公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【著者インタビュー編】大人のための地学の教室
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2025.06.09

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出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年5月号
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特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
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「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る

大人のための
地学の教室
鎌田浩毅・著
ダイヤモンド社/1,800円+税
著者プロフィール

鎌田浩毅(かまた・ひろき)
1955年生まれ。東京大学理学部地学科卒業。京都大学名誉教授・京都大学経営管理大学院客員教授。専門は地球科学・火山学。科学を明快に解説する「京大人気No.1教授」で「科学の伝道師」。週刊「エコノミスト」に『鎌田浩毅の役に立つ地学』を連載中。YouTube「京都大学最終講義」は110万回以上再生中。著書に『みんなの高校地学』(ブルーバックス)、『M9地震に備えよ』(PHP新書)など。
大人のための地学の教室
── 著者インタビュー
2011年3月11日、日本列島はマグニチュード9の東日本大震災に見舞われた。この規模の巨大地震は実に1000年ぶりだという。3.11を契機として「大地変動の時代」に突入した日本。4つのプレートに接し、多くの断層や火山を有するこの国で生きる人のための「地学」の知識を、初学者にもわかりやすく示したものが本書である。
著者は、京都大学名誉教授の鎌田浩毅さん。火山学や地球科学を専門に、同大で24年もの間「地球科学入門」という人気講義を受け持ってきた。そんな鎌田さんは、本書で3つの大災害に警鐘を鳴らす。「南海トラフ巨大地震」「富士山噴火」そして「首都直下地震」である。
「中でも、2030~40年の間に起こると予測される南海トラフ地震の被害者想定は、首都圏から九州まで6800万人。これは、日本の人口の半分以上にものぼる。なるべく多くの人に自分事として備えてもらう必要があるが、信じてもらうには当然、根拠が要る。そこで、メカニズムとなる地学の知識をわかりやすく解説することにした」
と、執筆に対する想いを語る。
先述の通り災害の啓発を起点とする本書だが、中身はワクワクするような地学の知識が満載だ。“月は地球のかけら”“マントルの大きさを知る方法”“なぜ日本海ができたのか”──壮大なスケールの内容を読み進めていくうち、目の前の生活に押し込められていた自分の視界も、大きく広がっていくような感覚を覚える。そして、そんなふうに地学を通し養われていく“長尺の目”こそが、これからを生きるために必要なものだと、鎌田さんは強調する(詳細はぜひ、書籍を読んでご確認いただきたい)。
本書ではより多くの人に届けるための工夫として、地学の本で多くなりがちな“図版”に力を入れているそうだ。図のわかりにくさが読み手のネックとならないよう、デザイナーと協力をしながら親しみやすい図に仕上げていったという。
「これは講義でも同じこと。専門家の我を通すのではなく、一般の人や学生の目線に立って伝えることが大事だと思っている」。
長年教鞭をとってきた鎌田さんならではの言葉は、「学」だけでなく「官」の仕事にもつながっている。
「自治体職員のみなさんも、地域の専門家のひとり。市民に行政のことを伝える際には、市民の目線や理解度に合わせることが大切になるだろう。本書には図の見せ方のほかにも、文章の書き方や説明の順番など“伝える技術”の実践が豊富に記されている。もし本書を最後まで面白く読み通せたなら、災害の知識はもちろんのこと、誰かに伝える技術についても、ぜひ活用してほしい」
と、期待を込めた。
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