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【カスハラ対策】明らかなウソをつく人への対応|クレーム対応悩み相談室7

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2025.05.14

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出典書籍:月刊「ガバナンス」創刊20周年記念別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』
※本書は月刊「ガバナンス」2019 年4月号〜2020 年4月号までに掲載した連載をまとめたものです(一部加筆・修正)。

自治体職員のためのトラブルの対処法を学ぶ!カスハラ対応図書特集

Chapter7 明らかなウソを言う人がいます


2025年4月1日、東京都などで「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例」が施行されました。
これにより、企業や自治体にも適切な対応策の整備が求められています。

本連載では、月刊『ガバナンス』の連載をまとめた別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』の内容を引用して掲載。
人材教育コンサルタントの関根健夫さんが自治体でのクレーム対応術を解説しています。

今回はウソを言ってさらに要求してくる場合について解説します。
カスハラ・クレーム対応の参考としてチェックしてください!

この記事で分かること

・できないことへのクレームの解決策
・無理を言われたときにすべき大人の対応

ある市の支所で窓口を担当している若手職員Fさんからの相談。市民の中には明らかなウソを言う人がいて、暗い気持ちになるといいます。

人材教育
コンサルタント
関根さん

① 無理を言われたら大人の対応でかわす ② イエスと言わないことが重要


支所ではできないことへのクレーム

 私は当市の支所で窓口を担当しています。住民票や印鑑証明、税に関するものなど各種証明書を発行する仕事が多いのですが、出先機関なのでその他の様々なお問い合わせにも応じています。

関根 本庁では課によって窓口が分かれているので、ある意味で専門分化されているわけですが、支所の窓口にはいろいろな案件が来るのでしょうね。

 はい。その場で答えられることは答えますが、即答できないことは所管の部署に問い合わせて回答し、個別の事情が絡む案件になるとお客さま自身で本庁に行っていただくように案内します。ただ、支所ではできないことや分からないことで、本庁に行っていただくことになるとクレームを受けやすいですね。

関根 「何で分からないのか」「面倒だ」などと中には嫌みを言う人もいるのでしょうか。

 その程度のことなら気にしないようにしています。一番心が曇るのは、ウソを言ってさらに要求してくる場合ですね。

関根 例えばどういうことですか。

 先日は、家族の印鑑を登録し、印鑑証明を即日に交付して欲しいと言ってきたお客さまがいました。

関根 本人が来所していれば、印鑑を登録して印鑑証明書を即日交付することは可能ですよね。代理人の場合は委任状が必要になる。

 そうなのです。仮に委任状があっても、その申請が本人の意思であることを確認するために本人宛に手紙を出し、それを持ってもう一度窓口に来てもらう必要があります。ですが、その方は「先日電話で本庁に問い合わせをした際にそういう説明はなかった」と言い張りました。

関根 事前に電話で問い合わせをしていたのですか。

 本人はそう言っていました。さらに電話では「代理人の自分が行くと言った」「それなのに本庁では委任状の話をしなかった」と。

関根 電話での「言った」「言わない」はよくある話ですね。

 私は、電話をしたということ自体がウソではないかと思っています。

関根 どうしてそう思うのですか。

 支所ではなく本庁に電話をしたと言っていましたが、それはいつか、何という職員が出たのか、と聞いてもはっきりした答えがありません。男性か女性かを聞いても、ごまかすような印象でした。いずれにしても、この例では印鑑登録の申請を受けられませんし、証明書も出せません。内容が疑われる話は、この他にもよくあります。例えば年配の方が知り合いの住民票が欲しいと言って来られたのですが、こちらとしては委任状がないと出せないということになりました。

関根 先ほどと同じですね。

 すると、その住民票を「今日中に銀行に提出しなければならない」と言い出しました。

関根 理由を言ってきたのですね。

 でも、何故この人が知り合いの住民票を銀行に提出するのか、またそのときはすでに午後3時を過ぎていましたから、本当に今日中に銀行に提出するのか、どう考えても不自然に思えました。

関根 確かにそうですね。

 なぜこんなことを言うのでしょうか。ウソだと思っても「ウソでしょう」と言えないことに切なくなります。

関根 日本人には口には出さないけれど“こちらの気持ちも分かってくれよ”といった感覚があるように思います。

 でもルールはルールですから、無理を言われても困ります。

関根 もちろん認められないことは認めてはいけません。相手は分かって欲しいと主張しますが、主張には理由が必要です。ところが、所詮無理な主張だとどこかで分かっているので、理由をつけると無理なものになる傾向が強いですね。

 なるほど。

関根 本庁に電話したかは分かりませんし、本庁にその電話があったとしてもどのような会話だったか支所では分かりません。ですから、お客さまはその真偽は証明されることはないと考えて、多少の無理を承知で言っているのだろうと思います。銀行の件も同じです。支所から銀行に問い合わせられることはないと思っているし、実際にはしませんからね。

 銀行に聞いてみましょうか。

関根 犯罪になるような案件なら別ですが、銀行に聞いても結論は変わりません。無視しろとは言いませんが、そうした話には乗らないというのも大人の対応でしょう。

 具体的にはどうしたら良いでしょうか。

関根 多少の質問を繰り返しながら「そのようなご事情があったのですか」などと相手の思いに理解を示しつつ、「できない」ではなく「やってはいけないことになっている」などと、こちらにも事情があると言い続けましょう。

 ありがとうございました。やってみます。

 

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