議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第1回 議会事務局は異文化社会なのか?
地方自治
2020.04.01
議会局「軍師」論のススメ
第1回 議会事務局は異文化社会なのか? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2016年4月号)
議員と議会局職員の協働成果
大津市議会では、3年連続のマニフェスト大賞受賞による広報効果もあり、年間130件を超える視察を全国から受け入れている。その多くが、議会からの政策立案と議会改革に関するものであり、議員と議会局職員が協働する「チーム大津市議会」の成果についてである。
そして、よく尋ねられるのが、「何故そのような協働関係が成立するのか」ということである。それは、会派を超えた議論ができる文化が醸成されていることや、議会の補助機関たる職員(以下、「局職員」)の提案にも真摯に耳を傾ける議員の懐の深さによるところが大きいのであるが、局職員の感覚が他とは異なることも大きな理由と感じている。
また、大津市議会では補助機関の組織名称を、15年4月の議会基本条例施行と同時に、「議会事務局」から「議会局」に改めた。それは、「名は体を表す」といわれるとおり、議会運営上のルーティンワークをこなすだけの存在ではなく、議会、議員に発意する職員組織であることを外形的にも示すためである。そして、その名に相応しい機能発揮ができるかについては、局職員の意識、感覚が重要なポイントである。
したがって、このコラムでは私が唱える「局職員は議会の参謀であるべきだという『軍師』論」について、局職員の意識改革の必要性を中心に、私見を述べていきたい。
求められる意識改革
まずは、意識改革が求められる背景についてである。一般に、局職員の意識、感覚は、執行機関の補助職員(以下、「執行部職員」)とは、同一自治体の職員であっても大きく異なることが多く、また、異なるべきだと思い込んでいる。もちろん、執行部職員の意識、感覚が全て正義などと言うつもりはない。しかし、市民目線で両者を比べたときに、特に民主主義度や情報公開度などの観点においては、局職員の意識は、より保守的、悪く言えば遅れているように見えることが多いのも事実ではないだろうか?
そして、時代錯誤との指摘に対する反論に、日常的に持ち出されるキーワードがある。それは、「それが議会の『伝統』と『格式』であり、『権威』を守ること」との文脈で使用される。もちろん、良き伝統や格式は受け継ぎ、住民の代表機関、自治体の最終意思決定機関としての議会の権威は保持されるべきものである。だが、これらのキーワードは、時代背景や市民感覚を踏まえて、外部に対する合理的説明が困難な場合に用いられることが少なくない。そして、そのような場面での主張は、概して主観的かつ情緒的で、前例を踏襲すること自体が目的化してしまい、考えの異なる人に対する論理的説得力に欠けている。また、その多くが内部視点からだけの主張であるがゆえに、外部視点、とりわけ市民から見たときには、違和感を覚えることになるのである。
それが顕著に表れるのは、選挙で選ばれた市民の代表(以下、「公選職」)に仕えるスタンスである。議会事務局の世界では、議員からの求めがない限りもの申さないのが、公選職に対する敬意だと誤解(あえて確信?)する向きがある。だが、執行機関ではトップダウンによる政策も多いが、ボトムアップによることも一般的である。一方、議会では局職員からのボトムアップはもちろん、議員に意見具申すること自体が憚(はばか)れるという雰囲気が多くの議会ではあるようだ。次号では、その是非について詳細を語りたい。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
清水 克士(大津市議会局長)
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)