囲」を正しく理解するため、まずは法令で規制されているセクハラの内容を理解しておきましょう。
●不利益を与えるだけが該当するわけではない
まずは「対価型」セクハラについて説明します。このタイプのセクハラの定義は、次のとおりです。
「職員の意に反する性的な言動に対する職員の対応(拒否や抵抗)により、その職員が解雇、降格、減給、契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること」
典型例は、上司が部下に恋愛感情を抱き、一対一で会うように様々な誘いをして、部下が拒絶すると閑職に異動させるなどの報復を行うケースです。しかし、実際に不利益を与えた場合だけがセクハラとなるのではありません。それを示唆して、意思に反して相手を従わせる行為もセクハラになることに注意が必要です。
Point
・セクハラを「対価型」と「環境型」に分けて理解するのは、法令で規制されているセクハラの範囲を正しく理解するためである。
・「個人的な問題では済まされない」ことをしっかり理解しておく。
・意思に反して相手を従わせる行為は広くセクハラになることに注意をしよう。