最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

公職選挙法の一部を改正する法律|最新法律ウオッチング

自治体法務

2025.06.05

≪ 前の記事 連載一覧へ
時計のアイコン

この記事は4分くらいで読めます。

最新法律ウオッチング 第135回 公職選挙法の改正

※2025年4月時点の内容です。

 2025年の通常国会において、2本の公職選挙法の一部改正法が成立した。

 2024年7月の東京都知事選挙では、ポスター掲示場に、品位を著しく欠くものや、選挙と関係のない営業宣伝用と思われるものなど、選挙運動のために使用されるとはいい難いポスターが掲示される問題が生じた。このような最近の選挙運動用ポスターをめぐる状況を受け、選挙の適正な実施の確保に資するための措置を講ずる改正法案が提出されることとなった。

 また、2022年12月と23年4月に、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会において、26年ぶりの自由討議が行われ、これを基に、23年6月に選挙運動等のあり方に関する報告書が取りまとめられた。この報告書において、公職選挙法の改正に向けておおむねの認識の一致が見られた項目として挙げられた、選挙運動に関する規格の簡素化を図るための措置を講ずる改正法案が提出されることとなった。

 これらの法案は、衆議院の議員立法として国会に提出され、成立した。

公職選挙法の改正

ポスターの記載

 ポスター掲示場に掲示する個人演説会告知用ポスターや選挙運動用ポスターには、その表面に、ポスターを使用する公職の候補者の氏名を、選挙人に見やすいように記載しなければならないこととした。

 また、公職の候補者は、その責任を自覚し、ポスター掲示場に掲示する個人演説会告知用ポスターや選挙運動用ポスターには、他人や他の政党その他の政治団体の名誉を傷つけ、善良な風俗を害し、特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をする等いやしくもポスター掲示場に掲示されるポスターとしての品位を損なう内容を記載してはならないこととした。

ポスターでの営業宣伝に係る罰則

 ポスター掲示場に掲示したポスターその他の文書図画において特定の商品の広告その他営業に関する宣伝をした者は、100万円以下の罰金に処することとした。

選挙運動に関する規格の簡素化

 公職の候補者が主として選挙運動のために使用することができる自動車については、従来、複雑な車種制限や構造制限が定められていた。そこで、規制の簡素化を図る観点から、その規格を、全ての選挙について、普通免許で運転することができる普通自動車の規格を参考に、乗車定員10人以下で、車両総重量3.5トン未満とすることとした。

 また、公職の候補者の選挙運動ポスターの規格については、従来、衆議院小選挙区、参議院選挙区や都道府県知事選挙にあっては、長さ42センチ、幅40センチ以内、このうち長さ42センチ、幅10センチは個人演説会告知用ポスターとされ、参議院名簿登載者、都道府県議会議員や市町村の選挙にあっては、長さ42センチ、幅30センチ以内とされており、規格が異なっていた。そこで、公職の候補者が使用する選挙運動用ポスターの規格を、個人演説会の告知の記載の有無にかかわらず、長さ42センチ、幅40センチ以内に統一することとし、これに伴い、個人演説会告知用ポスターを廃止することとした。

検討

 ポスターの記載等に関する改正法の附則において、選挙に関するインターネット等の利用の状況、公職の候補者間の公平の確保の状況その他の最近における選挙をめぐる状況に対応するための施策のあり方については、引き続き検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとした。

施行期日

 ポスターの記載等に関する改正法は、公布の日(2025年4月2日)から起算して1か月を経過した日から、選挙運動に関する規格の簡素化のための改正法は、2026年1月1日から、それぞれ施行される。

国会論議

 国会では、ポスターとしての品位を損なう内容を記載してはならないこととする規定について、誰がその違反について判断をするのか質問があり、法案提出者からは、この規定の趣旨は候補者の自覚を促すことにあり、選挙管理委員会による撤去命令の対象ではないが、規定に違反するポスターを掲示した場合には、それが有権者による投票の判断材料になり、その候補者が落選したり一定の得票を得られなかった場合には、供託金の没収や選挙運動費用の負担につながったりするなど、選挙の過程を通じて是正、淘汰が図られていくとの説明がされた。

 また、検討についての規定を設けた趣旨について質問があり、法案提出者からは、昨今の選挙で、選挙運動名目のSNSを利用した営利行為が加速している、SNSによる偽情報等によって選挙結果への重大な影響が生じている、他の候補者の応援のために立候補するいわゆる「2馬力選挙」によって候補者間の不公平が生じている等の指摘を踏まえたとの説明がされた。

 

★「最新法律ウオッチング」は「月刊 地方財務」で連載中です。本誌はこちらからチェック!

月刊 地方財務 2025年5月号

月刊 地方財務 2025年5月号
特別企画:地方公会計情報の付加価値向上と更なる活用を目指して
編著者名:ぎょうせい/編
販売価格:1,870 円(税込み)
詳細はこちら ≫

 

≪ 前の記事 連載一覧へ

アンケート

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

月刊「地方財務」

月刊「地方財務」

閉じる