自治・地域のミライ

ガバナンス編集部

自治・地域のミライ|すぐ近くにある幸せを大切に、安心できるまちづくりを目指す 千葉県四街道市長 鈴木陽介

NEW地方自治

2026.08.28

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月刊ガバナンス9月号

月刊 ガバナンス 2026年9月号
特集1:自治体の「ワークプレイス」を考える
特集2:客観性を味方にする データ活用のはじめかた
編著者名:ぎょうせい/編
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千葉県四街道市長
鈴木 陽介


20022年、市議会議員、県議会議員を経て地元・四街道市長に就任した鈴木陽介氏。小学生時代に描いた「市長になって四街道のために働きたい」という夢に邁進し、市民にとってやさしいまちづくりを進めている。住みやすさや都心への利便性から人口が増加している同市で、どのような思いで市政を担っているかを聞いた。

鈴木陽介さんの写真
2026年7月21日に全面開庁したばかりの新庁舎をバックに「YOTSUKAIDO」サインモニュメントの前で。このモニュメントは個人や企業からの寄附により設置された。鈴木市長が着ているのは市内の障がい者施設とコラボし作成した、パラアートチャリティTシャツ。「いつも着ながら公務をしています」と鈴木市長。販売を開始して5年。市民・市内団体・企業など、みんなで着用して「四街道ふるさとまつり」の機運を高めてきた。

千葉県四街道市

1955年、千代田町と旭村が合併し四街道町誕生。1981年市制施行。地名の由来は、成田山道、千葉町道、東金道・馬渡道、船橋道の街道が4つある「四ツ街道」から。千葉県北中央部に位置し、佐倉市、千葉市に隣接。市域は、東西7㎞、南北9㎞、面積は34.52㎢とコンパクトで、都心からも40㎞圏内と利便性が高く、首都圏のベッドタウンとして発展。落花生や梨の生産が盛ん。26年8月1日現在、人口9万6590人、4万5360世帯。2026年度の一般会計当初予算は358億5000万円。


光が当たりにくい人達にリーチするのは行政にしかできない。そこに価値がある。

小学生の頃に描いた市長の夢

――市議、県議を経て市長に。どのような思いで就任したのか。

 幼少期から四街道市。とにかく人が温かく、小さい頃から近所の人達とも関係性が近かった。そのような環境で育ったからか身の回り、自分の「近く」を大切にしてきた。

 小学5年生の頃に、「自分が住んでいる四街道のために働きたい」と思い、その時に思い描いたのが「市長になりたい」という夢だった。当時の担任の先生にその思いを話すと「絶対になれるよ」と背中を押されたことが将来に大きく影響した。

 大学では政治を学び、議員のインターンシップも経験した。机上の理論だけでなく実地で学び、「様々な政策は生活すべてに直結している」と政治の面白さを実感した。

 しかし、周りに政治家のいない普通の会社員家庭で育った。まずは政治の道ではなく、自分の生活が直接実感できる地域で働きたいと思い、地元の銀行に入行した。その後、政治家になることを決断し、市議会議員、県議会議員と経験を積んできた。

 今振り返ってみると、すべては四街道市長になるためのOJTだったように思う。特に県議時代は、県政の幅広い政策に触れることができた。県議から県内の首長になる方が多く、その時代のつながりが市長としてまちづくりを担う上でも非常に大きな財産になっている。

 市長に当選したのは38歳。周りからは「若くして市長になった」と言われたが、私の中では11歳の頃から「市長になって良いまちをつくりたい」と思い続けてきて、27年越しについになることができたという思いだった。

鈴木陽介さんの写真

〝みんなで〟を旗印に

――2026年2月から2期目に。これまで力を入れてきたことは。

 まちづくりの土台として「みんなでやる」ということを大切にしてきた。そこで、〝みんなで〟というひらがな4文字をキーワードに掲げてきた。市職員が一丸になるという意味もあるが、それ以外にも市内の企業やNPO、ボランティア団体、さらには警察や自衛隊などの市役所以外の公的機関、そして市民を含んだ、地域のすべての人々がつながり合ってまちをつくるのだということを強調してきた。

 例えば、市内にある千葉県警四街道警察署長とは毎月トップミーティングをし、それぞれの課題を持ち寄り、互いに何ができるのかを協議してきた。通常、首長と警察署長が顔を合わせるのは、会合や地域の行事などが多く、一緒になって政策を進めるのは珍しいだろう。そのような関係性の中から、2023年には、全国でも先進的な四街道市犯罪被害者等支援条例をつくることができた。

