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【関東学院大学 地域創生実践シンポジウム】実効性のある議員提案条例を、皆でつくる/イベントレポート

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2026.03.26

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【ガバナンス・トピックス】
実効性のある議員提案条例を、皆でつくる
──第9回関東学院大学地域創生実践シンポジウム2025

2025年12月22日、関東学院大学横浜・関内キャンパスで地域創生実践シンポジウムが開催された。テーマは「議員提案条例を考える~地方議会活性化に向けて~」。議員提案条例の現状と課題を振り返りつつ、地方議会の活性化、さらには自治体改革に資する議会のあり方について考えた。

議員提案条例の“実際”を考える

 関東学院大学地域創生実践研究所、関東学院大学大学院法学研究科、関東学院大学法学会の共催による「関東学院大学地域創生実践シンポジウム」。第9回目となる今回は、「議員提案条例」をメイントピックとして取り上げた。

 議員提案条例の制定については、地域独自の取り組みとして一定の評価がある一方、その実効性に疑問を呈する声も多くあがっています。そうした現状を踏まえ、シンポでは登壇者の実践も交え検討を進めました。

意見交換の様子
当日は「議員提案条例」をテーマに、活発な意見交換が行われた。

議員提案条例はどうつくるべきか

 まず第1部として、議会改革研究の第一人者である廣瀬克哉・法政大学前総長/法学部教授の基調講演が行われた。「議員提案条例はどうつくるべきか」と題し、

■自治立法権と議会の立法機能
■議員立法の効果
■議員提案条例をつくるにあたって注意すべきこと

──などを論じた。

 廣瀬教授は「少し強い言葉にはなるが、予算編成等の権限が制限される地方議会においては、内閣法制局における『法律事項』のような、『条例事項』の原則は不要だと考える。『条例事項』の関門により、提案が難しくなるような状況は好ましくない」と述べたうえで、「一方で、その条例が政策目的を達成できる設計になっているかは立案過程で十分に検討しておく必要がある。そして何より、議員以外の視点、当事者や専門家等の視点を取り入れることが大切だ。条例は議員だけでつくるものではないということを、今日の私のメッセージとして受け止めてほしい」と、熱を込めた。

3議会の事例報告

 続く第2部ではパネルディスカッションを実施。パネリストとして、しきだ博昭・神奈川県議会議員、黒川勝・横浜市会議員、加藤眞道・神奈川県横須賀市議会議員の3人が登壇し、出石稔・関東学院大学教授がコーディネーターを、廣瀬教授がコメンテーターを務めた。

 まずイントロダクションとして、パネリストが所属する3議会についての事例報告が行われた。

「神奈川県手話言語条例」の取り組み

 しきだ議員は、自身がこれまで深くかかわってきた「神奈川県手話言語条例」の取り組みを中心に紹介。条例制定の背景には、2013年に鳥取県で成立した全国初の手話言語条例があったという。

 「鳥取県の動きを受け、神奈川県内でも制定してほしいとの声が高まった。14年5月、県聴覚障害者連盟から約5万5000人の署名を添えた陳情が県議会に提出された。そこで議会では、当事者参加を最重視しながら、Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)──この言葉を軸に、議員提案条例として制定を進めた」と説明した。条例制定後にも、県庁や県警で「手話リンク」(*)サービスが導入されるなど、“つくって終わり”ではない展開がみられているという。

* 聴覚や発話に困難のある人が、スマートフォンやパソコンなどから手話通訳オペレータが通訳する「電話リレーサービス」を利用し、手話で問い合わせができるサービス。

「横浜市こども・子育て基本条例」の成立過程

 黒川議員はケーススタディとして「横浜市こども・子育て基本条例」の成立過程を紹介。23年4月の統一地方選後、党内に設置された「こども条例制定プロジェクトチーム」では、先行事例の研究や当事者・有識者らとの意見交換を経て、6か月をかけて条例原案を作成。その後、他会派への説明やパブリックコメントを実施し、24年6月の定例議会で条例が成立した。

 黒川議員は、「こうしたプロセスの中では、“勉強しなくちゃ置いていかれる”状況が生まれ、議員力が大いに高まる。議員提案条例は、縦割り行政に横串を刺せる点が大きな特徴。そんな、議員ならではの発想をもとに条例案を作成し、時間をかけて取り組むことで、議会・議員と市民の間に信頼関係を築くことができる」と話した。

事例紹介の様子
横浜市議会の事例を紹介する黒川勝議員。

横須賀市議会の政策形成サイクル

 加藤議員は政策形成サイクルを紹介した。横須賀市議会では、議会全体で政策立案を行い課題解決に寄与していくために、17年に政策検討会議を設置。4年間の任期内で議員が取り組むべき課題を抽出し、PDCAサイクルにのっとった形での政策提案が行われている。その中で生まれた条例の1つが、18年4月施行「横須賀市不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための条例」(ごみ屋敷対策条例)だ。

 同条例は22年6月に民生常任委員会による検証が行われ、23年3月には検証内容を踏まえた改正案が可決している。このように、制定後にも検証と改善のサイクルを回していくことで実効性のある政策を実現しているという。

実践知をもとにディスカッション

 次に、出石教授からパネリスト3人に問いを投げかける形で、ディスカッションが行われた。

議員提案条例の実効性

 まずあがったのは「議員提案条例の実効性」という問い。これについて加藤議員は、「横須賀市議会では、いわゆる“理念条例”はつくらないようにしている。条例は政策的であるべきで、まちが行う事業にしっかりと結びついている必要がある。つくって終わり。つくってよかったな。ではなく、その後も検証を行いながら、実のあるかたちで継続していくのが大切だ」と強調した。

当事者との関係性について、議員提案条例はどのようにあるべきか

 続く「当事者との関係性について、議員提案条例はどのようにあるべきか」という問いに関し、しきだ議員は、「県では『当事者目線の障害福祉推進条例』(知事提案)を議決した。検討の際には、“どこからどこまでが当事者なのか”という非常に難しい問題があった。条例をつくることで誰が救われるのか──そうした部分を常に意識しながら、丁寧に進めていくことが重要だ」と実感を語った。

議員提案条例を作成する際のサポート体制

 「議員提案条例を作成する際のサポート体制」について投げかけられると、黒川議員は「議員だけで進めるのではなく、執行部局の担当者を巻き込みながら進めていくことが大切だ。また、個人的には地方議員同士のネットワークも非常に有効だと感じている。先行事例から学ぶことは多いし、本音で語り合える全国の仲間と情報交換しながら進めていくことは、心強くもある」と話した。


 シンポは、牧瀬稔・関東学院大学地域創生実践研究所長の「議員提案条例をぜひ皆さんとやっていきたい。当研究所では引き続き後方支援を行っていくので、ぜひ積極的に活用してもらえたら」という力強いメッセージで締めくくられた。議員提案条例のさらなる広がりが期待される会となった。

(本誌/森田愛望)

 

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