【特別企画】徹底したカスタマイズで“町仕様”の勤怠管理システムを実現 岩手県大槌町
NEW地方自治
2025.04.30

出典書籍:月刊『ガバナンス』2025年5月号
【特別企画】徹底したカスタマイズで“町仕様”の勤怠管理システムを実現
岩手県大槌町
勤怠管理システムの導入はカスタマイズにあり――。残業、休日の出勤・振替、超過勤務手当の増額率など自治体によって異なる申請・決裁ルールや災害など不測の事態に対応した特殊な勤務。それらに適応した勤怠管理が自治体には必須だ。岩手県大槌町では、町独自の申請ルールやあらゆる勤務形態を洗い出し、“大槌仕様”の勤怠管理システム導入を実現させた。 システム提供社であるセイコーソリューションズ㈱と二人三脚で取り組んだ経緯を総務課・平野正晃課長補佐、菊池太志主事に聞いた。
大槌町総務課の平野正晃課長補佐(左)と菊池太志主事(右)。
震災時の経験を生かし勤怠管理システム導入へ
――大槌町における勤怠管理のデジタル化のきっかけを教えてください。
本町では、長らくシステムによらず事務処理を行ってきました。勤怠管理も手作業でしたので、月末には出退勤の確認、残業時間の集計、時間外勤務手当の計算などに多くの労力が必要でした。そこに東日本大震災が起こり、被災地となった当町には、各地の自治体から多くの派遣応援をいただきました。しかし、本庁職員150人弱に派遣職員が加わり、常時300人くらいの職員の分が勤怠管理の対象となり、私たちの部署では、全職員の残業などの集計や計算のために煩雑な事務処理をしなければなりませんでした。さらに、休暇申請・許可業務があり、各部署の上長も職員の勤務状況を正確に把握するには困難を極める状況でした。こうした経験から、勤怠管理のデジタル化は喫緊の課題となっていたのです。
――勤怠管理システム導入後は。
昨年4月にセイコーソリューションズ社の「esTIME」(エスタイム)という勤怠管理システムを導入したことで業務が格段に効率化しました。
以前は、申請などに不備があれば本人に確認して当方で一つ一つ修正していましたが、このシステムでは、申請にミスがあればエラー表示が出て職員自身で修正できますし、残業が多くなると色表示で警告も出るので、職員は自分の労務管理ができます。所属長は、職員からの申請をリアルタイムで承認でき、勤怠情報も一覧化され視覚的に確認できることから、所属員の勤務状況を常に把握できるようにもなりました。当課でも、出欠や残業等の集計・計算などに、一時は数日間かかっていたのが1日でできるようになったのです。
あらゆる勤務態様を想定しカスタマイズ
――導入にあたっては、かなりのカスタマイズをされたとのことです。
当初、既成のシステムを活用し導入を試みましたが、自治体の労務規則と民間企業の労務規則の違いから、既成システムをそのまま導入することは難しいことが分かりました。自治体には団体ごとに決めた勤務の仕組みがあり、残業や休みの取り方一つとっても、一般企業とは違うことが多いのです。そこで、復興事業が落ち着いた2022年に勤怠システムを予算化し、本格導入に動きました。しかし、導入を予定していたシステムでは自治体特有のルールに即したカスタマイズが難しいとのことから、対応可能なセイコーソリューションズ社にお願いし、esTIMEの導入に向けた検討が始まりました。
――カスタマイズの具体的な内容は。
例えば、休日出勤の代休を取る場合、一般企業では半日仕事をして半日休むということができますが、本町では、週休日や祝日、閉庁日によって取り扱いが異なります。また、時間外勤務手当も15分刻みが一般的ですが、当町では勤務した時間区分ごとに月単位で端数処理が必要です。このような細かい部分をカスタマイズする必要があったのです。
セイコーソリューションズ社には細かな要望を出し、システム改修をしたデモを見てまた様々なお願いをするといったことを半年にわたり繰り返しました。「土日と祝日を挟み、かつ日付をまたぐ場合の残業の扱い」など極端なケースまでを洗い出し、何枚ものエクセルシートにまとめて検討を重ね、オーダーメイドのように仕上げていただいたわけです。
当時企業向けだったesTIMEを、行政専用ネットワークLGWAN環境への対応に改修いただき、セキュリティにも対応したものになりました。
“大槌仕様”のesTIMEで業務もスムーズに。
「人手を介さない」がDX化のポイント
――esTIMEの位置づけや今後の業務DX化の展望について。
今回のカスタマイズのもう一つのポイントとしては、esTIMEと本町の給与システムの連結があります。勤怠システムを入れても、給与システムの入力が手作業では意味がありません。DXの観点からいえば、人手を介さないものにすることが重要で、システム連携は大事な点です。
また、今回、科目管理の機能が付加されるとのことで大いに期待しています。自治体が職員に支払う手当などには、福祉関係に従事したら福祉予算から、災害対応なら防災予算等からといったように、予算に応じて支払科目が違います。これらをシステムで管理できれば予算の処理の仕方も大きく変わると思います。
人事部署としては、まずは職員が健康で安心して仕事ができる環境をつくることが町民へのサービス向上の点からも大事です。その意味で、この勤怠管理システムはその要として重要なツールと思っています。
柔軟な対応力で自治体の勤怠管理業務を支援 セイコーソリューションズ(株)
弊社の勤怠管理システムesTIMEは、自治体向けの勤怠管理サービスです。
クラウドサービスですのでサーバは不要ですし、自動エラーチェックにより計算ミスや人的ミスもなくなり、管理者側の業務も格段に減ります。支出科目ごとの業務管理機能の搭載で、さらに効率的な労務管理が実現できることが期待されています。
また、esTIMEは、超過勤務手当の割増率や休日・振替申請など、お客様ごとに違うルールに対しても十分にご相談に応じられる柔軟なカスタマイズ性を強みとしています。LGWAN 環境への対応などをはじめ、需要の高い機能のカスタマイズについては積極的な標準装備化も進めているところです。
さらに、お客様の所在地に関係なくサポートが可能ですし、弊社のプロジェクトメンバー全員が常時情報を共有しており、緊急のご相談に対しても、担当者不在でも即時対応が可能な安定したサポート体制をとっています。
弊社では、自治体の皆様が抱える問題を一緒に解決し、よりよい働き方を実現するパートナーとしてお役に立てることを目指しています。自治体の皆様の業務効率化と働きやすい環境づくりに貢献できれば幸いです。
DXソリューション営業統括部・三浦宏道統括部長(右)と同・大枝言扶子さん(左) 。
企画提供
セイコーソリューションズ㈱
URL:https://www.seiko-sol.co.jp/
TEL:03-6779-8954
行政・自治体・地方公共団体向け勤怠クラウドシステム「esTIME」紹介ページ
https://www.seikotrust.jp/lp/estime/
【書籍紹介】