 また、当市には約4300人の外国人市民が暮らしている。文化や慣習の違いによるトラブルや孤立などが起きぬよう、県警と共に多文化共生にも力を入れている。今年5月には、当市と四街道警察署が連名で『外国人市民のためのルールブック』を作成した。外国人市民のうち3~4割はアフガニスタン人が占めている。言語も英語、中国語のほかに、アフガニスタン人向けのダリ語など5か国語に対応し、交通ルールや事件・事故に遭ったときの対応、ごみ捨てのルールなどを紹介している。項目は、日本人市民、外国人市民それぞれにアンケートを実施し、選定した。行政だけでは限界があるが、警察の力も併せて市民全体の安全安心な暮らしを担保できるよう努めている。

 そのほかにも、市内の岩渕薬品株式会社、千葉大学予防医学センターと3者協定で「四つ葉プロジェクト」という、当市をフィールドにした、健康まちづくりプロジェクトにも力を入れてきた。民間企業の力も借りることで、市民一人ひとりの意識へのリーチも違ってくる。まさに、公民連携を進めることで、行政が単独で取り組むよりも政策の推進度が早くなることを感じている。

鈴木陽介さんの写真
外国人市民が多く暮らす四街道市。多文化共生を進めるため『外国人市民のためのルールブック』を、四街道警察署と共同で作成した。

 以前、熊谷俊人・千葉市長(当時。現・千葉県知事)から「様々な方と連携するには声をかけられやすい雰囲気、体制、制度をつくっていかなければならない」というアドバイスをいただいたこともあり、私は、「声をかけられやすい四街道市」を目指している。当市をフィールドに、民間企業が実証実験など、何かやってみたいときに「まず四街道市でやってみようか」と思ってもらえたら嬉しい。行政側からしても費用面やシティプロモーションの視点においてメリットもある。とにかく常識を疑ってどんどんチャレンジしていかなければこれからの時代にはついていけないだろう。

 このように行政だけでなく民間企業、そして市民もまちづくりのプレーヤーとして「みんなで」やっていきたいという思いもあり、2024年4月に公民連携などの様々な連携の窓口となる「みんなで課」を設置した。立ち上げ当初は試行錯誤だったが、今や同課の職員達は「つなぎのプロ」になっている。私の知らないところで企業や学生さん達と、どんどんつながっている。役所外の多様な主体とつながる旗印として、認知度が高まってきている。

 最近もドラマのメインのロケ地として市内各所が使われたり、有名ミュージシャンのMVの撮影も行われている。職員も撮影クルーの受け入れなど慣れたものだ。業界の中でも「四街道に声をかけてみれば」という認識になっているのかもしれない。市民の皆さんも知っている風景が出ていると喜んでくれている。

――シビックプライドにもつながっているのでは。

 当市の人口増は、都心への利便性や自然環境の豊かさなどの要因もあるが、転入いただいた方に伺うと、住んでいる人に「四街道はいいよ」と言われて来たという人が結構多い。行政が市外へ一生懸命PRするよりも、住んでいる市民一人ひとりがシビックプライドを持って四街道のことを知って、語れることが何よりのプロモーションになっていると感じている。私は、一人ひとりのその発信の強さが今後もカギとなると見ている。

 また、当市は市域が狭く、身近なところでいろいろなことができる利点もある。市が主催する「おしごと体験イベント」は、子ども達の夏休み期間中に、市内の事業者と協働して、職業体験を実施している。自分が住んでいるまち、近いところでの豊かな経験により、ふるさとを意識でき、将来にもつながる。次世代のこのような思い出の積み重ねが将来、私が市長ではなく一市民に戻った時も、まちの「力強さ」や「レガシー」になっていくのではないだろうか。

鈴木陽介さんの写真
すずき・ようすけ
1983年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学卒業後、千葉銀行、国会議員秘書を経て、2012年の四街道市議会議員選挙でトップ当選(1期)。2015年、千葉県議会議員選挙で当選(2期)。2022年より四街道市長。現在2期目。好きな言葉は、「自己実現」「幸せはいつも、すぐそばにある」「ケセラセラ」。

目の前の現実を直視する

――仰ったとおり、全体が人口減少トレンドの中、人口増加している。どう捉えているか。

 たしかに人口は増えているが、2期目に入ったときに、「これからは人口は減少する、それを見越して政策をつくっていこう」と呼びかけた。最近は「賢く縮む」と言われているが、人口が減ることに恐れおののくのではなく、減っていってもしっかりこのまちが持続し、住んでいる人の生活の質はむしろ高まるくらいの気概を持っていなければならない。

