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EBPMを活用した行政経営の実践―データに基づく意思決定と事業運営の接続|政策トレンドをよむ 第38回

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2026.06.04

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    【政策トレンドをよむ 第38回】
    EBPMを活用した行政経営の実践―データに基づく意思決定と事業運営の接続

    EY新日本有限責任監査法人 FAAS事業部
    松倉 彩香

    ※2026年4月時点の内容です。

     人口減少の進行や高齢化に伴う社会保障費の増大などにより、地方自治体を取り巻く財政環境は厳しさを増している。限られた経営資源を効果的に配分し、持続可能な行政運営を実現するかは、すべての地方自治体に共通する課題である。こうした中、エビデンスに基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)への関心は高まっているが、評価や分析が制度として導入されても、具体的な意思決定やヒト・モノ・カネの資源配分の見直し等に十分活用されていないケースも少なくない。分析結果が現場や幹部の判断にどのように用いられるのかが明確でないまま、評価作業自体が目的化してしまうことが実務上の課題として指摘されている。

     しかし一方で、EBPMを評価や分析にとどめず、行政経営や予算編成の中に組み込むことで実効性を確保している地方自治体もある。その先行事例の1つとして横浜市が挙げられる。同市ではEBPMを単なる分析手法としてではなく、施策評価・予算編成・事業見直しを一体で回す「行政経営の仕組み」として再定義し、「データ経営」として全庁的に実装しており、経営サイクル全体を支える基盤として位置付けている。

     横浜市は、EBPMを具体的な運用に落とし込む枠組みとして、「データドリブンプロジェクト(DDP)」を導入している。DDPとは、施策ごとにデータに基づく検証と議論を行い、その結果を改善や事業の方向性の判断に活用する取り組みである。ここで重視されているのは、分析手法の高度さや厳密さそのものではなく、データを用いた検証と対話を通じて、次に何を変えるのかを判断するプロセスである。

    DDPは、施策評価の仕組みとして位置付けられており、中期計画や市政運営方針と連携している。中期計画に基づく施策を対象に、施策目的と事業の整合性や実績・効果を検証し、その結果を踏まえて事業の創造・転換を検討している。こうした検討結果を翌年度の事業計画や予算編成に反映することを明示しており、PDCAサイクルにおける評価(C)が単なる「振り返り」にとどまらず、改善(A)や次の意思決定につながるよう、制度的に組み込まれている。

     DDPの成果は、事業の継続や見直しに関する行政経営上の判断が、より合理的に行われるようになった点が挙げられる。その背景として、事業単体ではなく施策全体を俯瞰し、施策目的と各事業との関係性や実績・効果を整理した上で判断する意思決定のあり方が定着しつつある。こうした視点の共有は、組織内の対話の質を高め、説明責任の観点からも意義を持つ。

     横浜市の取り組みから得られる示唆は、大きく3点に整理できる。

     第一に、評価の結果が改善に繋がるよう、その接続を制度として担保している点である。DDPを全庁的な施策評価の仕組みとして行政経営のPDCAサイクルに位置付け、決算・実績に基づく検証結果を翌年度の事業計画や予算判断へ確実に接続している。

     第二に、これを実効化する手段として、EBPMを「どの局面で、何の判断に用いるのか」という観点から運用に落とし込み、施策目的と事業との関係や成果指標を共通の枠組みで整理した上で議論している点である。これにより、前例や個別事情に依存しがちであった事業の継続や見直しについても、説明可能な形で判断することが可能となっている。

     第三に、データ利活用や施策評価を支援する体制を整え、評価・改善を日常業務として定着させる土台を築いている点である。加えて、この取り組みを全庁的な取り組みとして実施することで、職員の「自分事化」が進み、組織内の対話の質や説明責任に対する意識の向上にも寄与している。

     このように横浜市の事例は、EBPMを導入するか否かではなく、行政経営の中でEBPMをどのように位置付け、予算や事業運営の意思決定に結び付けながら継続させていくかを具体的に示している。持続可能な行政経営に悩む多くの地方自治体にとって、規模や実施体制が異なる地方自治体であっても評価結果を意思決定に結び付けるための制度設計と、その運用を支える施策単位での検証・判断の場の設け方を提供するものといえる。

     

    〔参考文献〕
    ・横浜市 政策経営局データ経営部note「データドリブンプロジェクト(#施策評価5)」
    https://note.com/yokohamads/n/n6c86c16fb773
    ・横浜市中期計画2022~2025
    https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/hoshin/4kanen/2022-2025/
    ・横浜市中期計画2026~2029(素案)
    https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/hoshin/4kanen/2026-2029/soan.html
    ・横浜市政策経営局令和7年度事業概要
    https://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/kiroku/katsudo/r7/JohninSSZ-R07.files/JSSZ-20250521-ss-1.pdf
    https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/org/seisaku/unei/r7jigyougaiyou.files/0004_20250520.pdf
    ・令和7年度政策経営局事業計画書
    https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/org/seisaku/jigyokeikaku/r7zigyoukeikaku.html

     

    自治体経営の最適化支援(EBPM)
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/ebpm

     

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