少額随契の基準額の見直しをはじめとする地方自治法施行令改正のポイント
NEW自治体法務
2025.04.21
少額随契の基準額の見直しをはじめとする地方自治法施行令改正のポイント
愛知大学地域政策学部教授
斉藤 徹史
地方自治法施行令の一部を改正する政令(令和7年政令94号)が、令和7年3月28日に公布されました。今回3つの事項が改正され、それぞれの施行期日は、後述の1が令和7年4月1日、2が令和7年3月28日、3が令和7年6月1日です。以下、その内容を紹介します。
改正される3つの事項
1.少額随契の基準額の見直し
(自治令別表第5、地方公営企業法施行令別表第1及び市町村の合併の特例に関する法律施行令50条)
地方公共団体の契約は、一般競争入札によることが原則ですが、例外的に指名競争入札と随意契約によることができます(自治法234条2項)。このうち、随意契約が許容される事由の1つに
「売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。」
があります(少額随契:自治令167条の2第1項1号)。
少額随契は、少額契約を競争に付すことが非効率・不経済を招きかねないため、契約事務を簡素化する趣旨により認められています。本改正では、「昨今の物価高騰や事務の効率化」の観点から基準額が引き上げられました(図表参照)。
2.普通財産である土地の信託目的の拡大
(自治令169条の6第1項)
自治法238条の5第2項は、
「普通財産である土地(その土地の定着物を含む。)は、当該普通地方公共団体を受益者として政令で定める信託の目的により、これを信託することができる。」
と定め、自治令169条の6第1項の限定された目的のもと、議会の議決を経て普通財産の信託を可能としています(自治法96条1項7号)。
この「信託の目的」の1つに、「信託された土地において、森林の施業を行い、かつ、当該土地の管理又は処分を行うこと。」が追加されました(新2号)。
本改正は、令和6年地方分権改革に関する提案募集において、「財産区の土地を森林の施業・管理を目的として信託可能とすること」について提案があったことを受けてのものです。
3.児童福祉法等改正に伴う中核市の特例に関する整理
児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の一部施行に伴い、中核市が処理する児童福祉に関する事務について、規定上の整理が行われました。
各改正事項について
1.少額随契の基準額の見直し
契約事務では、今日の経済情勢に照らし、賃金水準や物価水準の変動に応じて契約額の見直しを行う条項(スライド条項)に関心を向けられていますが、今回の基準額の見直しはこの動きと軌を一にするものといえます。また、本改正により、物品の購入などに関わるオープンカウンター方式の対象となる契約額も見直されるものと考えられます。
2.普通財産である土地の信託目的の拡大
先の自治体提案は、財産区の森林と民間の森林を一緒に信託することで、より広い面積に集積し、一体として森林の施業・管理を行うことができれば、自治体財産の価値を高める効果が期待できるとする趣旨のものでした。民有林の森林信託は令和2年8月から岡山県西粟倉村ですでに行われていますが、本改正は、森林保全に向け、意欲ある自治体の提案に国が前向きに応えたものと評価できるでしょう。
<引用・参考文献>
碓井光明『公共契約法精義』209頁(信山社、2005年)
総務省「地方自治法施行令の一部を改正する政令の概要」(2025年4月3日閲覧)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001002061.pdf
愛知県「財産区の土地を森林の施業・管理を目的として信託可能とすること」(「令和6年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項」)(2025年4月3日閲覧)
https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/teianbosyu/doc/r06/tb_r6_kohyou_07_1_mic.pdf
本記事では、地方自治法施行令の改正について改正の概要と、自治体職員が押さえておくべきポイントをご紹介しました。
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