 例えば、医療費助成制度を18歳まで拡充しているが、このような制度はもはや標準装備の取組みだろう。人口増に向けて様々な環境を整えるよう努めている。私も共働きで4人の子どもを育てているが、行政やまちの支援が重要と日々痛感している。それがないと一家庭にすべてを任せるというのは厳しいと実感している。これから子どもを産みたい、育てたいと希望する人を経済的理由や社会的支援の少なさなどを理由に諦めさせたくないと思っている。

――市長になって育休を取得した。

 最近、京都府八幡市の川田翔子市長が産休を取得することが話題となった。一石を投じる決断だ。将来、評価されることになるだろう。

 私は、市長になってから第3子と第4子の二度、育休を取得した。一度目は市長就任したばかりの頃で5日間だけだったが、二度目は業務調整も整い、1か月取得した。私が育休を取得したのも、社会に問いかけたい思いもあった。また、市の男性職員の育休取得率も低かったため、首長が取ることで市役所も社会も意識が変わればと思っていた。実際、就任以前の2021年度は当市の男性職員育休取得率は21%だったが、22年度には82%になった。役所内だけでなく、まち全体として、子育てしやすい地域をつくっていることが伝わればと思っている。

 私はリアリスト(現実主義者)だ。多文化共生においても、実際に当市の人口の4.5%は外国人市民が暮らしているという「現実」が目の前にある。お互いにまちで暮らしていくために『ルールブック』などを作成し、齟齬を無くしていかなくては住みやすさも高まらないだろう。

 また、首長の姿勢も問われている。例えば水道料金は何十年も据え置き、安かった。しかし、これから人口が減り、水道管が老朽化する中でそれでは水道事業を持続させることは難しくなる。だから、今と未来のためにこれからは市民に嫌われるような決断もしていかなければならない。時の首長が自分の人気を高めたいがために、まちのあり方を歪ませることは、あってはならない。そして、選挙前に大盤振る舞いをすることで、行政職員が振り回されることも私は間違っていると考える。格好をつけている訳ではないが、自分の政治生命が削られてもいいから、まちの将来のために首長は働くべきだし、これからも貫きたい。

鈴木陽介さんの写真
2024年に設置された「みんなで課」。多様な主体がみんなでまちづくりを進めていくための公民連携の核となる部署だ。

想像する力を

――自治・地域のミライをどう描いているか。

 2024年度から始まった総合計画は「HAPPY SMILE PLAN」と銘打っている。概要版もイラストをふんだんに使い、漫画のようにした。自分の幸せにつながる計画だと共感してほしいと伝わりやすさを重視した。

 新しくゼロから立ち上げるのではなく、市民に浸透している既存のモノやイベントなどに、どう新しい価値を入れていくのか、という視点も大切だろう。他の自治体や首長の良い取組みは真似し、私も真似してもらえるようになれたらと思っている。

 7月に新庁舎全庁開庁イベントとして、「よつかいどうこども万博」を開催したところ、多くの子ども達が参加してくれた。住んでいる人達が「自分のまちが一番」と思ってくれたら何よりだ。

――自治体職員へメッセージを。

 議員から首長となり、自治体トップとして、しっかり自治体組織をマネジメントしていかなければならないと実感する。首長一人で何かができるわけではない。当市は職員のアイデアがすごい。職員がどんどんやってみたいことを提案してくれる。

 これからは必要とされる施策の比重も変わり、自治体職員の仕事も変化していくだろう。民間企業のビジネスでは光が当たりにくい人達にリーチするのは行政しかできない。そこに価値がある。環境が変化する中で学び続け、常識を疑い、首長に物申すような強さを持って欲しい。そのためには、未来をイメージ(想像)し、まちがどうなっていくべきなのかを、職員一人ひとりが理解し、そこへ向けて何ができるのか、考えて行動することが重要だ。そして、自分のまちのことをよく知ってほしい。磨けば光る資源は足元にたくさんある。近くに目を向けてもらいたい。

 また、職員の多様性も大切だろう。当市も様々なバックボーンを持つ社会人経験職員も多い。プロパーだけでなく、様々な人材が入り混じることが新たな組織風土をつくっていくだろう。そのような人達を受け入れる雰囲気づくりは、これからの自治体には必要になってくるだろう。

(取材・構成/本誌 浦谷收、写真/佐藤正巳)

 

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