AIで変わる自治体業務

稲継裕昭

第5回 AI導入・普及後に求められる職員像(後編)

NEWICT

2019.09.27

(『Gyosei Cafe』*2019年10月号 株式会社ぎょうせい システム事業部)

自治体職場におけるAI・RPA革命

 前号(https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat06/0000005273)では、「自治体戦略2040構想研究会」の報告書の中の、「半分の職員数でも担うべき機能が発揮される自治体」という項目で、破壊的技術(AI,ロボティクス)を使いこなすスマート自治体への転換ということが述べられていることを見ました。

 18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命の時代においては、人の手による製造が、技術革新を伴った機械による製造へと置き換わっていきました。今後10年以内に展開されていくと予想されているAI・RPA革命の時代においては、人の手による事務作業の多くがAIやRPAに置き換わっていくことになります。

 AI・RPAの普及によって、繰り返しが求められるような機械的な作業は、人間が行う必要が少なくなっていきます。今は組織内のやりとりに多くの時間を割いている職員も多数います。また、国=県=市町村間の機械的な業務のやりとりも数多くあります。しかし、このような組織内、組織間のやりとりについては、今後、その多くが自動化されていくことになるでしょう。残ってくる自治体職員の仕事の相手は感情を持った人間――住民です。AI・RPAを使いこなすことによって生まれた時間的なスラックを利用して、現在は十分な時間的余裕がなくて対応できていないこと、より住民に寄り添った業務に職員の力を振り向けていくことになるでしょう。

 そのような時代には、AIにはできない仕事をすることのできる職員がより求められてきます。

今後、自治体職場で求められる人材とは

 自治体の業務の例として、迷惑施設の建設に伴う住民説明会を考えてみましょう。反対する住民も大勢予想される説明会は、担当部署にとっては大きな山場です。当然、説明資料は念入りに作成しなければなりません。種々のデータを渉猟した上で、エクセルに落とし込み、そこから見やすいグラフを作成していくでしょう。説得材料としての過去の経緯なども要領よくまとめなければなりません。当日の進行はパワーポイントを投影して説明するという段取りとなっている場合は、パワーポイント資料の作成も相当念入りにする必要があるでしょう。現状では、これらの資料作成に担当課が総がかりで膨大な時間を費やしている場合が多くみられます。

 しかし、将来的には、データを探索してきたり、過去の経緯をまとめたり、グラフを作成したり、パワーポイントを作成したり、といった作業は人間が方向性を示しさえすれば、あとはAIやRPAが代替してくれるようになるでしょう。方向性を決めた後の「資料作成」という「作業」は、人間でなくてもできるようになるのです。

 他方で、住民を前にして説明するということ、質問に的確にこたえるということは人間でなければできません。説明の相手は感情を持った人間です。住民から出された質問や意見を真摯に受け止め、咀嚼して回答し、最終的に納得してもらうためには、誠心誠意説明する姿勢の人間、政策を進めようとする自治体職員でなければなりません。AIやRPAがこれまで以上に進化したとしても、対人サービスの分野ではやはり人間でないとできない業務が数多く存在するのです。

高い専門性、企画調整能力、コミュニケーション能力

 今後、自治体職員の業務は、このようなAIが不得意とする業務にシフトしていくことになるでしょう。自治体業務のうちAIが不得意とするものとしては、対人業務にかかわる分野、他者との協調性が必要な業務、さまざまなアクター間の調整業務、創造性が求められる業務、などがそれにあたると考えられます。先の報告書でも「高い専門性、企画調整能力、コミュニケーション能力をもつ人材」が必要になるとされています。そのような人材を、長期的な視点で育成していくことが求められます。

(*)「Gyosei Cafe」は法令出版社ぎょうせいのシステム事業部がお届けする、IT情報紙です!隔月で、自治体職員の皆様へお役立ち情報をお届けいたします。

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稲継裕昭

稲継裕昭

早稲田大学政治経済学術院教授

(いなつぐ・ひろあき)。大阪府生まれ。京都大学法学部卒、京都大学博士(法学)。大阪市職員、大阪市立大学教授等を経て2007年から早稲田大学政治経済学術院教授。著書に『自治体の人事システム改革』『プロ公務員を育てる人事戦略』『プロ公務員を育てる人事戦略Part2』『地域公務員になろう』『自治体行政の領域』『評価者のための自治体人事評価Q&A』(以上ぎょうせい)、『行政ビジネス』(東洋経済新報社)、『自治体ガバナンス』(放送大学教育振興会)等多数。

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