クレーム対応術

関根健夫

クレーム対応術 12 クレーム対応の解決策がない場合

NEWキャリア

2019.04.04

今さら聞けないクレーム対応術 12 『解決策のないクレームにどう対応すればよいのでしょうか?』

『ガバナンス』2015年3月号

解決策がないからクレームになる

 クレーム対応をしていると、お客さまの言い分をいくら聞いても、結局のところ解決策のない案件も少なくない。お客さまの要求が、現実に役所の制度にはないものであったり、社会通念上も理不尽であったりすると、こちらに提示できる解決策はないことになる。仮に解決策があったとしても、お客さまの要望とはかけ離れていれば、実質的に「納得できない」「そこを何とかしろ」となってしまう。

 例えば「前の担当者はやってくれたのに、どうしてあなたはやってくれないのか」「他の役所ではやってくれるのに、どうしてここではだめなのか」などと、過去の実績、他の自治体などの実績を根拠にして、何らかのことを「認めろ」と圧力をかけてくるお客さまもいるだろう。

 このような場合でも、結論は決まっている。「以前のことは知りません。今の担当は私ですから、私の判断に従っていただきます」「他の自治体がどうしていようと、関係ありません。こちらのやり方は、……です」なのだ。

 しかし、これをあっさり言ってしまえば、間違いなく事務的な印象を与え、明らかに相手方の反発を買うことになる。クレームを言う側にとっては、自身の希望や思惑が何ら進展しないからだ。クレーム対応では、いつかは結論を告げなければならないが、その前提として、相手の言い分を十分に聞いてからでなければならない。

説明責任は説得の義務ではない

 クレーム対応では、相手の言い分を聞いた上で、こちらがいくら説明しても、相手方が納得してくれないことがある。しかし、たとえ納得してくれなくても、こちらは説明しなければならない。責任ある組織を代表してお客さまに対応している責任があるからだ。

 しかし、説明責任とは、相手方を必ず説得しなければならない、ということではない。責任ある組織の一員として、特に公務員の立場では、説得に向けて努力する義務はあるが、その結果、説得できなければ、それは仕方のないことだ。こちらがいくら正しい説明をしても「嫌なものは嫌だ」と言われてしまうこともあるだろう。

 一般的な人間関係なら、そういう人とは距離を置いて付き合うことで解決できる。しかし、社会の制度の下では、そうはいかない。我が国は、法治国家である。意見は自由であっても、法に反する行為は、決して許されるものではない。したがって、法を犯せば、強制的な処分をされることはあり得る。

 例えば、税金を滞納するお客さまに対しては、その状況を解消するために説得することになる。これは公務員の務めである。

 しかし、お客さまが「納税したくない」という意思を持ち続ければ、滞納状況が続くことになる。その状況が続くことは、明らかに法に反する。だから、差押えという処分があるわけだ。他にも、強制代執行や土地収用なども、大枠では趣旨は同じだ。

イエスともノーとも言わない

バランスよく話を聞く

 お客さまが納得する解決策が見いだせないクレーム、お客さまの要望に対してどうしても「イエス」と言えないクレームについては、こちらのできる限りの対応策を示して、それが社会のルールであることを説明し、結果として従っていただくしかない。事実上は、あきらめてもらうしかないわけだ。そこに至るためには、時間をかける必要がある。

 コミュニケーションとは、聞くことと話すことの両面のバランスが大切だ。こちらの言い分がいくら正しいからといって結論を急ごうとすれば、相手方は反発するだろう。時間をかけて、相手の話を聞くことで満足感を与える。その過程で、聞いてくれそうなタイミングをとらえて説明する。そのタイミングまでは、あえて説得しようとしない。

 解決策がない状況では、もちろん「イエス」とは言えないわけだが、「ノー」と言っても納得しないのであれば、あえて「イエス」とも「ノー」とも言わないことだ。

 時には、「考えさせてください。困りましたねえ」などと、時間を稼ぐことも仕方がないだろう。結論が変わらないことを承知で「ご期待に添えないかと思いますが、もう一度上司と話し合ってみます」などと告げることで「イエス」「ノー」を言わず、結論を言うタイミングを探す。

例外を認める場合

 現実には、解決策のないクレームでも、例外を認めるということもあるかもしれない。例外を認めることは決して勧められることではないが、上司と話し合った結果「では、今回だけ……」ということも、あるだろう。どのような仕事でも、多少の例外がないとは言い切れない。

 例外を認めるのであれば、少なくともその理由は、はっきりさせておくべきだ。「今回、なぜ……を認めるのかというと、……」などと、きちんと告げる。それができないならば、例外は認めるべきではない。

 また、「あくまでも、今回だけですよ。『次回も認めろ』と言うならば、今回もお断りします」などと告げ、けじめを示すことも大切だ。

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関根健夫

関根健夫

人材教育コンサルタント

1955年生まれ。武蔵工業大学(現、東京都市大学)卒業後、民間企業を経て、88年、アイベック・ビジネス教育研究所を設立。現在、同社代表取締役。コミュニケーションをビジネスの基本能力ととらえ、クレーム対応、営業力強化などをテーマに、官公庁、自治体、企業等の研修・講演、コンサルティングで活躍中。著書に、『こんなときどうする 公務員のためのクレーム対応マニュアル』『事例でわかる公務員のためのクレーム対応マニュアル 実践編』(ぎょうせい刊)。

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