議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第19回 続・大津市議会意思決定条例のどこが常識破りなのか?

地方自治

2020.08.06

議会局「軍師」論のススメ
第19回 続・大津市議会意思決定条例のどこが常識破りなのか? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2017年10月号

*写真は琵琶湖の情景。

 前号では、機動的な議会の意思決定を実現するため、議決に拠らずとも議長や議会運営委員会(以下「議運」)の決定で議会の意思とする事項を定めた、「大津市議会意思決定条例」の実務的意義の一つについて述べた。

 それは、地方自治法(以下「法」)制定時には想定されていなかった「通年議会」を採用したことによって、法定外活動を議会の公務と位置付ける「議員派遣」手続のためだけでも、本会議を開く必要に迫られる不合理に対処したものである。

■その他の実務的意義

 次に議会における専門的知見の活用については、『逐条地方自治法』(以下「逐条解説」)の100条の2の[解釈]において、具体的内容の議決を必要とする見解が示されている。だが、大学連携事業の詳細を、常に定例会開催に合わせて決めようとすることは、実務上困難を伴う。

 大津市議会では制度運用の機動性を確保しつつ、公費支出の合法性を担保するため、当該条項についても議長決定とすることとした。つまり、立法者意思と現場ニーズのギャップを、条例制定で埋めようとするものである。

 三つ目の意義の公聴会開催、参考人招致の意思決定手続については、「逐条解説」では議決でも議運決定でもよいとされている。だが、法が議会に判断を委ねるというのであれば、その都度場当たり的に決めるのではなく、大津市議会として執る手続きは予め決めておき、市民に明示しておくことが必要と考えたものである。

■意思決定条例制定の本質的意義

「大津市議会意思決定条例」の議事機関としての実務的意義は前述のとおりだが、立法機関としての議会の本質的意義は別にある。

 法制定時には想定されておらず、追加改正によって制度化された「通年議会」や「専門的知見の導入」によって生じる実務的課題は、本来は法改正等によって国で対処されるべきものである。しかし、地方議会に法改正の権限が与えられていない以上、立法論を語っていても直面する課題は解決できない。地方議会が自ら持ちうる権限によって、立法者意思と現場ニーズとの乖離に対処したことこそが、大津市議会が「議会意思決定条例」を制定した立法機関としての本質的意義である。

■「常識」こそ疑うべきもの

 発想の起点は、一つの法律中で同一行為を別表現することは、解釈に予断を与えるため考えにくいということだ。法には議会の意思決定に関して「議決しなければならない」とされているのは一部であり、多くは「議会は~できる」など他の表現がとられている。したがって、法に「議決」と明記されていなければ、首長が事務決裁規程を定めているのと同様、議会も意思決定方法を条例制定時に議決し、予め市民に明示しておけば、議決以外の意思決定も可能だと考えたのである。

 合議制機関だから意思決定に時間がかかるのは仕方がないとするのは思い込みであり、手続きに必要以上に手間をかけることが丁寧な議論なのでもない。だが議会の意思決定は議決しかあり得ないというのが、議会の常識とされている。私は常識とされるものこそ疑ってかからなければ、現場における進歩はないと思っている。そして、市民感覚からズレた議会の常識を変えていくことこそが、議会局のシゴトの要諦ではないだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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