時事問題の税法学

林仲宣

時事問題の税法学 第7回 ゴルフ場利用税

NEW地方税・財政

2019.06.28

時事問題の税法学 第7回

ゴルフ場利用税
『月刊 税』2016年5月号

娯楽施設利用税

 3連休初日の午後の福岡空港。航空会社のカウンターにゴルフバッグを抱えた中年紳士の姿が後ろに並んだ。いまどきホテルやゴルフ場から自宅まで、黒猫や飛脚、あるいはカンガルーが届けてくれる時代に珍しいと思ったら、同行者が、「こりゃ安い」とつぶやいた。電光掲示板に「自宅まで千円で宅配する」という航空会社のメッセージが流れていた。いわれてみると空港ロビーには、ゴルフバッグを手にした旅客が目立つ。

 ほぼ同じ時期、女性スタッフが通うゴルフ練習場では、レッスンプロが引率してグアム4日間のゴルフ・ツアーに数十人が参加したそうだ。ゴルフ三昧の旅行は好評で、来年もという声があがっているという。

 こんなことを見たり聞いたりすると、「ゴルフの愛好者は年々増加しているとはいえ、なお特定の階層、とくに高額所得者がゴルフ場の利用の中心をなしており、その利用料金も相当高額であって、ゴルフ場の利用が相当高額な消費行為であることは否定しがたいところであり……娯楽性の面をも有する高額な消費行為に担税力を認め」られると判示した最高裁昭和50年2月6日判決を思い出さざるを得ない。

 当時、舞踏場、ゴルフ場、ぱちんこ場、まあじぁん場、ボーリング場などの娯楽施設を利用する者には、その利用料金を課税標準として娯楽施設利用税が課税されていた。同じスポーツであるスケート場、テニスコート、水泳プール、野球場等の利用者は課税対象ではなく、ゴルフのみが対象になっているのは、憲法14条の平等原則に違反するというのが納税者の訴えであったが、あっさり斥けられてしまった。

 平成元年4月、消費税の導入に伴い娯楽施設利用税は廃止された。が、同時にゴルフ場利用税が創設された。いわばゴルフだけが残された格好だった。ゴルフを嗜まないので気がつかなかったが、多くのゴルフ愛好者には寝耳に水だったらしい。

ゴルフ場利用税を巡る攻防

 その後紆余曲折を経て、平成15年から、ゴルフ場利用税は、18歳未満の者、70歳以上の高齢者などに対して、非課税の措置が採られた。きっかけとなったのは、平成11年に熊本県で開催された国民体育大会からゴルフが競技種目に採用されたことだといわれている。つまり国体の競技には高校生も参加することから、高校生が参加するスポーツ競技が課税対象となることへの不満だった。これを推進したのは当然、当時の文部省だったが、税収確保を目指す当時の自治省との攻防は話題となった(『読売新聞』平成15年7月17日)。実を言えば文部科学省と総務省の鍔迫り合いはいまも続いている。

 文部科学省は、毎年、ゴルフ場利用税の廃止の要望を出す。その要旨は、高齢化が進む日本社会において、ゴルフの振興は生涯スポーツ社会の実現に大きく貢献するものであり、またその結果、生涯にわたる心身ともに健康で文化的な生活が実現される。ゴルフに国民が積極的に参画できる環境を整備するためには、税制改正を行う必要があるというものだ。

 最近でも、平成29年度税制改正に向けてゴルフ場利用税の存続に関する報道がある(『朝日新聞』平成28年3月14日)。この記事で興味深いのは、京都府下のある村にあるゴルフ場支配人は、プレー料金が下がった分、税の負担感が増しているから、税がなくなれば必ず利用者は増えると力説する。ところがゴルフ場利用税が廃止されれば、それに伴いこの村の税収は2割減となるという。ゴルフ人口の減少は、ゴルフ場利用税と消費税の二重課税が原因とゴルフ場や競技団体関係者が主張しているが、本当にそうだろうか。

 首都圏のある県職員から、子ども同伴の利用者が増えたことから、ゴルフ場利用税が減収したという話を聞かされたことがある。子どもの貧困問題が話題になり始めた頃だから違和感があった。プロを目指すには、野球やサッカーよりゴルフの方が早道でしょうかね、とその人物は皮肉っぽく言ったが、そういえば高校生のプロゴルファーの誕生が話題になっていた頃の話だ。

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