議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第46回 理想の実現に必要なものは何か?

NEW自治体法務

2021.02.04

議会局「軍師」論のススメ
第46回 理想の実現に必要なものは何か? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2020年1月号

 少々以前のことだが、19年8月の自治体学会堺大会で、「議会図書室による政策形成支援─先進事例にみる成果と可能性─」と題する、国立国会図書館の塚田洋氏による研究発表セッションを聴講した。

 報告の概要は、議員の調査活動を支援するという目的を果たさず、「無人の書庫」化している議会図書室の改革手法別の実績評価をしたものである。本号では、この報告に関連して、議会事務局への専門職配置について考えたい。

■議会図書室の改革手法

 報告では議会図書室の改革手法を、独自整備型と連携重視型の大きく二つに分類している。独自整備型は、常駐の司書を雇用し議会図書室自体の整備充実を図るものであり、連携重視型は議会外の図書館との連携によりレファレンス機能や蔵書不足を補おうとするものである。

 主に独自整備型の広島県呉市議会、連携重視型で市立図書館が議会を積極的支援している愛知県田原市議会、大学図書館との連携を主力とする大津市議会のそれぞれの実績を比較し、独自整備型の優位性から司書配置を正統な議会図書室改革の方向性として結論付けている。

 確かに自前の議会図書室に司書を配置するのが理想であり、有能な司書を雇用できた呉市議会の成果には、目を見張るものがある。

 だが、あえて大津市議会で連携重視型を採るのは、わずか1人の司書雇用と言われても、そのハードルは決して低くないからである。同規模議会の中では比較的少数の職員で、大津市議会局は多岐にわたる改革を支援する。異業種への配置転換が難しい専門職の採用は、現状の人員体制では部分最適リスクを負う可能性も高いと判断するからだ。

■類似例との比較

 類似の議論は、非資格職だが専門的能力を要するものとして、議会事務局への法制担当職員の配置問題でもある。議会提案条例の数で評価すれば、法制担当職員を配置済の議会に多いのが一般的傾向である。

 中小規模の自治体では執行部の法制担当職員を、議会事務局に兼務発令しているところもある。また、発令もせず、事実上、執行部の法制担当職員に丸投げしている議会も多い。

 だが、このような手法では、議会からの提案前に、執行機関の都合に合わせた条例案に修正されてしまうなどの弊害も指摘されている。法制担当職員についても、議会事務局に配置することが理想であるのは、司書問題と同様である。

■理想の実現への近道

 だが、専門職配置という理想を実現できないから、何の努力もしなくても良いというものではなかろう。

 幸いにして大津市議会局では法制担当職員を配置しているが、それが叶わない県内他市議会からの要望に応えて、滋賀県市議会議長会で実務担当職員の連携スキーム「軍師ネットワーク」を構築した。主には議長会と大学で連携協定を締結し、大学による法務相談を受けられるよう制度化したものである。

 どの分野においても、小規模議会事務局で専門職を確保することは容易ではない。

 現場は常に理想と現実のせめぎ合いである。目指すべき理想を正しく認識することは必要であるが、それに固執することが理想の実現への近道とも思えない。多様かつ柔軟な発想で、現場の実情に合わせた対策を考えることが重要だと思うのであるが、いかがだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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