そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室

関根健夫

常識が通じない人がいます|クレーム対応悩み相談室8【カスハラ対応】

NEWキャリア

2025.05.19

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出典書籍:月刊「ガバナンス」創刊20周年記念別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』
※本書は月刊「ガバナンス」2019 年4月号〜2020 年4月号までに掲載した連載をまとめたものです(一部加筆・修正)。

自治体職員のためのトラブルの対処法を学ぶ!カスハラ対応図書特集

Chapter8 常識が通じない人がいます。どうしたら分かってくれるでしょうか


2025年4月1日、東京都などで「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例」が施行されました。
これにより、企業や自治体にも適切な対応策の整備が求められています。

本連載では、月刊『ガバナンス』の連載をまとめた別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』の内容を引用して掲載。
人材教育コンサルタントの関根健夫さんが自治体でのクレーム対応術を解説しています。

今回は常識外れな主張を繰り返す人への対応をご紹介します。
カスハラ・クレーム対応の参考としてチェックしてください!

この記事で分かること

・常識が通じない2つの理由
・そもそも常識とは何か
・常識が通じない人への考え方
・常識が通じない人への対応方法

ある市で用地交渉を担当しているGさんからの相談。市民の中にはこちらの説明を理解してくれない人、常識外れな主張を繰り返す人がいて、思うように交渉が進展しないといいます。

人材教育
コンサルタント
関根さん

① 常識は同じ常識を持った人にこそ通用する ② 価値観を訴えると意識が変わることが期待できる


常識は人によって違う

G 用地交渉の仕事をしています。地権者の中にはいくら説明しても納得してくれない人非常識な持論を展開してくる人がいます。

関根 人がどのような気持ちでどのような主張をしても、意見や主張そのものは基本的にその方の自由ですからね。

G でも、その言い分があまりにも非常識で、とても受け入れられるものではないのです。

関根 私の経験からは二つの側面が考えられます。土地の権利を持っている方は、一般的に自負が強い気がします。例えばある事業で、その土地を持っている方全員に合意していただかないと、事業全体が成り立たないということがありますよね。そのときに全体のことを気にされる方は「他の方が良いのなら、私も良いです」という反応になります。

G 確かにそういう方も多いです。

関根 一方で自負が強い、自分を押し出すタイプの人もいます。自分がハンコを押さないとすべてが成り立たないのだから、自分こそキーマンだという意識の人です。こういう方は「自分のところには最後に来い」などと言いがちです。また、あくまでも私のイメージですが、日本人は土地を持っていることにステータスを感じる人も多く、大切な土地を売りたくない、それを売るのだから何を言っても許される、という面もあるのではないでしょうか。私もかつて土地に関する交渉で、無理な要求を何度か受けましたから。

G でも、その要求が無理を超えて、どう考えても非常識なのです。

関根 そこで二つ目の側面、常識は人によって違うということです。常識とは社会のほとんどの人が受け入れられるだろうという概念です。社会が社会として成り立つのは、常識が通用するからです。でも、それは法律やルールとして決められたことや、誰かが決めたものではない通念も含まれます。

G でも常識は常識でしょう。

関根 決まりを破ったらルール違反ですから罰則を受けるでしょう。ただ、現実にはそのすべてがそうなるとは限りませんよね。街にゴミを捨ててはいけないことは法律にもあるし、就学前の子どもでも知っている常識です。しかし、現実に街にゴミを捨てる人はいるわけです。まさにルール違反、非常識な行為です。どうします?

G 見つけたら取り締まるしかありませんね。

関根 でも実際にすべてを警察が取り締まることはできませんし、市民がそれらを全てチェックして指摘すれば、かえってトラブルになったり、人が人をチェックする暮らしにくい世の中になってしまいそうです。そのため、常識という概念でゴミは捨ててはいけないのですよ、お互いに気をつけましょうね、くらいの意識が社会にはあるのだと思います。もちろん、あまりにひどければ警察、裁判所など司法に権力行使を求めて理屈で片付けることにもなりますけれどね。

基本的な価値観を訴えてみる

G でも、常識に従って協力してくれる人もいます。

関根 それがその人の常識だからでしょう。常識の多くは人生における経験や学びから形成されるものです。多くの人は役所の話を聞く、冷静に考える、社会のために協力する、そういう常識を持つでしょう。しかし、人は皆違った経験をして今日があるのですから、細部では一致しません。

G そうですね。

関根 だから、常識とは同じ常識を持ち合わせている人に通用する概念、ということができますね。非常識な人に「そんなことは常識でしょう!」と言ったところで、意味がありません。せいぜい「世の中にはこういう常識があるのですよ」と言うくらいでしょうか。ただ、地権者は現実的にその多くが年配者でしょうから、自分より若い職員からそのように言われても素直には聞かないでしょうね。

G ではどうすればいいですか。

関根 土地の話は息の長い交渉ですから、しばらくは “そういう考え方もあるのか” くらいに受け止め、時には聞き流し、その人が社会全体を考えた常識的な発言に変わってくるのを期待するという方法もありそうですね。

G でも何とか説得しないと……。

関根 常識のずれる人は、結論や方法論など具体的な話になると、なかなか納得せずに感情のもつれを生みがちです。基本的な価値観を訴えるとやがて分かってくれることが期待できそうな気がします。

G 基本的な価値観とは何ですか。

関根 例えば「この街をより良くしたい」 「子どもたちがより安全に歩くことができる道を作りたい」とか、場合によっては「あのような事故(災害)を二度と起こしたくない」といった感覚です。自分より若い職員が本気でそれを訴えてくれば、いつか分かってくれるのではないでしょうか。

G わかりました。やってみます。

 

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